法堂
法堂(はっとう)とは、仏教寺院において、僧侶が仏教を講義する建物のことである。「法堂」は主に禅宗寺院で用いられ、そのほかの宗派では講堂(こうどう)と呼ばれることが多い。
法堂の成立はインドではなく、中国であり、仏教が貴族階級に浸透し始めた南北朝時代には既に成立していたものと思われる。
仏舎利を祀る塔、仏像を祀る仏殿(金堂)とともに、伽藍を構成する最重要の建物であり、日本においてのその位置関係は、時代によってそれぞれ異なるが、仏殿の次の重要な建物として位置づけられるようになり、大抵は寺院の中心に設置されている。
住職や講義僧がここで経典の講読や説法を信者や他の僧侶に向けて行い、特に禅宗では、ここで法席に昇って説法することを「上堂説法」といい、そこで話された内容を上堂語といって、『臨済録』などの語録に収録されている。
なお、現在学校などにある講堂は体育館などと兼用となっていることが多い。また、大学などで通常の授業を行う建物の一部に部屋として設置されている場合は、講義室・大教室などと呼ばれることがある。
中国
[編集]中国の法堂は、禅宗寺院で特に重視される。歴史的には唐代から発展し、『百丈清規』では「不立佛殿唯樹法堂」(仏殿を立てず、ただ法堂を樹つ)と定められ、仏像よりも説法の場が優先された。建築様式は本堂に似るが、内部はより広く明るく造られ、中央に高座と講卓、背後に獅子図や屏風を配する。代表的な寺院では、西安大慈恩寺の法堂には明代の阿弥陀仏銅像が安置され、北京法源寺の法堂は歴史的経典を所蔵する。
韓国
[編集]韓国では、法堂は「寂滅宝宮」とも称され、仏舎利を祀る聖域としての役割も持つ。統一新羅時代(7世紀)に中国から導入され、寺院の中心伽藍として定着した。建築は木造が主流だが、寧越法興寺の法堂は、仏像を置かず後方に窓を設け、「山全体が仏体」という概念を表現する。また、慶州仏国寺の法堂は大雄殿と塔で構成され、現実から仏国への移行を象徴する。
ベトナム
[編集]ベトナムの法堂は、中国の影響を受けつつも、熱帯気候に適した独自の発展を遂げた。建築特徴は、軒が広く低層で四面に窓を設け、通風を重視する。装飾は色彩豊かで、レンガや石材の使用率が高い。歴史的には、陳朝(13世紀)以降に仏教が栄え、寺院建設が進んだ。代表的な寺院である順化皇城の法堂は、風水に基づき香江に面して建てられ、北京の紫禁城よりも小規模だが、自然と調和した設計が特徴である。
関連項目
[編集]参考文献
[編集]- 梓岩, ed (2012). 『中国名寺』. 安徽省合肥市: 黄山書社. pp. 35–36. ISBN 978-7-5461-3146-7
- 張馭寰 (2012). 『図解中国佛教建築』. 北京市: 当代中国出版社. ISBN 978-7-5154-0118-8
- 張馭寰 (2012). 『図解中国著名佛教寺院』. 北京市: 当代中国出版社. ISBN 978-7-5154-0135-5