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「ビルバオ・グッゲンハイム美術館」の版間の差分

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[[ファイル:Guggenheim detail.jpg|thumbnail||300px|ビルバオ・グッゲンハイム美術館]]
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'''ビルバオ・グッゲンハイム美術館'''('''Museo Guggenheim Bilbao''', 英語:''Guggenheim Museum Bilbao'')は、[[スペイン]]の[[バスク自治州]][[ビルバオ]]にある、近現代美術専門の[[美術]]であ。アメリカの[[ソロモン・R・グッゲンハイム]]財団設立した[[グッゲンハイム美術館]]の分館のつである。[[1997年]][[10月18日]]開館


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建物はアメリカの鬼才、[[建築家]][[フランク・ゲーリー|フランク・O・ゲーリー]]によって設計され、[[脱構築主義建築]]の傑作とされている。平らな面が一切ないとされ、[[チタニウム]]の板がうねる過激で有機的な形は、[[戦闘機]]の設計などに使用される[[CAD]]システムを用いて構造計算されるなど、時代の最先端の技術を利用して設計されている。建物外観は[[ネルビオン川]]に浮かぶ船のようにも見え、また[[神戸市|神戸]]の[[フィッシュ・ダンス]]ホールなどゲーリーの旧作に多用されてきた魚のイメージにも見えるが、これは港町であるビルバオの地域性を意識したものという。
|名称=ビルバオ・グッゲンハイム美術館<br />Guggenheim Museum Bilbao
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|専門分野=近現代美術
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}}
'''ビルバオ・グッゲンハイム美術館'''({{lang-es|Museo Guggenheim Bilbao}}, {{lang-en|Guggenheim Museum Bilbao}})は、[[スペイン]][[ビルバオ]]にある[[美術館]]。[[近現代美術]]が専門であり、1997年10月18日に開館した。アメリカの[[ソロモン・R・グッゲンハイム]]財団設立した[[グッゲンハイム美術館]]の分館のひとつであり、建築家の[[フランク・ゲーリー]]が設計を担当した


ビルバオ市中心部のアバンド地区にあり、ビルバオ市内を流れる[[ネルビオン川]]に隣接している。国内外の作家による常設展示や特別展示が行われている。ビルバオ・グッゲンハイム美術館の建物は[[現代建築]]でもっとも称賛される作品のひとつであり、「この建物についての評価で批評家・学者・公衆が完全に一体となる稀な瞬間」があるとして、「アーキテクチュアル・カルチャーにおけるシグナルのモーメント」として称えられている<ref name="VF Tyrnauer 2010">{{cite news|last=Tyrnauer|first=Matt|title=Architecture in the Age of Gehry|url=http://www.vanityfair.com/culture/features/2010/08/architecture-survey-201008?currentPage=all|accessdate=22 July 2010|newspaper=Vanity Fair|date=30 June 2010}}</ref>。2010年に世界建築調査機関が建築家に対して行った調査では、1980年以降の30年間でもっとも重要な建築物のひとつとして頻繁に名前を挙げられる<ref name="VF Tyrnauer 2010" />。2007年の入場者数は1,002,963 人<ref>[http://www.aol.es/noticias/story/El-Museo-Guggenheim-de-Bilbao-recibi%C3%B3-en-2007-1.002.963-visitantes,-un-0,6%25-menos-que-en-2006/3380584/index.html]AOL</ref>、2008年の入場者数は951,369人<ref>[http://www.elmundo.es/elmundo/2009/01/12/cultura/1231778022.html El Guggenheim de Bilbao recibe un 5% menos de visitas]El Mundo、2009年1月12日</ref>だった。
開館後はそのモンスターのように異様な外観が話題になり、鉄鋼業などくすんだ工業都市の印象の強かったビルバオに急激に観光客を増やした。スペイン・ビルバオ・グッゲンハイム分館は、年間100万人の動員で地元に大きな経済効果をもたらしている。しかし美術ファンの中には、建物の印象が強すぎて中にあるコレクションがかすんでしまうという批判もある。


== 歴史 ==
展示は[[20世紀]]の近代・現代美術を中心としている。アメリカのグッゲンハイム財団は世界分館構想を持ち、[[ニューヨーク]]の[[グッゲンハイム美術館]]、[[ヴェネツィア]]の「[[ペギー・グッゲンハイム・コレクション]]」のほか、[[ラスベガス・グッゲンハイム美術館]]、[[ベルリン・グッゲンハイム美術館]]など、世界各地に美術館を持つ拡大路線を志向している。
1991年、[[バスク自治州]]政府は[[ソロモン・R・グッゲンハイム財団]]に対して、ビルバオの老朽化した港湾地区にグッゲンハイム美術館を建設することを提案した<ref name=Templer>Templer, Karen. [http://www.salon.com/1999/10/05/gehry/ "Frank Gehry"] Salon、1999年10月5日、2012年3月27日閲覧</ref><ref name=ArchBilbao>[http://www.guggenheim.org/guggenheim-foundation/architecture/bilbao "Guggenheim Museum Bilbao"] The Solomon R. Guggenheim Foundation、2012年4月4日閲覧</ref><ref name=Security>[http://articles.cnn.com/1997-10-18/world/9710_18_spain.guggenheim_1_eta-basque-homeland-guggenheim-museum?_s=PM:WORLD Security tight before Guggenheim Museum opens in Basque city] CNN、1997年10月18日</ref>。バスク自治州政府は1億USドルの建設費用を負担すること、5,000万USドルを作品の新規購入費用に充てること、グッゲンハイム財団に対して展示会1回あたり2,000万USドルを支払うこと、美術館の年間予算1,200万USドルを補助することなどを承諾した。これらの代わりにグッゲンハイム財団は美術館を管理し、財団が所蔵する作品の一部を回して特別展を開催することを承諾した<ref name=Riding1>Riding, Alan. [http://www.nytimes.com/1997/06/24/arts/a-gleaming-new-guggenheim-for-grimy-bilbao.html "A Gleaming New Guggenheim for Grimy Bilbao"] The New York Times、1997年6月24日</ref>。グッゲンハイム財団は世界分館構想を持ち、[[ニューヨーク]]の[[グッゲンハイム美術館]]、[[ヴェネツィア]]の[[ペギー・グッゲンハイム・コレクション]]のほか、[[グッゲンハイム・ラスベガス]]、[[ドイツ・グッゲンハイム・ベルリン]]など、世界各地に美術館を持つ拡大路線を志向している。


建物はフェロビアル社によって建設され<ref>[http://www.ferrovial.com/en/index.asp?MP=14&MS=254&MN=3 Ferrovial history]</ref>、建設費用は8,900万USドルだった<ref>Ouroussoff, Nicolai. [http://articles.latimes.com/1997-06-02/entertainment/ca-64765_1_gehry-guggenheim-bilbao-krens "The Architect's New Museum in Bilbao, Spain, Emerges as a Testament to One Man's Optimism Amid a Landscape of Industrial Decay"] Los Angeles Times、1997年6月2日</ref>。建物は日程面でも予算面でも予定通りに建設され、この種の建築物の中では稀な部類である。[[KLMオランダ航空]]は建築費として100万USドルを寄付した。1997年10月17日、正式開館日の前夜に屋外で行われたプレオープンイベントには5,000人のビルバオ市民が出席し、ライトショーやコンサートなどを楽しんだ。10月18日、[[フアン・カルロス1世]]によって開館が宣言された<ref name=Security/>。
映画『[[007 ワールド・イズ・ノット・イナフ]]』(1999年)ではビルバオの市街地が舞台となり、冒頭ではこの美術館の開館した頃の姿を見ることができる。

[[ファイル:Guggenheim-bilbao-jan05.jpg|center|thumb|550px|ネルビオン川(ビルバオ川)沿いの下町に出現した美術館]]
== 建物 ==
== 主な収蔵品(建物に設置された恒久展示作品) ==
[[File:GuggenheimBilbao.jpg|thumb|180px|right|ガラス、チタニウム、石灰岩で覆われた建物]]
[[ファイル:Puppy Koons Bilbao.jpg|thumb|250px|[[ジェフ・クーンズ]] 『パピー』 ]]

*{{仮リンク|リチャード・セラ|en|Richard Serra}} スネーク』 (1994年-1997年)
=== 建物の構造 ===
*[[ジェニー・ホルツァー]] 『インスタレーション・フォー・ビルバオ』 (1997年)
ソロモン・R・グッゲンハイム財団はアメリカ人建築家の[[フランク・ゲーリー]]を建物の設計に、[[トーマス・クレンス]]を美術館のディレクターに選出し、大胆かつ革新的な美術館であることを求めた<ref>Gehry, Frank. ''Frank Gehry Talks Architecture and Process'' (New York: Rizolli, 1999), p. 20</ref>。建物外壁の曲面は無規則性が意図され、ゲーリーは「曲面の無規則性が光を集めるように設計した」と述べた<ref name="aggarwal">{{Cite web |last=Aggerwal |first=Artika |title=Frank Owen Gerty |accessdate=2011-08-18 |url=http://www.archinomy.com/case-studies/1931/frank-owen-gehry}}</ref>。[[戦闘機]]の設計などに使用される[[CAD]]システムを用いて構造計算されるなど、時代の最先端の技術を利用して設計されている。内部は大規模で明るいアトリウムを中心に設計され、アトリウムからは[[ビルバオ河口]]とビルバオ周辺の山地が見渡せる<ref name=Priceless>Walsh, John. [http://www.independent.co.uk/arts-entertainment/art/features/the-priceless-peggy-guggenheim-1806124.html "The priceless Peggy Guggenheim"] The Independent、2009年10月21日、2012年3月12日</ref>。美術館の中央部をまとめている形状から、ゲーリーはこのアトリウムをフラワー(The Flower)と名付けた<ref name=Riding1/>。
*[[ジェフ・クーンズ]] 『パピー』 (1992年)

*[[ルイーズ・ブルジョワ]] 『ママン』 (1999年)
=== 建物の評価 ===
1997年に美術館が開館すると、ゲーリー本人が建築上の運動と自分自身を関連付けているわけではないが<ref name="lee" />、すぐに[[脱構築主義建築]](デコンストラクティビズム)でもっとも壮観な建築物のひとつ、20世紀の傑作として称賛を集めた<ref name=Tompkins>Tompkins, Calvin. [http://www.newyorker.com/archive/1997/07/07/1997_07_07_038_TNY_CARDS_000378216 "The Maverick"] The New Yorker、1997年7月7日、2012年3月13日閲覧</ref>。建築家の[[フィリップ・ジョンソン]]は「我々の時代で最高の建築物」と表現し<ref>Tyrnauer, Matt. [http://www.vanityfair.com/culture/features/2010/08/architecture-survey-201008 "Architecture in the Age of Gehry"], ''Vanity Fair'', August 2010, accessed March 27, 2012</ref>、 評論家の[[カルヴァン・トムキンス]]は「ザ・ニューヨーカー」で、魚の鱗を連想させてきらきらと反射するパネルについて、「チタニウムの外套をまとい、うねるような形状の、幻想的な夢の船」と表現した<ref name=Tompkins/>。建築批評家の[[ハーバート・ムシャンプ]]は「ニューヨーク・タイムズ・マガジン」で「マーキュリアルなブリリアンスだ!」と称賛した<ref name=Muschamp>Muschamp, Herbert. [http://www.nytimes.com/1997/09/07/magazine/the-miracle-in-bilbao.html "The Miracle in Bilbao"] The New York Times Magazine、1997年9月7日、2012年4月14日閲覧</ref>。[[インデペンデント]]紙は美術館を「驚くべき建築の偉業」と呼んだ<ref name = Priceless/>。美術館に触発された似たようなデザインの建築物には、アメリカ・カリフォルニア州にあるセリトス・ミレニアム図書館などがある。

美術館は[[ネルビオン川]]に沿った旧工業地区の32,500m<sup>2</sup>の面積に建てられ、石、ガラス、[[チタニウム]]によって構成された美術館の建物は市街地の風景に溶け込んでいる。通りから見ると地味だが、川沿いから見ると印象的である<ref name=Templer/><ref name=Muschamp/>。11,000 m<sup>2</sup>が展示空間であり、ニューヨークやヴェネツィアのグッゲンハイム美術館よりも大きな展示空間を持つ<ref name=Security/>。19の展示室のうち10の展示室は壁が直行した古典的な長方形の形状であり、石材の磨き方によって他と区別することができる。残りの9の展示室は不規則な形状であり、その有機的な渦巻形状やチタニウムの板材の貼り方で他と区別することができる。最大の展示室は幅30m×長さ130mである<ref name=ArchBilbao/><ref name=Muschamp/>。2005年には{{仮リンク|リチャード・セラ|en|Richard Serra}}の記念碑的なインスタレーション展示「The Matter of Time」が開催され、美術批評家の[[ロバート・ヒューズ]]は「勇敢で崇高」と評した<ref>Hughes, Robert, [http://www.guardian.co.uk/artanddesign/2005/jun/22/art "Man of Steel"] The Guardian、2005年6月22日、2012年3月27日閲覧</ref>。

== 展示 ==
グッゲンハイム財団の現代美術コレクションの中から選ばれた作品に加え、長さ102メートルにも及ぶ{{仮リンク|リチャード・セラ|en|Richard Serra}}の『Snake』(蛇)など、[[サイトスペシフィック・アート|サイト・スペシフィック]]な(場所特定的な)大規模な作品や現代芸術家の[[インスタレーション]]や、バスク人芸術家の作品などを特徴としている<ref name=Priceless/>。1997年の開館時には、[[キュビズム]]から新しいメディアアートまでの20世紀の300作品を概観する企画展示を行った。多くの作品はグッゲンハイムの所蔵作品だが、[[ウィレム・デ・クーニング]]、[[マーク・ロスコ]]、[[クリフォード・スティル]]などの絵画を新規購入し、[[フランチェスコ・クレメンテ]]、[[アンゼルム・キーファー]]、[[ジェニー・ホルツァー]]、リチャード・セラなどには新作の製作を依頼した<ref name=Riding1/>。

常設展示作品は何度か変更されており、特別展以外の期間中は中国芸術やロシア芸術などのテーマ展示を開催している。伝統的な絵画や彫刻はインスタレーションや電子媒体による展示に比べて少数派である。収蔵作品や常設展示の主役はリチャード・セラの『The Matter of Time』や[[耐候性鋼]]による彫刻作品群などであり、長さ130メートルのアルセロール・ギャラリー<ref>かつてはフィッシュ・ギャラリーという名称だったが、鉄鋼メーカーがスポンサーとなって現名称に変更された。</ref>内に展示されている<ref>[http://www.artnet.com/Magazine/news/artnetnews2/artnetnews4-13-2.asp Bird's-eye rendering of the Arcelor Gallery with layout of installation "The Matter of Time"] Artnet News、2012年4月14日閲覧</ref>。収蔵作品は[[前衛芸術]]、20世紀の抽象芸術、非具象芸術的な面が強調されている。2011年には、美術館の管財人であるギリシャの実業家ディミトリス・ダスカロプーロスが所有する作品で『The Luminous Interval』という特別展示を開催したが、美術館の大規模支援者に対する学芸員の影響力が強すぎるとして批判を呼んだ<ref>Vogel, Carol. [http://www.nytimes.com/2010/12/17/arts/design/17vogel.html "Guggenheim Defends Show of Trustee’s Art"] The New York Times、2010年12月16日</ref>。2012年に行われた[[デイヴィッド・ホックニー]]の特別展は29万人の来館者を集めた。

<gallery widths=160px heights=130>
File:Richard Serra-The Matter of Time.jpg|{{仮リンク|リチャード・セラ|en|Richard Serra}} - The Matter of Time』
File:A Bibao - Puppy - de Jeff Koons.jpg|[[ジェフ・クーンズ]] - 『パピー』
</gallery>

== 経済とメディアへの影響 ==
[[File:Bilbao 05 2012 Guggenheim Aerial Panorama 2007.jpg|thumb|400px|空から見た美術館]]

ビルバオはスペイン屈指の工業都市だったが、1990年代以降に産業が衰退した。美術館はビルバオの経済活性化の一環として開館した<ref name="Cañadillas et Daza">{{Cite web| last =Cañadillas| first =Iñaki | title =''Caso práctico: La Planificación Estratégica del Museo Guggenheim Bilbao desde una perspectiva de Marketing'' |accessdate=October 13, 2011|url=http://www.ehu.es/cuadernosdegestion/documentos/916.pdf}}</ref>。その開館後すぐに人気観光地となり、世界中から観光客を集めた<ref name="lee">{{Cite news| last =Lee| first =Denny | title =Bilbao, 10 Years Later| newspaper =The New York Times|date=September 23, 2007| url=http://travel.nytimes.com/2007/09/23/travel/23bilbao.html?em&ex=1190606400&en=898bb5be11939f56&ei=5087%0A}}</ref>。最初の3年間に400万人を集め、約5億ユーロの経済効果を得た。バスク自治州政府は、観光客がホテル、レストラン、ショップ、交通機関に落とす金額は1億ユーロに上り、支払った建設費用を上回っていると見積もっている<ref>Crawford, Leslie. [http://yaleglobal.yale.edu/content/guggenheim-bilbao-and-%E2%80%98hot-banana%E2%80%99 "Guggenheim, Bilbao, and the 'hot banana'"] Financial Times、2001年9月4日</ref>。美術館がどうビルバオ市を変えたかを指すために「ビルバオ効果」という用語が生まれた。しかしその一方で、この用語は[[ジェントリフィケーション]]や文化的帝国主義の象徴として美術館を非難するためにも使用されている<ref>Hedgecoe, Guy. [http://www.dw.de/dw/article/0,,15904659,00.html "Bilbao's Guggenheim continues to divide"] Deutsche Welle、2012年6月6日</ref>。[[ウォールストリートジャーナル]]は『ビルバオ効果』は『ビルバオの例外』と呼ばれるべきであると示唆した<ref>Rybczynski, Witold. [http://online.wsj.com/article/SB122731149503149341.html When Buildings Try Too Hard] Wall Street Journal、2008年11月22日</ref>。

=== 作品中の登場 ===
1999年の映画『[[007 ワールド・イズ・ノット・イナフ]]』ではビルバオの市街地が舞台となり、冒頭で美術館が登場している。2007年のタミル映画『Sivaji: The Boss』では美術館でStyleという歌が歌われる<ref>[http://www.indiaglitz.com/channels/tamil/gallery/Events/12540.html Skin Grafting in 'Sivaji'], India Glitz</ref>。[[ハイプ・ウィリアムズ]]が撮影した[[マライア・キャリー]]の『スウィート・ハート』のミュージックビデオでは、[[ジャーメイン・デュプリ]]とキャリーが美術館の様々な場所で歌っている。コンピュータ・ゲームの[[シムシティ4]]ではこの美術館が建設可能な設定となっている。

== 管理運営 ==
=== 2007年の横領事件 ===
2007年にバスク会計監査裁判所が発表した報告書によれば、2002年から2005年までの間に、美術館は2700万USドル以上を作品の新規購入に充て、アルセロール・ギャラリー内に展示されているリチャード・セラの『The Matter of Time』などを購入した<ref>Picard, Charmaine. [http://www.theartnewspaper.com/article.asp?id=8639 "Guggenheim Bilbao director admits to €4.2m loss"] The Art Newspaper、2008年8月14日</ref>。2008年の別の会計監査では、作品購入用の資金が銀行口座から失われていたことが明らかにされた<ref>Harris, Rachel Lee. [http://www.nytimes.com/2009/11/30/arts/design/30arts-BILBAOMUSEUM_BRF.html "Bilbao Museum Official Sentenced"], ''[[The New York Times]]'', November 29, 2009.</ref>。グッゲンハイム財団は「財政面・会計面の不規則性の問題があり、1998年からディレクターのロベルト・セアルソロ・バレネチェアが、美術館の建設・作品の購入用に設立された2つの会社から彼自身の口座に資金を流用していた」と主張し、バレネチェアに対する訴訟を提起した<ref>Nayeri, Farah. [Guggenheim Bilbao Says Its Finance Director Embezzled US$775,000] Bloomberg、2008年4月17日</ref>。

== 脚注 ==
{{Reflist}}


== 外部リンク ==
== 外部リンク ==
{{Commons|Category:Guggenheim Museum Bilbao}}
{{Commons|Category:Guggenheim Museum Bilbao}}
* [http://www.guggenheim-bilbao.es/ingles/home.htm Museo Guggenheim Bilbao(スペイン語]
* [http://www.guggenheim-bilbao.es/ingles/home.htm Museo Guggenheim Bilbao](スペイン語)
* [http://www.architectsonline.com/publications/bilbao/ ArchitectsOnline.com:Guggenheim Bilbao Museum(英語]
* [http://www.architectsonline.com/publications/bilbao/ ArchitectsOnline.com:Guggenheim Bilbao Museum] (英語)
* [http://maps.google.com/maps?ll=43.268774,-2.934122&spn=0.005178,0.010131&t=k&hl=en Google ローカル(英語]
* [http://maps.google.com/maps?ll=43.268774,-2.934122&spn=0.005178,0.010131&t=k&hl=en Google ローカル](英語)
* [http://www.spain.info/ja/ven/grandes-ciudades/bilbao.html ビルバオ・グッゲンハイム美術館 スペイン政府観光局オフィシャルサイト](日本語)
* [http://www.spain.info/ja/ven/grandes-ciudades/bilbao.html ビルバオ・グッゲンハイム美術館 スペイン政府観光局オフィシャルサイト](日本語)

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2014年6月8日 (日) 04:47時点における版

ビルバオ・グッゲンハイム美術館
Guggenheim Museum Bilbao
地図
施設情報
専門分野 近現代美術
開館 1997年10月18日
所在地 スペインバスク自治州ビスカヤ県ビルバオアバンド地区
プロジェクト:GLAM
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ビルバオ・グッゲンハイム美術館スペイン語: Museo Guggenheim Bilbao, 英語: Guggenheim Museum Bilbao)は、スペインビルバオにある美術館近現代美術が専門であり、1997年10月18日に開館した。アメリカのソロモン・R・グッゲンハイム財団が設立したグッゲンハイム美術館の分館のひとつであり、建築家のフランク・ゲーリーが設計を担当した。

ビルバオ市中心部のアバンド地区にあり、ビルバオ市内を流れるネルビオン川に隣接している。国内外の作家による常設展示や特別展示が行われている。ビルバオ・グッゲンハイム美術館の建物は現代建築でもっとも称賛される作品のひとつであり、「この建物についての評価で批評家・学者・公衆が完全に一体となる稀な瞬間」があるとして、「アーキテクチュアル・カルチャーにおけるシグナルのモーメント」として称えられている[1]。2010年に世界建築調査機関が建築家に対して行った調査では、1980年以降の30年間でもっとも重要な建築物のひとつとして頻繁に名前を挙げられる[1]。2007年の入場者数は1,002,963 人[2]、2008年の入場者数は951,369人[3]だった。

歴史

1991年、バスク自治州政府はソロモン・R・グッゲンハイム財団に対して、ビルバオの老朽化した港湾地区にグッゲンハイム美術館を建設することを提案した[4][5][6]。バスク自治州政府は1億USドルの建設費用を負担すること、5,000万USドルを作品の新規購入費用に充てること、グッゲンハイム財団に対して展示会1回あたり2,000万USドルを支払うこと、美術館の年間予算1,200万USドルを補助することなどを承諾した。これらの代わりにグッゲンハイム財団は美術館を管理し、財団が所蔵する作品の一部を回して特別展を開催することを承諾した[7]。グッゲンハイム財団は世界分館構想を持ち、ニューヨークグッゲンハイム美術館ヴェネツィアペギー・グッゲンハイム・コレクションのほか、グッゲンハイム・ラスベガスドイツ・グッゲンハイム・ベルリンなど、世界各地に美術館を持つ拡大路線を志向している。

建物はフェロビアル社によって建設され[8]、建設費用は8,900万USドルだった[9]。建物は日程面でも予算面でも予定通りに建設され、この種の建築物の中では稀な部類である。KLMオランダ航空は建築費として100万USドルを寄付した。1997年10月17日、正式開館日の前夜に屋外で行われたプレオープンイベントには5,000人のビルバオ市民が出席し、ライトショーやコンサートなどを楽しんだ。10月18日、フアン・カルロス1世によって開館が宣言された[6]

建物

ガラス、チタニウム、石灰岩で覆われた建物

建物の構造

ソロモン・R・グッゲンハイム財団はアメリカ人建築家のフランク・ゲーリーを建物の設計に、トーマス・クレンスを美術館のディレクターに選出し、大胆かつ革新的な美術館であることを求めた[10]。建物外壁の曲面は無規則性が意図され、ゲーリーは「曲面の無規則性が光を集めるように設計した」と述べた[11]戦闘機の設計などに使用されるCADシステムを用いて構造計算されるなど、時代の最先端の技術を利用して設計されている。内部は大規模で明るいアトリウムを中心に設計され、アトリウムからはビルバオ河口とビルバオ周辺の山地が見渡せる[12]。美術館の中央部をまとめている形状から、ゲーリーはこのアトリウムをフラワー(The Flower)と名付けた[7]

建物の評価

1997年に美術館が開館すると、ゲーリー本人が建築上の運動と自分自身を関連付けているわけではないが[13]、すぐに脱構築主義建築(デコンストラクティビズム)でもっとも壮観な建築物のひとつ、20世紀の傑作として称賛を集めた[14]。建築家のフィリップ・ジョンソンは「我々の時代で最高の建築物」と表現し[15]、 評論家のカルヴァン・トムキンスは「ザ・ニューヨーカー」で、魚の鱗を連想させてきらきらと反射するパネルについて、「チタニウムの外套をまとい、うねるような形状の、幻想的な夢の船」と表現した[14]。建築批評家のハーバート・ムシャンプは「ニューヨーク・タイムズ・マガジン」で「マーキュリアルなブリリアンスだ!」と称賛した[16]インデペンデント紙は美術館を「驚くべき建築の偉業」と呼んだ[12]。美術館に触発された似たようなデザインの建築物には、アメリカ・カリフォルニア州にあるセリトス・ミレニアム図書館などがある。

美術館はネルビオン川に沿った旧工業地区の32,500m2の面積に建てられ、石、ガラス、チタニウムによって構成された美術館の建物は市街地の風景に溶け込んでいる。通りから見ると地味だが、川沿いから見ると印象的である[4][16]。11,000 m2が展示空間であり、ニューヨークやヴェネツィアのグッゲンハイム美術館よりも大きな展示空間を持つ[6]。19の展示室のうち10の展示室は壁が直行した古典的な長方形の形状であり、石材の磨き方によって他と区別することができる。残りの9の展示室は不規則な形状であり、その有機的な渦巻形状やチタニウムの板材の貼り方で他と区別することができる。最大の展示室は幅30m×長さ130mである[5][16]。2005年にはリチャード・セラの記念碑的なインスタレーション展示「The Matter of Time」が開催され、美術批評家のロバート・ヒューズは「勇敢で崇高」と評した[17]

展示

グッゲンハイム財団の現代美術コレクションの中から選ばれた作品に加え、長さ102メートルにも及ぶリチャード・セラの『Snake』(蛇)など、サイト・スペシフィックな(場所特定的な)大規模な作品や現代芸術家のインスタレーションや、バスク人芸術家の作品などを特徴としている[12]。1997年の開館時には、キュビズムから新しいメディアアートまでの20世紀の300作品を概観する企画展示を行った。多くの作品はグッゲンハイムの所蔵作品だが、ウィレム・デ・クーニングマーク・ロスコクリフォード・スティルなどの絵画を新規購入し、フランチェスコ・クレメンテアンゼルム・キーファージェニー・ホルツァー、リチャード・セラなどには新作の製作を依頼した[7]

常設展示作品は何度か変更されており、特別展以外の期間中は中国芸術やロシア芸術などのテーマ展示を開催している。伝統的な絵画や彫刻はインスタレーションや電子媒体による展示に比べて少数派である。収蔵作品や常設展示の主役はリチャード・セラの『The Matter of Time』や耐候性鋼による彫刻作品群などであり、長さ130メートルのアルセロール・ギャラリー[18]内に展示されている[19]。収蔵作品は前衛芸術、20世紀の抽象芸術、非具象芸術的な面が強調されている。2011年には、美術館の管財人であるギリシャの実業家ディミトリス・ダスカロプーロスが所有する作品で『The Luminous Interval』という特別展示を開催したが、美術館の大規模支援者に対する学芸員の影響力が強すぎるとして批判を呼んだ[20]。2012年に行われたデイヴィッド・ホックニーの特別展は29万人の来館者を集めた。

経済とメディアへの影響

空から見た美術館

ビルバオはスペイン屈指の工業都市だったが、1990年代以降に産業が衰退した。美術館はビルバオの経済活性化の一環として開館した[21]。その開館後すぐに人気観光地となり、世界中から観光客を集めた[13]。最初の3年間に400万人を集め、約5億ユーロの経済効果を得た。バスク自治州政府は、観光客がホテル、レストラン、ショップ、交通機関に落とす金額は1億ユーロに上り、支払った建設費用を上回っていると見積もっている[22]。美術館がどうビルバオ市を変えたかを指すために「ビルバオ効果」という用語が生まれた。しかしその一方で、この用語はジェントリフィケーションや文化的帝国主義の象徴として美術館を非難するためにも使用されている[23]ウォールストリートジャーナルは『ビルバオ効果』は『ビルバオの例外』と呼ばれるべきであると示唆した[24]

作品中の登場

1999年の映画『007 ワールド・イズ・ノット・イナフ』ではビルバオの市街地が舞台となり、冒頭で美術館が登場している。2007年のタミル映画『Sivaji: The Boss』では美術館でStyleという歌が歌われる[25]ハイプ・ウィリアムズが撮影したマライア・キャリーの『スウィート・ハート』のミュージックビデオでは、ジャーメイン・デュプリとキャリーが美術館の様々な場所で歌っている。コンピュータ・ゲームのシムシティ4ではこの美術館が建設可能な設定となっている。

管理運営

2007年の横領事件

2007年にバスク会計監査裁判所が発表した報告書によれば、2002年から2005年までの間に、美術館は2700万USドル以上を作品の新規購入に充て、アルセロール・ギャラリー内に展示されているリチャード・セラの『The Matter of Time』などを購入した[26]。2008年の別の会計監査では、作品購入用の資金が銀行口座から失われていたことが明らかにされた[27]。グッゲンハイム財団は「財政面・会計面の不規則性の問題があり、1998年からディレクターのロベルト・セアルソロ・バレネチェアが、美術館の建設・作品の購入用に設立された2つの会社から彼自身の口座に資金を流用していた」と主張し、バレネチェアに対する訴訟を提起した[28]

脚注

  1. ^ a b Tyrnauer, Matt (2010年6月30日). “Architecture in the Age of Gehry”. Vanity Fair. http://www.vanityfair.com/culture/features/2010/08/architecture-survey-201008?currentPage=all 2010年7月22日閲覧。 
  2. ^ [1]AOL
  3. ^ El Guggenheim de Bilbao recibe un 5% menos de visitasEl Mundo、2009年1月12日
  4. ^ a b Templer, Karen. "Frank Gehry" Salon、1999年10月5日、2012年3月27日閲覧
  5. ^ a b "Guggenheim Museum Bilbao" The Solomon R. Guggenheim Foundation、2012年4月4日閲覧
  6. ^ a b c Security tight before Guggenheim Museum opens in Basque city CNN、1997年10月18日
  7. ^ a b c Riding, Alan. "A Gleaming New Guggenheim for Grimy Bilbao" The New York Times、1997年6月24日
  8. ^ Ferrovial history
  9. ^ Ouroussoff, Nicolai. "The Architect's New Museum in Bilbao, Spain, Emerges as a Testament to One Man's Optimism Amid a Landscape of Industrial Decay" Los Angeles Times、1997年6月2日
  10. ^ Gehry, Frank. Frank Gehry Talks Architecture and Process (New York: Rizolli, 1999), p. 20
  11. ^ Aggerwal, Artika. “Frank Owen Gerty”. 2011年8月18日閲覧。
  12. ^ a b c Walsh, John. "The priceless Peggy Guggenheim" The Independent、2009年10月21日、2012年3月12日
  13. ^ a b Lee, Denny (2007年9月23日). “Bilbao, 10 Years Later”. The New York Times. http://travel.nytimes.com/2007/09/23/travel/23bilbao.html?em&ex=1190606400&en=898bb5be11939f56&ei=5087%0A 
  14. ^ a b Tompkins, Calvin. "The Maverick" The New Yorker、1997年7月7日、2012年3月13日閲覧
  15. ^ Tyrnauer, Matt. "Architecture in the Age of Gehry", Vanity Fair, August 2010, accessed March 27, 2012
  16. ^ a b c Muschamp, Herbert. "The Miracle in Bilbao" The New York Times Magazine、1997年9月7日、2012年4月14日閲覧
  17. ^ Hughes, Robert, "Man of Steel" The Guardian、2005年6月22日、2012年3月27日閲覧
  18. ^ かつてはフィッシュ・ギャラリーという名称だったが、鉄鋼メーカーがスポンサーとなって現名称に変更された。
  19. ^ Bird's-eye rendering of the Arcelor Gallery with layout of installation "The Matter of Time" Artnet News、2012年4月14日閲覧
  20. ^ Vogel, Carol. "Guggenheim Defends Show of Trustee’s Art" The New York Times、2010年12月16日
  21. ^ Cañadillas, Iñaki. “Caso práctico: La Planificación Estratégica del Museo Guggenheim Bilbao desde una perspectiva de Marketing”. 2011年10月13日閲覧。
  22. ^ Crawford, Leslie. "Guggenheim, Bilbao, and the 'hot banana'" Financial Times、2001年9月4日
  23. ^ Hedgecoe, Guy. "Bilbao's Guggenheim continues to divide" Deutsche Welle、2012年6月6日
  24. ^ Rybczynski, Witold. When Buildings Try Too Hard Wall Street Journal、2008年11月22日
  25. ^ Skin Grafting in 'Sivaji', India Glitz
  26. ^ Picard, Charmaine. "Guggenheim Bilbao director admits to €4.2m loss" The Art Newspaper、2008年8月14日
  27. ^ Harris, Rachel Lee. "Bilbao Museum Official Sentenced", The New York Times, November 29, 2009.
  28. ^ Nayeri, Farah. [Guggenheim Bilbao Says Its Finance Director Embezzled US$775,000] Bloomberg、2008年4月17日

外部リンク

座標: 北緯43度16分06.98秒 西経2度56分03.43秒 / 北緯43.2686056度 西経2.9342861度 / 43.2686056; -2.9342861

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