根粒菌

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根粒菌(こんりゅうきん、Rhizobia)はマメ科植物の根に根粒を形成し、その中で大気中の窒素ニトロゲナーゼによって還元してアンモニア態窒素に変換し、宿主へと供給するいわゆる共生的窒素固定を行う土壌微生物。根粒内には宿主から光合成産物が供給されることにより、共生関係が成立している。

Rhizobium属、Bradyrhizobium属、Sinorhizobium属、Mesorhizobium属等に分類される。

根粒菌
分類
ドメ
イン
: 細菌 Bacteria
: プロテオバクテリア門
Proteobacteria
: αプロテオバクテリア綱
Alphaproteobacteria
: リゾビウム目
Rhizobiales
: リゾビウム科
Rhizobiaceae
: リゾビウム属
Rhizobium

歴史[編集]

最初に認知された根粒菌であるRhizobium leguminosarumは1889年に同定され、その後発見された種はすべてRhizobium 属に置かれた。ほとんどの研究は、クローバー、アルファルファ、豆、エンドウ豆、大豆などの作物および飼料豆類について行われてきた。

共生関係[編集]

根粒菌は主にマメ科植物の根に侵入し、根粒という新しい器官を形成して、共生窒素固定を行う。 根粒共生は、まず宿主植物の根が分泌した特定のフラボノイドを根粒菌細胞内のNodD転写因子が感知すると、nod遺伝子群の発現が誘導され、Nod factorと呼ばれるリポキチンオリゴ糖(LCO)が合成・分泌される。宿主植物は共生相手特有のNod factorの構造に応答し、根粒菌を根毛に包み込み(カーリング)、筒状の通り道(感染糸)から植物細胞内に取り込む。根粒菌が内部に入ると根の細胞が分裂してこぶ状の根粒を形成する[1][2]

根粒中で根粒菌はバクテロイドに分化してニトロゲナーゼにより大気中の窒素をアンモニウムに固定する。その後、アンモニアは、グルタミンおよびアスパラギンのようなアミノ酸に変換されてから、植物に輸出される[3]。その代償として、植物は有機酸の形で根粒菌に炭水化物を供給する。植物はまた、根粒菌に人間におけるヘモグロビンのような植物タンパク質であるレグヘモグロビンによる細胞呼吸のための酸素を提供する。この過程は、ニトロゲナーゼ活性の阻害を防止するために根粒内の酸素を低く保つ。

宿主特異性[編集]

宿主植物と根粒菌の関係は、一部の例外をのぞいて厳密な宿主特異性に支配されている。たとえば、S. melilotiはアルファルファに、B. japonicumはダイズに根粒を形成し、それらが交差することはない。こうした宿主特異性の認識は植物根から分泌されるフラボノイド等の化学物質を認識して根粒菌nod遺伝子群が活性化しNod factorを合成・分泌する段階と、そのNod factorを植物が認識・受容して根粒形成と感染のプロセスが開始する段階の、少なくとも2段階ある[4]

農業上の利用[編集]

1960年代の緑の革命により作物生産量は飛躍的に増加した。その作物生産量の増加に大きな役割を果たしたのが化学肥料であり、現代農業において窒素肥料は不可欠なもとなっている。ハーバー・ボッシュ法により空中窒素(N2)をNH3に固定し、これを化学肥料の形に変換して使用しているが、この製造過程では大量の二酸化炭素が大気中に排出される。また、施肥された窒素肥料が土壌中の微生物により脱窒されることで、二酸化炭素よりも300倍強力な温室効果ガスである一酸化窒素が空気中に放出される。一方、地球上での生物による空気中窒素の固定の総量の半分に当たる9,000万トンが農業用地で固定されている。生物窒素固定の能力の向上は、化学肥料の節約、つまり石油の消費と温室効果ガス放出の削減に繋がるので非常に重要である。

脚注[編集]

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関連項目[編集]