火鼠

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日本での画図の例。寺島良安『和漢三才図会

火鼠(かそ、ひねずみ、ひのねずみ)は、中国に伝わる怪物の一種。火光獣(かこうじゅう)とも呼ばれる。

南方の果ての火山の中にある、不尽木(ふじんぼく)という燃え尽きないの中に棲んでいるとされる。一説に、崑崙に棲むとも言われる[1]日本江戸時代の百科事典『和漢三才図会』では中国の『本草綱目』から引用し、中国西域および南域の火州(ひのしま)の山に、春夏に燃えて秋冬に消える野火があり、その中に生息すると述べられている[2]。『和名類聚抄』(10世紀中頃)巻十八「毛群類」の火鼠の記述として、『神異伝』を引用した上で、和名を「比禰須三(ひねずみ)」と記している。

体重が約250kgの大で、の長さは50cmあり絹糸よりも細い[1]

火の中では身体が赤く、外に出ると白くなる。火の外に出ているときにをかけると死んでしまうという[1]

火浣布[編集]

火鼠の毛から織って作った火浣布(かかんふ)は、火に燃えず、汚れても火に入れると雪のように真っ白になるという特別なだったという[1]

この火浣布とは実際は、鉱物繊維石綿であると言われる。

隋書西域志』によると、史国に「火鼠毛」が産するという。史国とは昭武九姓の1つで、現在のウズベキスタンシャフリサブスにあった都市国家である。

日本の『竹取物語』で、かぐや姫が阿倍御主人に出した難題が「火鼠の皮衣[3]」である。『源氏物語絵合巻では、この『竹取物語』の火鼠の皮衣段を描いた絵巻が登場するが、『河海抄』のその箇所の注釈には、代の東方朔著とされる地理書『神異経中国語版[4]・『十洲記[5]に見える火浣布の記述が引かれている。ただし、『竹取物語』で阿倍御主人が実際に入手したのは金青色の毛皮であり、漢籍に見える伝承とは描写が異なる。作中依頼されて皮衣を探した商人によれば、天竺インド)の高僧による伝来品とされている。

漫画『犬夜叉』の主人公の犬夜叉は火鼠の毛で織った赤い衣(「火鼠の衣」)を着ている。

脚注[編集]

  1. ^ a b c d 草野巧『幻想動物事典』新紀元社〈Truth in fantasy〉、1997年、79頁頁。ISBN 978-4-88317-283-2 
  2. ^ 寺島良安著 島田勇雄・竹島淳夫・樋口元巳訳注『和漢三才図会』 6巻、平凡社東洋文庫〉、1987年、128頁頁。ISBN 978-4-582-80466-9 
  3. ^ ひねずみのかはぎぬ、~のかはごろも
  4. ^ ウィキソース出典  (中国語) 神異經#.E5.8D.97.E8.8D.92.E7.B6.93.E5.8D.81.E5.89.87, ウィキソースより閲覧。 
  5. ^ ウィキソース出典  (中国語) 海內十洲記, ウィキソースより閲覧。