松田憲秀

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松田 憲秀
時代 戦国時代 - 安土桃山時代
生誕 享禄3年(1530年[1]
死没 天正18年6月16日1590年7月17日
戒名 極楽寺雲章喜公、鳳巣院竹庵宗悟居士、竹庵道悟禅定門
官位 左衛門佐尾張守
主君 北条氏康氏政氏直
氏族 松田氏
父母 父:松田盛秀
母:北条為昌養女(北条綱成妹)
兄弟 弟:康定(康光、康隆)[2][異説][3]御宿綱秀
笠原政晴(政尭)[異説][4]直秀[5]、秀也[6]
松田殿(北条氏康側室)、内藤直行[7]
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松田 憲秀(まつだ のりひで)は、戦国時代から安土桃山時代にかけての武将後北条氏の家臣。

生涯[編集]

松田氏北条早雲以来の譜代の家老の家柄で、2,798貫という知行を食む大身である。

松田盛秀(顕秀)の嫡男として誕生。憲秀は家老として北条氏康に仕え、様々な内政政策や千葉氏里見氏などの諸勢力[8]と外交面で交渉を担当した。また、元亀2年(1571年)には駿河国深沢城にて北条綱成と共に籠城して武田勢から守備、国府台合戦神流川の戦いなどの諸戦に従軍し、各地を転戦した記録も多く残る。氏康死後は氏政に仕えた。当時一国の大名ほどの格式を持ち、文書発給の際に印章を使用した。

天正8年(1590年)の豊臣秀吉による小田原征伐では、当初は徹底抗戦を主張するも、秀吉側の堀秀政らの誘いを受けて長男・笠原政晴(政尭)と共に豊臣方に内応しようとした。しかし、次男・直秀の注進があり北条氏直によって事前に防がれ、憲秀は監禁、政晴は殺害された。この事件は、北条家に降伏を決意させることとなったといわれている。この結果、北条家仕置時に、秀吉にその不忠を咎められて切腹した。

次男・直秀は氏直に従い高野山に入り、氏直死後は憲定と改名し、豊臣秀次前田利長に仕えて、前田家では4,000石を知行され、慶長19年(1614年)7月に金沢で死去している。

なお、小田原籠城時に豊臣方に内応した説であるが、憲秀は一度は徹底抗戦を主張したものの、秀吉軍の前に抵抗は無理と悟り相模国伊豆国の2国の所領安堵と城兵の助命を条件に和睦を打診していたという説もある。しかし、これは憲秀独断の交渉であり、また一度は徹底抗戦を主張した当事者としては許されるべき対応ではなかったために、露見した際に死罪ではなく監禁されたと思われる。子の政晴については積極的に内応をしようと次男・直秀に相談していたという経緯があったために、憲秀とは違い即座に死罪となったと推測される[9]

東京浜松町の旧芝離宮恩賜庭園に、「松田憲秀邸の門柱」と伝わる石柱が残る。江戸時代に小田原藩主大久保氏が江戸へ運ばせ、藩邸(上屋敷)で茶室の柱に使っていたと伝わる。

脚注[編集]

  1. ^ [1]『小田原北条氏重臣・松田憲秀のこと』P.51
  2. ^ [2]
  3. ^ 一部の系図には盛秀の弟・康定(頼貞)と記されている[3]
  4. ^ 実父は笠原光貞、政晴はその次男・笠原新六郎常克と同一人物とする説では憲秀の養子となったが、憲秀の実子・直秀が誕生したのでその跡を継げなかったとしている。[4] 松田家の歴史 P.84。
  5. ^ 北条氏直より偏諱を賜う、は直定・秀治とも、後に憲秀の一字を受け憲定に改名。
  6. ^ 弾三郎。小田原開城後は兄直秀と共に氏直公のお供をし、紀伊国高野山に同行した。初め加賀前田氏に仕えたが、医師となり、金沢で開業。子孫はその後氷見を経て高岡に転居し、町医となり、代々名医として江戸時代を過ごした。安永8年(1779)加賀藩主前田政斎の嗣子:数千代の眼疾を治療して松田眼科の声価を高めた。子孫は現在も高岡市に居住し、活躍している。家紋は丸に二引きを使用している。
  7. ^ 内藤綱秀の子。
  8. ^ 主に千葉氏重臣・原胤栄や里見氏重臣・正木氏との書状が多く残る。
  9. ^ 一説で政晴は武田家滅亡の際に戸倉城が攻め落とされた後、北条氏政に許されて出家して僧・蔵六坊正厳和尚になり、静岡県三島市の蔵六寺を開山したが、当寺の創建は、天文2年(1533)に土地の土豪であった後藤石見守が正厳和尚を招いて開山したと伝えられるので、政晴の経歴と年代的に合わない。 また同じ三島市の法華寺に、笠原政尭は笠原隼人佐とも言われ、寛永3年(1626年)60歳で病没したと言い伝えられている。だがこの説で没年から逆算すると生年は永禄9年(1566年)となり、天正3年(1575年)に笠原家の跡継ぎである千松が幼少であったために、笠原氏と伊豆郡代の地位を継いだことにしてもまだ幼い9歳の頃で、矛盾がある。墓は三島市東本町1丁目の法華寺にある。その墓の表には「笠原院春山宗永居士」と刻し、その裏面に「笠原助之進延宝七年(1679年)霜月六日建」とある。

出典[編集]