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「21世紀の資本」の版間の差分

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『'''21世紀の資本論'''』(21せいきのしほんろん、{{lang-fr-short|''Le Capital au XXIe siecle''}} 、{{lang-en-short|''Capital in the Twenty-First Century''}})は、[[フランス]]の経済学者[[トマ・ピケティ]]の著書。[[2013年]]にフランス語で公刊され、[[2014年]]4月には英語訳版が発売されるや[[Amazon.com]]の売上総合1位に輝くなど大ヒットした<ref>{{Cite news|url=http://www.nikkei.com/money/features/29.aspx?g=DGXNASFZ0800P_14052014K15600|title=「21世紀の資本論」 富裕税巡り米で論戦|newspaper=日本経済新聞|accessdate=2014-05-29}}</ref>。アメリカでは2014年春の発売以降、半年で50万部のベストセラーとなっており、多くの言語で翻訳されている<ref>[http://www3.nhk.or.jp/news/web_tokushu/2014_1017.html 格差論争 ピケティ教授が語る]NHK NEWS WEB 2014年10月17日</ref>。
『'''21世紀の資本論'''』(21せいきのしほんろん、{{lang-fr-short|''Le Capital au XXIe siecle''}} 、{{lang-en-short|''Capital in the Twenty-First Century''}})は、[[フランス]]の経済学者[[トマ・ピケティ]]の著書。[[2013年]]にフランス語で公刊され、[[2014年]]4月には英語訳版が発売されるや[[Amazon.com]]の売上総合1位に輝くなど大ヒットした<ref>{{Cite news|url=http://www.nikkei.com/money/features/29.aspx?g=DGXNASFZ0800P_14052014K15600|title=「21世紀の資本論」 富裕税巡り米で論戦|newspaper=日本経済新聞|accessdate=2014-05-29}}</ref>。アメリカでは2014年春の発売以降、半年で50万部のベストセラーとなっており、多くの言語で翻訳されている<ref>[http://www3.nhk.or.jp/news/web_tokushu/2014_1017.html 格差論争 ピケティ教授が語る]NHK NEWS WEB 2014年10月17日</ref>。

長期的にみると資本収益率(r)は経済成長率(g)よりも大きく、その結果として富の集中が起こり、資本から得られる収益率が経済成長率を上回れば上回るほど富はより資本家へ蓄積される。そして富が公平に分配されないことによって社会や経済が不安定となるということを主題としている。この格差を是正するために、[[富裕税]]を、それも世界的に導入することを提案している。


日本での版権を持つ[[みすず書房]]によれば、日本語版は[[2014年]]12月出版される予定<ref>{{Cite news|url=https://twitter.com/asahi_book/statuses/484608080898838528|title=朝日新聞読書面|newspaper=朝日新聞Twitter|accessdate=2014-07-05}}</ref>。
日本での版権を持つ[[みすず書房]]によれば、日本語版は[[2014年]]12月出版される予定<ref>{{Cite news|url=https://twitter.com/asahi_book/statuses/484608080898838528|title=朝日新聞読書面|newspaper=朝日新聞Twitter|accessdate=2014-07-05}}</ref>。


== 内容 ==
== 本書の内容 ==
[[資本主義]]の特徴は一握りの[[資本家]]が多くの資産を蓄えることのできる[[格差社会]]である。そして富の不均衡は干渉主義を取り入れることで解決することができる。これが本書の主題である<ref name="cooper">{{cite news |author=Ryan Cooper |title=Why everyone is talking about Thomas Piketty's Capital in the Twenty-First Century |url=http://theweek.com/article/index/258666/why-everyone-is-talking-about-thomas-pikettys-capital-in-the-twenty-first-century |newspaper=The Week |location= |publisher= |date=March 25, 2014 |accessdate= }}</ref>。資本主義を作りなおさなければ、まさに庶民階級そのものが危うくなるだろう<ref name="cooper"/>。
[[資本主義]]の特徴は一握りの[[資本家]]が多くの資産を蓄えることのできる[[格差社会]]である。資本から得られる収益率が経済成長率を上回れば上回るほど富はより資本家へ蓄積される。そして蓄積された資産は子に相続され、労働者には分配されない。この格差を是正するために[[富裕税]]を、それも世界的に導入しなければならないと主張。ピケティは過去200年以上ものデータを分析し、現代の欧米は「第二の[[ベル・エポック]]」に突入していると指摘する。


議論の出発点となるのは、資本収益率(r)と経済成長率(g)の関係式である。rとは利潤、配当金、利息、貸出料など、資本から入ってくる収入のことである。そしてgは、給与所得などによって求められる。過去200年以上のデータを分析すると、資本収益率(r)は平均で年に5%程度であるが、経済成長率(g)は1%から2%の範囲で収まっていることが明らかになった<ref name="toyokeizai38">[[#週刊東洋経済(2014)|週刊東洋経済(2014)]] p.38</ref>。このことから、[[経済的不平等]]が増してゆく基本的な力は、r>gという不等式にまとめることができる。すなわち、資産によって得られる富の方が、労働によって得られる富よりも速く蓄積されやすいため、資産金額で見たときに上位10%、1%といった位置にいる人のほうがより裕福になりやすく、結果として格差は拡大しやすい。また、この式から相続についても分析できる。すなわち蓄積された資産は子に相続され、労働者には分配されない。たとえば19世紀後半から20世紀初頭にかけての[[ベル・エポック]]の時代は華やかな時代といわれているが、この時代は資産の9割が相続によるものだった。また、格差は非常に大きく、フランスでは上位1%が6割の資産を所有していた<ref name="toyokeizai38"/><ref>[[#島村(2014)|島村(2014)]] p.91</ref>。
== 評価 ==
2008年[[ノーベル経済学賞]]を受賞者した[[ポール・クルーグマン]]は「この10年で最も重要な経済書籍」と評価。


一方で、1930年から1975年のあいだは、いくつかのかなり特殊な環境によって、格差拡大へと向かう流れが引き戻された。特殊な環境とはつまり2度の世界大戦や[[世界恐慌]]のことで、こうした出来事によって富が、特に上流階級が持っていた富が、失われたのである<ref name="Pearlstein">{{cite news |author=Steven Pearlstein |title=‘Capital in the Twenty-first Century’ by Thomas Piketty |url=http://www.washingtonpost.com/opinions/capital-in-the-twenty-first-century-by-thomas-piketty/2014/03/28/ea75727a-a87a-11e3-8599-ce7295b6851c_story.html |newspaper=The Washington Post |location= |publisher= |date=March 28, 2014 |accessdate= }}</ref>。また、戦費を調達するために、相続税や累進の所得税が導入され、富裕層への課税が強化された<ref>[[#中野(2014)|中野(2014)]] pp.147-148</ref><ref>[[#広岡(2014)|広岡(2014)]] pp.236-237</ref>。さらに[[第二次世界大戦]]後に起こった高度成長の時代も、高い経済成長率(g)によって相続などによる財産の重要性を減らすことになった<ref name="Pearlstein"/><ref>[[#島村(2014)|島村(2014)]] p.92</ref>。
[[ジョージ・メイソン大学]]教授の[[タイラー・コーエン]]は「資本家を「金利生活者」のように扱っているが、収益を得るための様々なリスクについては触れられていない」と非難している。


しかし1970年代後半からは富裕層や大企業に対する減税などの政策によって、格差が再び拡大に向かうようになった<ref>[[#中野(2014)|中野(2014)]] p.148</ref><ref>[[#広岡(2014)|広岡(2014)]] p.237</ref>。そしてデータから、現代の欧米は「第二のベル・エポック」に突入し、中産階級は消滅へと向かっていると判断できる<ref name="toyokeizai39">[[#週刊東洋経済(2014)|週刊東洋経済(2014)]] p.39</ref>。つまり今日の世界は、経済の大部分を相続による富が握っている「世襲制資本主義」に回帰しており、これらの力は増大して[[寡頭制]]を生みだす<ref name="Krugman">{{cite news |author=Paul Krugman |title=Wealth Over Work |url=http://www.nytimes.com/2014/03/24/opinion/krugman-wealth-over-work.html |newspaper=The New York Times |location= |publisher= |date=March 23, 2014 |accessdate= }}</ref>。また、今後は経済成長率が低い世界が予測されるので、資本収益率(r)は引き続き経済成長率(g)を上回る。そのため、何も対策を打たなければ、富の不均衡は維持されることになる<ref>[[#ピケティ(2014)|ピケティ(2014)]] p.32</ref>。科学技術が急速に発達することによって経済成長率が20世紀のレベルに戻るという考えは受け入れがたい。我々は「技術の気まぐれ」に身をゆだねるべきではない<ref name="Pearlstein"/>。
[[オノレ・ド・バルザック]]や[[ジェーン・オースティン]]の小説が多々引用されており女性の読者や学生からはわかりやすいと評判である。

不均衡を和らげるには、最高税率年2%の累進的な財産税を導入し、最高80%の累進所得税と組み合わせれば良い<ref name="Pearlstein"/>。その際、富裕層が資産を[[タックス・ヘイヴン]]のような場所に移動することを防ぐため、この税に関しての国際的な協定を結ぶ必要がある。しかしこのようなグローバルな課税というのは夢想的なアイディアであり、実現は難しい<ref name="toyokeizai39"/>。

== 特徴 ==
フランス語版は総ページ数950ページ以上、厚さ4.4センチメートルという大部である。英語版は活字を小さくするなどの変更を施したが、それでもページ数は700ページ近くになる<ref name="hirooka232">[[#広岡(2014)|広岡(2014)]] p.232</ref>。

特徴的なのは200年以上の膨大な資産や所得のデータを積み上げて分析したことで、それが本書を長大なものにしている<ref name="hirose128">[[#広瀬(2014)|広瀬(2014)]] p.128</ref><ref name="yamagata">{{Cite web |date=2014-07-11 |url=http://d.hatena.ne.jp/wlj-Friday/20140711/1405091495 |title=ピケティ『21世紀の資本』:せかすから、頑張って急ぐけれど、君たちちゃんと買って読むんだろうねえ…… |accessdate=2014-10-19}}</ref>。ピケティはこのデータを集め分析するのに15年の歳月を費やした<ref name="hirose128"/><ref>[[#ピケティ(2014)|ピケティ(2014)]] p.31</ref>。[[ローレンス・サマーズ]]は、この統計データだけでノーベル賞に値すると述べている<ref name="hirose129">[[#広瀬(2014)|広瀬(2014)]] p.129</ref>。

内容面での特徴としては、[[アメリカン・ドリーム]]の否定が挙げられる。すなわち、アメリカでは生まれが貧しくても努力することで出世し裕福になれると信じられていたが、ピケティは、現在のアメリカは他国と比べてそのような流動性は高くないことを実証した。さらに、大学への入学においても両親の経済力が大いに物を言うことを指摘している<ref>[[#広岡(2014)|広岡(2014)]] pp.232-233</ref><ref>[[#カッツ(2014)|カッツ(2014)]] pp.44-45</ref>。

さらにピケティは、[[サイモン・クズネッツ]]の仮説をも否定している。クズネッツの仮説とは逆U字型仮説と呼ばれるもので、資本主義経済では経済成長の初期には格差が拡大するが、その後格差は縮小に向かうという説である。実際、クズネッツがこの仮説を発表した1955年の時点では格差は縮小していたのであるが、ピケティは1980年代になると格差が再び拡大していることを示した。ピケティはクズネッツの仮説について、冷戦時代に共産主義に対抗するために作られたものにすぎないと述べている<ref>[[#広岡(2014)|広岡(2014)]] p.233</ref><ref name="toyokeizai38"/>。

一般的な経済論文とは異なり、数式はほとんど登場しない<ref name="hirose129"/>。代わりに[[オノレ・ド・バルザック]]、[[ジェーン・オースティン]]、[[ヘンリー・ジェイムズ]]の小説などを引用して、19世紀初期のイギリスやフランスに存在した、相続財産によって固定された階級を説明している<ref name="Pearlstein"/><ref>[[#トッド(2014)|トッド(2014)]] p.242</ref>。例えばバルザックの『[[ゴリオ爺さん]]』では、登場人物が、裁判官や弁護士、検事として働くのと、銀行家の娘と結婚するのとどちらが早く富を得られるかについて語る場面を紹介している。そしてピケティはその時代のデータを分析し、結婚した方が早く富を得られることを確かめている<ref>[[#ピケティ(2014)|ピケティ(2014)]] p.34</ref>。

『21世紀の資本論』という書名は、[[カール・マルクス]]の『[[資本論]]』を思い起こさせる。実際、ビジネスウィーク誌での特集の書き出しは、「一匹の妖怪が欧州と米国を徘徊している。富裕階級という妖怪が」という、マルクスの『[[共産党宣言]]』を意識した記述で始まっており<ref name="yamai48">[[#山井(2014)|山井(2014)]] p.48</ref>、ピケティを批判する人の中には、彼を共産主義者だと言う声もある<ref>[[#山井(2014)|山井(2014)]] p.49</ref><ref>[[#広岡(2014)|広岡(2014)]] p.234</ref><ref>[[#カッツ(2014)|カッツ(2014)]] p.44</ref><ref>{{Cite web |author=ポール・クルーグマン |date=2014-05-19 |url=http://gendai.ismedia.jp/articles/-/39245 |title=「ピケティ・パニック」---格差問題の言及者に「マルクス主義」のレッテルを貼る保守派はこれにまっとうに対抗できるのか? |publisher=講談社 |accessdate=2014-10-21 |ref=クルーグマン(2014 現代ビジネス) }}</ref>。しかしピケティは『資本論』を読んでおらず<ref>{{Cite web |author=齋藤精一郎 |date=2014-05-20 |url=http://www.nikkeibp.co.jp/article/column/20140519/397924/?ST=business&P=2 |title=ピケティ『21世紀の資本論』はなぜ論争を呼んでいるのか |publisher=日経BP社 |accessdate=2014-10-21 |ref=齋藤(2014) }}</ref>、資本主義も否定していない<ref>[[#ピケティ(2014)|ピケティ(2014)]] pp.35-36</ref>。

== 出版と当初の反応 ==
2013年8月にフランスで最初に出版されたときはあまり注目されていなかった<ref name="yamai48"/><ref name="piketty37">[[#ピケティ(2014)|ピケティ(2014)]] p.37</ref>が、発売後は1週間で6,000部を売り上げた<ref name="hirooka232"/>。ローラン・モデュイは「政治的思想的ブルドーザー」と例え<ref>Laurent Mauduit, ‘Piketty ausculte le capitalisme, ses contradictions et ses violentes inégalités,’ Mediapart, 03 Septembre 2013: ‘un bulldozer théorique et politique’</ref><ref name="Edsall" >Thomas B. Edsall, [http://www.nytimes.com/2014/01/29/opinion/capitalism-vs-democracy.html 'Capitalism vs.Democracy.'] New York Times, 28 January 2014.</ref>、週刊誌{{仮リンク|レクスプレス|en|L'Express (France)}}は「経済問題はフランス人を熱中させる」と報じた<ref name="hirooka232"/>。本書の主題がニュースとして英語圏に広がると、エコノミスト誌は「権威ある」と称して歓迎した<ref name = "The Economist1">[http://www.economist.com/news/finance-and-economics/21592635-revisiting-old-argument-about-impact-capitalism-all-men-are-created ‘All men are created unequal: revisiting an old argument about the impact of capitalism,’] The Economist, 4 January, 2014.</ref>。[[ポール・クルーグマン]]は本書を「画期的」と呼び<ref name = "Krugman1" > Paul Krugman. [http://www.nytimes.com/2014/03/28/opinion/krugman-americas-taxation-tradition.html America’s Taxation Tradition,’ ] in New York Times, 27 March 2014 .</ref>、元[[世界銀行]]のリードエコノミストである{{仮リンク|ブランコ・ミラノヴィッチ|en|Branko Milanović}}は、「経済の考えにおいて分岐点となる本の1つ」ととらえた<ref name="Cassidy" > John Cassidy,
[http://www.newyorker.com/arts/critics/books/2014/03/31/140331crbo_books_cassidy ‘Forces of Divergence:Is surging inequality endemic to capitalism?,’ ] in The New Yorker, 31 March, 2014</ref>。

フランス語版の書評が広く興奮を引き起こしたのに応えて、英語への翻訳は急ピッチで進められ、ハーバード大学出版は発売日を前倒しし2014年5月とした。その日、本書は一夜にしてスターになり<ref name = "The Economist2"> [http://www.economist.com/news/leaders/21601512-thomas-pikettys-blockbuster-book-great-piece-scholarship-poor-guide-policy&rct=j&frm=1&q=&esrc=s 'Thomas Piketty’s blockbuster book is a great piece of scholarship, but a poor guide to policy,'] Economist 3 May 2014.</ref>、{{仮リンク|マイケル・ルイス|en|Michael Lewis}}の『{{仮リンク|フラッシュ・ボーイズ|en|Flash Boys}}』から全米ベストセラーリスト1位の座を奪い取った<ref> John Lanchester [http://www.lrb.co.uk/v36/n11/john-lanchester/scalpers-inc ‘Flash Boys’] in London Review of Books Vol. 36 No. 11, 5 June 2014 pages 7-9 </ref>。同年、{{仮リンク|ステファニー・ケルトン|en|Stephanie Kelton}}は「ピケティ現象」について語り<ref name="Moore" >Heidi Moore, [http://www.theguardian.com/money/2014/sep/21/-sp-thomas-piketty-bestseller-why 'Why is Thomas Piketty's 700-page book a bestseller?,'] The Guardian 21 September 2014-09-21</ref>、ドイツでも、ピケティに関する書籍が3冊出版された<ref>Heinz-J. Bontrup, [http://www.labournet.de/wp-content/uploads/2014/06/piketty_bontrup2.pdf ''Pikettys Krisen-Analyse. Warum die Reichen immer reicher und die Armen immer ärmer werden,''] pad-verlag. Bergkamen 2014, ISBN 978-3-88515-260-6.</ref><ref> Albert F. Reiterer, [http://www.labournet.de/wp-content/uploads/2014/06/piketty_reiterer2.pdf ''Der Piketty-Hype – "The great U-Turn". Piketty's Kapital und die neoliberale Vermögenskonzentration'',] pad-Verlag, Bergkamen 2014, ISBN 978-3-88515-259-0.</ref><ref> Stephan Kaufmann, Ingo Stützle, [http://www.bertz-fischer.de/product_info.php%3FcPath%3D1_33%26products_id%3D447&rct=j&frm=1&q=&esrc=s ''Kapitalismus: Die ersten 200 Jahre. Thomas Pikettys "Das Kapital im 21. Jahrhundert": Einführung, Debatte, Kritik'',] Bertz + Fischer Verlag, Berlin 2014, ISBN 978-3-86505-730-3.</ref>。今後、31の言語への翻訳が予定されている<ref name="piketty37"/>。

== 評価 ==
ノーベル経済学賞受賞者の[[ポール・クルーグマン]]は本書を「素晴らしい」「不均衡についての考え方を一新するもの」<ref name="gilded age">Paul Krugman (May 8, 2014). [http://www.nybooks.com/articles/archives/2014/may/08/thomas-piketty-new-gilded-age/ Why We’re in a New Gilded Age]. ''New York Review of Books.'' Retrieved April 14, 2014.</ref>さらには「今年、そしておそらくこの10年間で最も重要な経済書」と称している<ref name="Krugman"/>。彼は本書を、ベストセラーになった他の経済書と比較して、「重大で、これまでとは異なる研究方法」で成り立っている点が異なるとしている<ref>Paul Krugman (April 24, 2014). [http://www.nytimes.com/2014/04/25/opinion/krugman-the-piketty-panic.html?hp&rref=opinion&_r=0 The Piketty Panic]. ''The New York Times.'' Retrieved April 26, 2014</ref>。また、次のようにも述べている。

<blockquote>富や収入が少数の人の手に集まっていることが中央政府の課題として再び問題視されるようになってきたとき、ピケティは、歴史的に見ていったいどんなおかしなことが起きているかについて、資料を出して教えてくれるだけではない。彼はまた、不均衡問題、すなわち平等な経済成長、資本家と労働者の所得の分配、個々人の間での富と収入の分配、といった問題の統一的な理論となるものをも提示しているのだ。『21世紀の資本論』は、あらゆる面でとてつもなく重要である。ピケティは我々の経済言説を変えてしまった。我々はもはや、かつてのような切り口で富や不均衡について語ることなど決してないであろう。<ref name="gilded age"/></blockquote>

ノーベル経済学賞を受賞した[[ロバート・ソロー]]は、ピケティは「古い主題に対して新しく力強い貢献をした。それは、利益率が経済成長率を上回っている限り、金持ちの収入と富は普通に働いている人の収入よりも増加しやすいということである」と評している<ref>Robert M. Solow. [http://www.newrepublic.com/article/117429/capital-twenty-first-century-thomas-piketty-reviewed Thomas Piketty Is Right]. ''The New Republic.''</ref>。

フランスの歴史学者・政治学者の[[エマニュエル・トッド]]は本書を「傑作」と呼び、「経済学にとっても、地球社会の発展にとっても影響力の大きい本」と評している<ref>Emmanuel Todd (September 14, 2013). [http://www.marianne.net/Piketty-decrypte-le-come-back-des-heritiers_a231808.html Piketty décrypte le come-back des héritiers]. ''Marianne.''</ref>。また、ピケティについて、「[[アナール学派]]を代表する最良の歴史家として記憶されるだろう」と評価している<ref>[[#トッド(2014)|トッド(2014)]] pp.241-242</ref>。

[[ジョセフ・スティグリッツ]]は、格差は資本主義固有の問題だという見方は本書の表面的な評価に過ぎないとして、それに加えて、本書について格差が拡大したことについての制度的な分析という点から評価を加えている<ref>{{Cite web |author=ジョセフ・スティグリッツ |date=2014-08-25|url=http://gendai.ismedia.jp/articles/-/40123|title=格差は必然的なものではない|publisher=講談社|accessdate=2014-10-23|ref=スティグリッツ(2014 現代ビジネス) }}</ref>。

[[ローレンス・サマーズ]]は、ピケティが集計した統計についてが評価したが、一方で、ピケティは資本から得られる見返りが減少することについて過小評価していると批判している。すなわち、サマーズの考えによれば、資本を増やすによって得られる利益は少なくなってゆくものであるから([[収穫逓減|収穫逓減の法則]])、不均衡の拡大には上限があるということになる。さらにサマーズは、ピケティのもう1つの仮定にも疑問を投げかけている。それは、利益の多くは再投資に回るというものである。貯蓄率が低下することになるため、これに関しても社会的には不均衡の上限というものが存在することになる<ref>{{cite news|url=http://www.theatlantic.com/business/archive/2014/05/thomas-piketty-is-right-about-the-past-and-wrong-about-the-future/370994/|title=Thomas Piketty Is Right About the Past and Wrong About the Future|date=May 16, 2014|work=The Atlantic|last=Summers|first=Lawrence}}</ref>。

またサマーズは、1982年におけるアメリカの富裕者上位に名を連ねていた400人のうち、2012年にもその地位を維持していたのはわずか10人に1人だった事も指摘している。富裕者層の財産は増加していない。さらに、富裕者上位1%の収入は現在大半が給与所得であり、資本から得られる収入ではない。他の多くの経済評論家は上位1%の収入の増加をグローバリゼーションと技術革新で説明している<ref name=ls>[http://www.democracyjournal.org/32/the-inequality-puzzle.php The Inequality Puzzle], Lawrence H. Summers, Democracy Journal, Issue #33, Summer 2014.</ref><ref>[[#広瀬(2014)|広瀬(2014)]] p.130</ref>。

マルクスを研究している学者の[[デヴィッド・ハーヴェイ]]は、「自由経済による資本主義によって皆が豊かになった、それは個人の権利と自由を守る大きな防御壁だ、などという広くいわれている視点」を本書がくつがえしたという面では評価しているが、他の面に関しては総じて批判的である。ピケティの「誤った資本の定義」について、ハーヴェイは次のように記している。

<blockquote>プロセスが全くなっていない。……より多くのお金を得るために、お金が使われる。そういった流れは良くあるものだが、それは労働力の利用を通じてのみ成し遂げられるわけではない。ピケティは資産というものを、個人、企業、政府が持っているすべての資源を足し合わせたものと定義しており、そして、その資源が使われようと使われまいと、資産は市場で取引することができると定義している。</blockquote>

ハーヴェイは、ピケティの「不均衡を救済するための提案は、夢を見ているとまでは言わないにせよ、考えが甘い。それにピケティは、21世紀の資本家のための経営モデルというものを少しも作りだしていない。だから我々にはまだマルクスまたはその現代版が必要なのだ」と述べている。ハーヴェイはまた、ピケティがマルクスの『資本論』を読みもしないで退けていることを批判している。<ref>David Harvey (May 20, 2014). [http://inthesetimes.com/article/16722/taking_on_capital_without_marx Taking on ‘Capital’ Without Marx: What Thomas Piketty misses in his critique of capitalism]. ''In These Times.'' Retrieved May 20, 2014.</ref>

[[ジョージ・メイソン大学]]教授の[[タイラー・コーエン]]は「資本家を「金利生活者」のように扱っているが、収益を得るための様々なリスクについては触れられていない」と非難している<ref>[[#コーエン(2014)|コーエン(2014)]] p.18</ref>。

格差の拡大を解消するための財産税(富裕税)については、ピケティ自身も実現の可能性はないと述べているが、批判が多い。[[アラン・グリーンスパン]]は「それは資本主義のやり方ではない」と述べ<ref>[[#グリーンスパン(2014)|グリーンスパン(2014)]] p.14</ref>、タイラー・コーエンも、この税を導入すれば政治や経済が不安定になると述べている<ref>[[#コーエン(2014)|コーエン(2014)]] p.22</ref>。コロンビア大学教授のウォジシェック・コップザックとエコノミストのアリソン・シュレージャーは、富裕者は資産をオフショアのタックスヘブンに移動することもできることを指摘し、また、富裕層はいろいろな手法を使って他の人々よりも多くの投資配当を得ることが多いので富裕税は格差の縮小につながらず、格差を縮小したいのであれば富よりも資本所得に課税する方が好ましいとしている<ref>[[#コップザック、シュレージャー(2014)|コップザック、シュレージャー(2014)]] pp.25-26</ref>。

日本語版の翻訳を担当している[[山形浩生]]は、本書に書かれている内容はとても単純なことだが、それをデータで裏付けできるようにしたことが優れていると評している<ref name="yamagata"/>。

[[中野剛志]]は、本書の主張は欧米などで主流の[[新自由主義]]を支持する人々にとって不都合な内容であると指摘している<ref>[[#中野(2014)|中野(2014)]] pp.145-146</ref>。そのため、こうした内容の本が米国でベストセラーになることは驚くべき現象であって、米国において30年以上続いた新自由主義の支配が終わりを迎えようとしていることを意味すると述べている<ref>[[#中野(2014)|中野(2014)]] pp.146,151-152</ref>。

== データエラー問題 ==
2014年5月23日、[[フィナンシャル・タイムズ]]の経済記者であるクリス・ジャイルズは、ピケティのデータの、特に富の不均衡が1970年代以降拡大しているという箇所に「説明できないエラー」を確認したと発表した<ref>Chris Giles (May 23, 2014). [http://www.ft.com/intl/cms/s/0/c9ce1a54-e281-11e3-89fd-00144feabdc0.html Thomas Piketty’s exhaustive inequality data turn out to be flawed]. ''Financial Times.'' Retrieved May 23, 2014.</ref><ref>Mark Gongloff (May 23, 2014). [http://www.huffingtonpost.com/2014/05/23/piketty-data-flaw_n_5380947.html Thomas Piketty's Inequality Data Contains 'Unexplained' Errors: FT]. ''The Huffington Post.'' Retrieved May 23, 2014.</ref><ref>Kevin Drum (May 23, 2014). [http://www.motherjones.com/kevin-drum/2014/05/chris-giles-challenges-thomas-pikettys-data-analysis Chris Giles Challenges Thomas Piketty's Data Analysis]. ''Mother Jones.'' Retrieved May 23, 2014.</ref><ref>{{cite web |first=Neil |last=Irwin |url=http://www.nytimes.com/2014/05/24/upshot/did-piketty-get-his-math-wrong.html |title=Did Thomas Piketty Get His Math Wrong? |work=The New York Times |date=May 23, 2014 |accessdate=May 25, 2014}}</ref><ref>{{cite web |first=Jamie |last=Doward |title=Thomas Piketty's economic data 'came out of thin air' |url=http://www.theguardian.com/business/2014/may/24/thomas-picketty-economics-data-errors |work=The Guardian |date=May 24, 2014 |accessdate=May 25, 2014}}</ref>。フィナンシャルタイムズによれば――

<blockquote>ここ数週間のベストセラーリストを席巻しているピケティ教授の577ページからなる本は、土台となるデータに、彼の研究結果をゆがめることになる幾つかの誤りが含まれている。フィナンシャル・タイムズは、ピケティの集計表に誤りと説明のつかない入力内容を発見した。これは昨年名声を損ねることになった{{仮リンク|カーメン・ラインハート|en|Carmen Reinhart}}と[[ケネス・ロゴフ]]による公的債務と成長率に関する論文<ref group="注釈">ラインハートとロゴフは、国家債務がGDPの90%を上回るとGDP成長率は低下するという論文を2010年に発表した。この論文はしばしば緊縮財政を主張する根拠として使用されていたが、2013年、この論文のデータには誤りがあることが明らかになった([http://gendai.ismedia.jp/articles/-/35572][http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPTYE93H04720130418])。</ref>と似たような事例である。

ピケティ教授の本で書かれている主要テーマは、富の不均衡が第一次大戦前の水準まで上昇するということである。今回の調査は、この主張の価値を低下させることになる。というのも、この調査で、ピケティ論文の参照元には富の総量が増えた分の分け前は少数の金持ちの手に渡るという彼の主張を裏付ける証拠がほとんど書かれていないことが分かったからである。<ref>{{cite web |first=Jordan |last=Weissmann |title=Financial Times: Piketty’s Data Is Full of Errors |url=http://www.slate.com/blogs/moneybox/2014/05/23/financial_times_on_piketty_his_data_is_wrong.html |work=Slate |date=May 23, 2014 |accessdate=May 25, 2014}}</ref>
</blockquote>

ピケティは自分の研究結果は正しいと反論し、そして、その後の研究でも富の不均衡が拡大しているという自分の結論は裏付けられている(ピケティは[[エマニュエル・サエズ]]と{{仮リンク|ガブリエル・ザックマン|de|Gabriel Zucman}}による発表[http://gabriel-zucman.eu/files/SaezZucman2014Slides.pdf The Distribution of US Wealth, Capital Income and Returns since 1913]を引いている)、実際問題として、米国では本に書いた以上の不均衡の拡大が見られていると主張した<ref>Thomas Piketty (May 23, 2014). [http://blogs.ft.com/money-supply/2014/05/23/piketty-response-to-ft-data-concerns/ Piketty response to FT data concerns]. ''[[Financial Times]].'' May 23, 2014</ref>。[[フランス通信社]]のインタビューでは、フィナンシャル・タイムズの記事を「真実味の無い批判」と責め、同紙について、「ばかげたものだ。この時代に生きるすべての人が、巨大な財産がますます大きくなっていることに気付いているというのに」と述べている<ref name="JenniferRankin">Jennifer Rankin (May 26, 2014). [http://www.theguardian.com/business/2014/may/26/thomas-piketty-financial-times-dishonest-criticism-economics-book-inequality Thomas Piketty accuses Financial Times of dishonest criticism]. ''The Guardian.'' Retrieved May 26, 2014.</ref>。

フィナンシャル・タイムズの告発は各紙で広く取り上げられた。幾つかの記事では、フィナンシャル・タイムズは事を大げさに述べていると報じた。例えば、フィナンシャル・タイムズの姉妹誌である[[エコノミスト]]は次のように書いている。

<blockquote>
ジャイルズ氏の分析には心動かされるものがある。この先、ジャイルズ氏、ピケティ氏、あるいは他の誰かによる追加調査で、間違いがあったかどうか、どのようにしてこれを発表するに到ったのか、効果は何なのかをはっきりさせることを強く望む。ジャイルズ氏が提供した資料を見る限りでは、しかし、資料はフィナンシャル・タイムズによる主張の多くを支持しているようには思えないし、『21世紀の資本論』における議論が間違いだと結論付けられるとも思えない<ref>{{cite web |last=R.A. |url=http://www.economist.com/blogs/freeexchange/2014/05/inequality-0 |work=The Economist |title=A Piketty problem? |date=May 24, 2014 |accessdate=May 25, 2014}}</ref>。
</blockquote>

ピケティは1つ1つの反証を[http://piketty.pse.ens.fr/files/capital21c/en/Piketty2014TechnicalAppendixResponsetoFT.pdf ウェブサイト]で公開している<ref>Ryan Grim (May 29, 2014). [http://www.huffingtonpost.com/2014/05/29/thomas-piketty-response_n_5412036.html Thomas Piketty Rebuts FT Charges: 'Criticism For The Sake Of Criticism']. ''The Huffington Post.'' Retrieved May 29, 2014.</ref>。


== 脚注 ==
== 脚注 ==
=== 注釈 ===
<references group="注釈"/>
=== 参照元 ===
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{{Reflist}}<!--注:新しい注をつける場合はここに書き加えるのではなく、本文中に<ref>と</ref>で囲んで挿入すること -->

== 参考文献 ==
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*{{Cite journal|和書
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|author=山井俊
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|publisher=はあと出版
|ref=山井(2014)}}


== 関連項目 ==
== 関連項目 ==

2014年11月4日 (火) 13:44時点における版

21世紀の資本論』(21せいきのしほんろん、: Le Capital au XXIe siecle: Capital in the Twenty-First Century)は、フランスの経済学者トマ・ピケティの著書。2013年にフランス語で公刊され、2014年4月には英語訳版が発売されるやAmazon.comの売上総合1位に輝くなど大ヒットした[1]。アメリカでは2014年春の発売以降、半年で50万部のベストセラーとなっており、多くの言語で翻訳されている[2]

長期的にみると資本収益率(r)は経済成長率(g)よりも大きく、その結果として富の集中が起こり、資本から得られる収益率が経済成長率を上回れば上回るほど富はより資本家へ蓄積される。そして富が公平に分配されないことによって社会や経済が不安定となるということを主題としている。この格差を是正するために、富裕税を、それも世界的に導入することを提案している。

日本での版権を持つみすず書房によれば、日本語版は2014年12月出版される予定[3]

本書の内容

資本主義の特徴は一握りの資本家が多くの資産を蓄えることのできる格差社会である。そして富の不均衡は干渉主義を取り入れることで解決することができる。これが本書の主題である[4]。資本主義を作りなおさなければ、まさに庶民階級そのものが危うくなるだろう[4]

議論の出発点となるのは、資本収益率(r)と経済成長率(g)の関係式である。rとは利潤、配当金、利息、貸出料など、資本から入ってくる収入のことである。そしてgは、給与所得などによって求められる。過去200年以上のデータを分析すると、資本収益率(r)は平均で年に5%程度であるが、経済成長率(g)は1%から2%の範囲で収まっていることが明らかになった[5]。このことから、経済的不平等が増してゆく基本的な力は、r>gという不等式にまとめることができる。すなわち、資産によって得られる富の方が、労働によって得られる富よりも速く蓄積されやすいため、資産金額で見たときに上位10%、1%といった位置にいる人のほうがより裕福になりやすく、結果として格差は拡大しやすい。また、この式から相続についても分析できる。すなわち蓄積された資産は子に相続され、労働者には分配されない。たとえば19世紀後半から20世紀初頭にかけてのベル・エポックの時代は華やかな時代といわれているが、この時代は資産の9割が相続によるものだった。また、格差は非常に大きく、フランスでは上位1%が6割の資産を所有していた[5][6]

一方で、1930年から1975年のあいだは、いくつかのかなり特殊な環境によって、格差拡大へと向かう流れが引き戻された。特殊な環境とはつまり2度の世界大戦や世界恐慌のことで、こうした出来事によって富が、特に上流階級が持っていた富が、失われたのである[7]。また、戦費を調達するために、相続税や累進の所得税が導入され、富裕層への課税が強化された[8][9]。さらに第二次世界大戦後に起こった高度成長の時代も、高い経済成長率(g)によって相続などによる財産の重要性を減らすことになった[7][10]

しかし1970年代後半からは富裕層や大企業に対する減税などの政策によって、格差が再び拡大に向かうようになった[11][12]。そしてデータから、現代の欧米は「第二のベル・エポック」に突入し、中産階級は消滅へと向かっていると判断できる[13]。つまり今日の世界は、経済の大部分を相続による富が握っている「世襲制資本主義」に回帰しており、これらの力は増大して寡頭制を生みだす[14]。また、今後は経済成長率が低い世界が予測されるので、資本収益率(r)は引き続き経済成長率(g)を上回る。そのため、何も対策を打たなければ、富の不均衡は維持されることになる[15]。科学技術が急速に発達することによって経済成長率が20世紀のレベルに戻るという考えは受け入れがたい。我々は「技術の気まぐれ」に身をゆだねるべきではない[7]

不均衡を和らげるには、最高税率年2%の累進的な財産税を導入し、最高80%の累進所得税と組み合わせれば良い[7]。その際、富裕層が資産をタックス・ヘイヴンのような場所に移動することを防ぐため、この税に関しての国際的な協定を結ぶ必要がある。しかしこのようなグローバルな課税というのは夢想的なアイディアであり、実現は難しい[13]

特徴

フランス語版は総ページ数950ページ以上、厚さ4.4センチメートルという大部である。英語版は活字を小さくするなどの変更を施したが、それでもページ数は700ページ近くになる[16]

特徴的なのは200年以上の膨大な資産や所得のデータを積み上げて分析したことで、それが本書を長大なものにしている[17][18]。ピケティはこのデータを集め分析するのに15年の歳月を費やした[17][19]ローレンス・サマーズは、この統計データだけでノーベル賞に値すると述べている[20]

内容面での特徴としては、アメリカン・ドリームの否定が挙げられる。すなわち、アメリカでは生まれが貧しくても努力することで出世し裕福になれると信じられていたが、ピケティは、現在のアメリカは他国と比べてそのような流動性は高くないことを実証した。さらに、大学への入学においても両親の経済力が大いに物を言うことを指摘している[21][22]

さらにピケティは、サイモン・クズネッツの仮説をも否定している。クズネッツの仮説とは逆U字型仮説と呼ばれるもので、資本主義経済では経済成長の初期には格差が拡大するが、その後格差は縮小に向かうという説である。実際、クズネッツがこの仮説を発表した1955年の時点では格差は縮小していたのであるが、ピケティは1980年代になると格差が再び拡大していることを示した。ピケティはクズネッツの仮説について、冷戦時代に共産主義に対抗するために作られたものにすぎないと述べている[23][5]

一般的な経済論文とは異なり、数式はほとんど登場しない[20]。代わりにオノレ・ド・バルザックジェーン・オースティンヘンリー・ジェイムズの小説などを引用して、19世紀初期のイギリスやフランスに存在した、相続財産によって固定された階級を説明している[7][24]。例えばバルザックの『ゴリオ爺さん』では、登場人物が、裁判官や弁護士、検事として働くのと、銀行家の娘と結婚するのとどちらが早く富を得られるかについて語る場面を紹介している。そしてピケティはその時代のデータを分析し、結婚した方が早く富を得られることを確かめている[25]

『21世紀の資本論』という書名は、カール・マルクスの『資本論』を思い起こさせる。実際、ビジネスウィーク誌での特集の書き出しは、「一匹の妖怪が欧州と米国を徘徊している。富裕階級という妖怪が」という、マルクスの『共産党宣言』を意識した記述で始まっており[26]、ピケティを批判する人の中には、彼を共産主義者だと言う声もある[27][28][29][30]。しかしピケティは『資本論』を読んでおらず[31]、資本主義も否定していない[32]

出版と当初の反応

2013年8月にフランスで最初に出版されたときはあまり注目されていなかった[26][33]が、発売後は1週間で6,000部を売り上げた[16]。ローラン・モデュイは「政治的思想的ブルドーザー」と例え[34][35]、週刊誌レクスプレス英語版は「経済問題はフランス人を熱中させる」と報じた[16]。本書の主題がニュースとして英語圏に広がると、エコノミスト誌は「権威ある」と称して歓迎した[36]ポール・クルーグマンは本書を「画期的」と呼び[37]、元世界銀行のリードエコノミストであるブランコ・ミラノヴィッチ英語版は、「経済の考えにおいて分岐点となる本の1つ」ととらえた[38]

フランス語版の書評が広く興奮を引き起こしたのに応えて、英語への翻訳は急ピッチで進められ、ハーバード大学出版は発売日を前倒しし2014年5月とした。その日、本書は一夜にしてスターになり[39]マイケル・ルイスの『フラッシュ・ボーイズ英語版』から全米ベストセラーリスト1位の座を奪い取った[40]。同年、ステファニー・ケルトンは「ピケティ現象」について語り[41]、ドイツでも、ピケティに関する書籍が3冊出版された[42][43][44]。今後、31の言語への翻訳が予定されている[33]

評価

ノーベル経済学賞受賞者のポール・クルーグマンは本書を「素晴らしい」「不均衡についての考え方を一新するもの」[45]さらには「今年、そしておそらくこの10年間で最も重要な経済書」と称している[14]。彼は本書を、ベストセラーになった他の経済書と比較して、「重大で、これまでとは異なる研究方法」で成り立っている点が異なるとしている[46]。また、次のようにも述べている。

富や収入が少数の人の手に集まっていることが中央政府の課題として再び問題視されるようになってきたとき、ピケティは、歴史的に見ていったいどんなおかしなことが起きているかについて、資料を出して教えてくれるだけではない。彼はまた、不均衡問題、すなわち平等な経済成長、資本家と労働者の所得の分配、個々人の間での富と収入の分配、といった問題の統一的な理論となるものをも提示しているのだ。『21世紀の資本論』は、あらゆる面でとてつもなく重要である。ピケティは我々の経済言説を変えてしまった。我々はもはや、かつてのような切り口で富や不均衡について語ることなど決してないであろう。[45]

ノーベル経済学賞を受賞したロバート・ソローは、ピケティは「古い主題に対して新しく力強い貢献をした。それは、利益率が経済成長率を上回っている限り、金持ちの収入と富は普通に働いている人の収入よりも増加しやすいということである」と評している[47]

フランスの歴史学者・政治学者のエマニュエル・トッドは本書を「傑作」と呼び、「経済学にとっても、地球社会の発展にとっても影響力の大きい本」と評している[48]。また、ピケティについて、「アナール学派を代表する最良の歴史家として記憶されるだろう」と評価している[49]

ジョセフ・スティグリッツは、格差は資本主義固有の問題だという見方は本書の表面的な評価に過ぎないとして、それに加えて、本書について格差が拡大したことについての制度的な分析という点から評価を加えている[50]

ローレンス・サマーズは、ピケティが集計した統計についてが評価したが、一方で、ピケティは資本から得られる見返りが減少することについて過小評価していると批判している。すなわち、サマーズの考えによれば、資本を増やすによって得られる利益は少なくなってゆくものであるから(収穫逓減の法則)、不均衡の拡大には上限があるということになる。さらにサマーズは、ピケティのもう1つの仮定にも疑問を投げかけている。それは、利益の多くは再投資に回るというものである。貯蓄率が低下することになるため、これに関しても社会的には不均衡の上限というものが存在することになる[51]

またサマーズは、1982年におけるアメリカの富裕者上位に名を連ねていた400人のうち、2012年にもその地位を維持していたのはわずか10人に1人だった事も指摘している。富裕者層の財産は増加していない。さらに、富裕者上位1%の収入は現在大半が給与所得であり、資本から得られる収入ではない。他の多くの経済評論家は上位1%の収入の増加をグローバリゼーションと技術革新で説明している[52][53]

マルクスを研究している学者のデヴィッド・ハーヴェイは、「自由経済による資本主義によって皆が豊かになった、それは個人の権利と自由を守る大きな防御壁だ、などという広くいわれている視点」を本書がくつがえしたという面では評価しているが、他の面に関しては総じて批判的である。ピケティの「誤った資本の定義」について、ハーヴェイは次のように記している。

プロセスが全くなっていない。……より多くのお金を得るために、お金が使われる。そういった流れは良くあるものだが、それは労働力の利用を通じてのみ成し遂げられるわけではない。ピケティは資産というものを、個人、企業、政府が持っているすべての資源を足し合わせたものと定義しており、そして、その資源が使われようと使われまいと、資産は市場で取引することができると定義している。

ハーヴェイは、ピケティの「不均衡を救済するための提案は、夢を見ているとまでは言わないにせよ、考えが甘い。それにピケティは、21世紀の資本家のための経営モデルというものを少しも作りだしていない。だから我々にはまだマルクスまたはその現代版が必要なのだ」と述べている。ハーヴェイはまた、ピケティがマルクスの『資本論』を読みもしないで退けていることを批判している。[54]

ジョージ・メイソン大学教授のタイラー・コーエンは「資本家を「金利生活者」のように扱っているが、収益を得るための様々なリスクについては触れられていない」と非難している[55]

格差の拡大を解消するための財産税(富裕税)については、ピケティ自身も実現の可能性はないと述べているが、批判が多い。アラン・グリーンスパンは「それは資本主義のやり方ではない」と述べ[56]、タイラー・コーエンも、この税を導入すれば政治や経済が不安定になると述べている[57]。コロンビア大学教授のウォジシェック・コップザックとエコノミストのアリソン・シュレージャーは、富裕者は資産をオフショアのタックスヘブンに移動することもできることを指摘し、また、富裕層はいろいろな手法を使って他の人々よりも多くの投資配当を得ることが多いので富裕税は格差の縮小につながらず、格差を縮小したいのであれば富よりも資本所得に課税する方が好ましいとしている[58]

日本語版の翻訳を担当している山形浩生は、本書に書かれている内容はとても単純なことだが、それをデータで裏付けできるようにしたことが優れていると評している[18]

中野剛志は、本書の主張は欧米などで主流の新自由主義を支持する人々にとって不都合な内容であると指摘している[59]。そのため、こうした内容の本が米国でベストセラーになることは驚くべき現象であって、米国において30年以上続いた新自由主義の支配が終わりを迎えようとしていることを意味すると述べている[60]

データエラー問題

2014年5月23日、フィナンシャル・タイムズの経済記者であるクリス・ジャイルズは、ピケティのデータの、特に富の不均衡が1970年代以降拡大しているという箇所に「説明できないエラー」を確認したと発表した[61][62][63][64][65]。フィナンシャルタイムズによれば――

ここ数週間のベストセラーリストを席巻しているピケティ教授の577ページからなる本は、土台となるデータに、彼の研究結果をゆがめることになる幾つかの誤りが含まれている。フィナンシャル・タイムズは、ピケティの集計表に誤りと説明のつかない入力内容を発見した。これは昨年名声を損ねることになったカーメン・ラインハートケネス・ロゴフによる公的債務と成長率に関する論文[注釈 1]と似たような事例である。

ピケティ教授の本で書かれている主要テーマは、富の不均衡が第一次大戦前の水準まで上昇するということである。今回の調査は、この主張の価値を低下させることになる。というのも、この調査で、ピケティ論文の参照元には富の総量が増えた分の分け前は少数の金持ちの手に渡るという彼の主張を裏付ける証拠がほとんど書かれていないことが分かったからである。[66]

ピケティは自分の研究結果は正しいと反論し、そして、その後の研究でも富の不均衡が拡大しているという自分の結論は裏付けられている(ピケティはエマニュエル・サエズガブリエル・ザックマンドイツ語版による発表The Distribution of US Wealth, Capital Income and Returns since 1913を引いている)、実際問題として、米国では本に書いた以上の不均衡の拡大が見られていると主張した[67]フランス通信社のインタビューでは、フィナンシャル・タイムズの記事を「真実味の無い批判」と責め、同紙について、「ばかげたものだ。この時代に生きるすべての人が、巨大な財産がますます大きくなっていることに気付いているというのに」と述べている[68]

フィナンシャル・タイムズの告発は各紙で広く取り上げられた。幾つかの記事では、フィナンシャル・タイムズは事を大げさに述べていると報じた。例えば、フィナンシャル・タイムズの姉妹誌であるエコノミストは次のように書いている。

ジャイルズ氏の分析には心動かされるものがある。この先、ジャイルズ氏、ピケティ氏、あるいは他の誰かによる追加調査で、間違いがあったかどうか、どのようにしてこれを発表するに到ったのか、効果は何なのかをはっきりさせることを強く望む。ジャイルズ氏が提供した資料を見る限りでは、しかし、資料はフィナンシャル・タイムズによる主張の多くを支持しているようには思えないし、『21世紀の資本論』における議論が間違いだと結論付けられるとも思えない[69]

ピケティは1つ1つの反証をウェブサイトで公開している[70]

脚注

注釈

  1. ^ ラインハートとロゴフは、国家債務がGDPの90%を上回るとGDP成長率は低下するという論文を2010年に発表した。この論文はしばしば緊縮財政を主張する根拠として使用されていたが、2013年、この論文のデータには誤りがあることが明らかになった([1][2])。

参照元

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参考文献

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  • 「特集 21世紀の資本論 : ピケティは問う あなたはいつまで中間層か」『週刊東洋経済』第6540巻、東洋経済新報社、2014年7月、pp.467-491、ISSN 0918-5755 
    • トマ・ピケティ「格差の現実を直視せよ:『21世紀の資本論』著者 トマ・ピケティ独占インタビュー」。 
    • 「5分で読んだ気になる! 『21世紀の資本論』3つのポイント」。 
    • 池田信夫「もっと理解するための視点 成長理論で読み解く 富める者がますます富む構造」。 
    • リチャード・カッツ「米国はなぜピケティに熱狂するのか」。 
  • エマニュエル・トッド「トマ・ピケティ 鮮やかな「歴史家」の誕生」『文藝春秋special』第8巻第3号、文藝春秋、2014年、pp.240-245。 
  • 中野剛志「「21世紀の資本論」新自由主義への警告」『文藝春秋』第92巻第12号、文藝春秋、2014年10月、pp.144-152。 
  • 広岡裕児「オバマも注目『21世紀の資本論』が米国で40万部も売れた理由」『文藝春秋special』第8巻第3号、文藝春秋、2014年、pp.232-239。 
  • 広瀬英治「『21世紀の資本論』が米国で読まれる理由』」『中央公論』第129巻第8号、中央公論新社、2014年8月、pp.126-131、ISSN 0529-6838 
  • 「特集 先進国経済と資本主義の未来」『フォーリン・アフェアーズ・ジャパン』第2014巻第6号、フォーリン・アフェアーズ・ジャパン、2014年6月、pp.6-26、ISSN 1883-7093 
    • アラン・グリーンスパン「CFR Meeting 世界経済の現状をどうみるか : アラン・グリーンスパンとの対話」。 
    • タイラー・コーエン「21世紀の資本主義を考える : 富に対するグローバルな課税?」。 
    • ウォジシェック・コップザック、アリソン・シュレージャー「不平等という幻想:なぜ富裕税は機能しないか」。 
  • 山井俊「経済学に事件『21世紀の資本論』 資本と格差とシリコンバレーと」『ニューリーダー』第27巻第7号、はあと出版、2014年7月、pp.48-51。 

関連項目