海上保険

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海上保険(かいじょうほけん)は、貨物保険船舶保険を併せた概念であり、主に海上危険による損害を担保する保険である。

賠償責任所有権などが被保険利益となるため、対象には荷主、オペレーター、船主、用船社、銀行などがあたる。 国によって、海上危険の概念が異なるため、港湾局を対象とした保険も含むことがある。 近年、サプライチェーン・マネジメント (SCM) 等の考えが普及し、物流全体の保険商品が登場し、必ずしも海上危険のみをカバーするものでなくなっている。

概要[編集]

海上保険は、貿易や海運という国際的な企業活動に利用される保険である。海上保険を規律する法規は国によりまちまちである。もっとも約款の解釈については、イギリスの1906年海上保険法をかつてアメリカなどが目安として参照していた。これは2015年に修正され、2016年から施行される。世界海運資本の相当部分をイギリスが占めていた時代、アメリカの裁判所は英国法に追従していた。しかしついに1955年、画期的な判決が出た[1]。海上保険をめぐる紛争解決に適当な連邦海事法がないときは州法を適用できるとしたのである。約款解釈を連邦法と州法のいずれによるかという新たな問題は、結果的に州法の優位と英国法の影響力減退をもたらした。また、ノルウェーなどの北欧諸国では約款が身内で法典化されている[2]

日本の場合、国際的な海運に関わるものはかつてのアメリカ同様、イギリスと変わらない約款が運用に利用されている。保険者の責任については、英国法を準拠法とする旨が定められている。具体的な文言は次のとおりである。"This insurance is understood and agreed to be subject to English law and usage as to liability for and settlement of any all claims(保険者のてん補請求に対する責任およびその決済については、英国法および慣習による)." 約款の性質は抵触法の指定と解されている[3]。「てん補請求に対する責任およびその決済」の範囲はよく分からない。イラン製絨毯は原則として合衆国で輸入禁止とされるが、その紛失による損失補填に約款が適用されるか問題になったケースでは適用外とした裁判例がある[4]。保険証券の譲渡における約款適用の有無については、個別具体的な検討により適用を認めた事案が存在する[5]

日本市場[編集]

大手の損害保険会社の社名でも「東京海上日動火災保険」「三井住友海上火災保険」のように「海上」の名を冠している所がある。 日本は、貨物保険において世界首位、船舶保険において世界第2位のマーケットである。貨物保険についてはイギリスで28年ぶりに改定された2009年協会貨物約款が日本にも導入されることになった[6]

1996年施行の50年ぶりで改正された保険業法は、船舶保険に対する規制のあり方を様変わりさせた。改正前は、日本籍船舶の海外直接付保は認められていなかった。また1962年以降、これらの船舶の保険を引受ける日本の保険会社の共同行為が、船舶保険料率に関する共同行為までふくめて全面的に独占禁止法の適用除外として認められていた。この間毎年日本船主協会と、損害保険会社20社が1963年に設立した日本船舶保険連盟が、団体交渉で保険料率の大枠を決めていた。

保険業法の改正が成り、独禁法適用除外が廃止された。施行直後から日本郵船をはじめとする大手海運会社が海外直接付保へ動き出したので、日本船舶保険連盟は1997年3月いっぱいで解散された。4月から船舶保険の契約交渉は、各海運会社と保険会社の間で個別に行うこととなった。日本の損保業界は当局の認可を得て日本船舶保険再保険プールを設立した。

P&I保険[編集]

脚注[編集]

  1. ^ Wilburn Boat Co. v. Fireman's Fund Insurance Co.
  2. ^ The Nordic Marine Insurance Plan of 2013, Version 2016
  3. ^ 東京高判平成12年2月9日判時1749号157頁、東京地判昭和52年5月30日判時880号79頁。
  4. ^ 前掲東京高判平成12年2月9日。
  5. ^ 前掲東京地判昭和52年5月30日。
  6. ^ INSTITUTE CARGO CLAUSES 2009