摺師

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摺師(すりし)とは、浮世絵版画において、版を使用しに一色ずつ印刷して摺る職人のこと。ただし衣服に模様を摺る職人の事もいうが、以下では浮世絵における摺師について解説する。

摺師は紙に適当な湿りを与えておいて、紙及び版木に置いた顔料が乾かないうちに、素早く刷毛で版木全体に顔料を広げてゆく。すなわち、寒くても火に暖まりながらというわけにもいかず、逆に夏に開けっ放しで摺るというわけにもいかなかったのである。風を嫌い、いつでも閉め切った場所で仕事をしなければならなかった。そして、彫り上がった色板を順次摺り重ねて仕上げ、版元、絵師に見せて、注文通りとなっていれば、量産に取り掛かる。絵師の許可がでれば、初摺り200枚を摺った。この200枚を1杯といい、摺師一人の一日の仕事量であった[1]。また、売れ筋の作品は最初から200枚以上の見込み生産をしていた。その後に絵草子屋から錦絵が販売されるのであった。

神技のような彫りを生かし、色調を整えるのには、絵具を板に運ぶ刷毛の具合と、馬連一丁であった。日本の馬連は、まことに独自な発明であり、これがなかったら、大分、浮世絵の雰囲気も異なったものになったかもしれない。良いものは馬連一つでもかなり高価なものであった。以前は、馬連も各人の手製であった。中国大陸や朝鮮のものと違って、平らにしかも柔らかく紙面を押して板に食い込ませる役目をしている。また、西洋版画のように機械で強くプレスするものとも、もともと持ち味の違う出来栄えになるはずのものであった。色のぼかし、重ね、あるいは色をつけずに圧力をかけて紙面の凹凸を作る空摺りなどといった、様々な技法が考えられた。

江戸時代には摺師に名人も数多くおり、自負もあって馬連一丁で世を渡るということもできたといわれる。

脚注[編集]

  1. ^ 稲垣進一編 『図説浮世絵入門』 河出書房新社 1990年

参考文献[編集]

  • 吉田漱 『浮世絵の基礎知識』 雄山閣、1987年
  • 吉田漱 『浮世絵の見方事典』 北辰堂、1987年
  • 稲垣進一編 『図説浮世絵入門』〈『ふくろうの本』〉 河出書房新社、1990年