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影なき男 (1934年の映画)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
影なき男
The Thin Man
監督 W・S・ヴァン・ダイク
脚本 フランシス・グッドリッチ
アルバート・ハケット
原作 ダシール・ハメット
製作 ハント・ストロンバーグ
出演者 ウィリアム・パウエル
マーナ・ロイ
音楽 ウィリアム・アクスト
撮影 ジェームズ・ウォン・ハウ
編集 ロバート・カーン
製作会社 メトロ・ゴールドウィン・メイヤー
配給 メトロ・ゴールドウィン・メイヤー
公開 アメリカ合衆国の旗 1934年5月25日
日本の旗 1935年7月29日
上映時間 91分
製作国 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
言語 英語
製作費 23万1000ドル[1][2](p100)
配給収入 世界の旗 142万3000ドル
81万8000ドル(北米)
60万5000ドル(海外)[1][2](p100)
次作 夕陽特急
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予告編

影なき男』(かげなきおとこ、英語: The Thin Man)は、1934年に製作・公開されたアメリカ合衆国の映画である。

ダシール・ハメットの小説の映画化作品であり、W・S・ヴァン・ダイクが監督、ウィリアム・パウエルマーナ・ロイが主演した。本作の好評により、1947年に至るまで全6作のシリーズが製作されている。

脚本は、アルバート・ハケットとフランシス・グッドリッチという夫婦によって執筆された。 タイトルの「痩せた男」は主人公の探偵のニック・チャールズのことではなく、チャールズが当初雇われて捜索することになる男、クライド・ワイナントを指している。原作小説では、ニック・チャールズは太り気味で体型が崩れていると描写されて、ニックは捜索するワイナントのことを「白髪の痩せた男」と描写している。映画では痩せたウィリアム・パウエルがキャスティングされたため、多くの観客はそれが主人公の探偵ニック・チャールズを指していると勘違いし、その後の続編のタイトルにもチャールズを指すかのように使われた。

1997年、この映画は「文化的、歴史的、または美的に重要である」と判断され、アメリカ国立フィルム登録簿に登録されました。

ストーリー

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ドロシー・ワイナントは、父親の「痩せた男」クライド・ワイナントと近々行われる結婚式について話し合う。婚約者のトミーが両親が離婚しているのを知っているにもかかわらず、結婚を望んでいることに、父親は驚く。そんなクライドは娘ドロシーへの結婚祝いとして用意した5万ドル相当の債券が紛失していることに気づく。債券が保管されていた金庫の暗証番号を知っているのは、父親クライドの秘書であり愛人でもあるジュリア・ウルフだけだった。クライドが債券の紛失についてジュリアに問い詰めに行くと、ジュリアが元婚約者のジョー・モレリと一緒にいるのを知る。彼女を問い詰めると、債券を換金してしまい2万5000ドルしか残っていないことを告白する。クライドは、残りの2万5000ドルを出さなければ警察を呼ぶと脅す。

ニック・チャールズは、かつてクライドのために仕事をしたこともある元探偵で、裕福な妻ノラと共に引退してサンフランシスコに住み、今はクリスマス休暇でニューヨークを訪れ、ホテルのスイートに滞在している。そんなニックに、ドロシーは父親の「痩せた男」クライドが、娘の結婚式前に帰国すると約束して秘密の出張に出かけた後、謎の失踪を遂げたことを伝えて、捜索してほしいと頼む。弁護士のハーバート・マコーリーによると、彼は出張中もドロシーに定期的に送金していたとのことで。ドロシーは、社交界の名士であるニックの妻の協力を得て、ニックにこの事件を引き受けるよう説得する。妻のノラも彼の活躍を熱望するのでしぶしぶ引き受けることにする。

失踪事件と思われたが、クライド・ワイナントの元妻ミミ・ワイナント・ジョーゲンソンが話し合いに行こうとして、ジュリア・ウルフの射殺体を発見し、たちまち殺人事件へと発展するが、ドロシーは父親の有罪を信じようとしない。ニックとギルド警部補は、警部補に定期的に情報を提供してくれる軽犯罪者アーサー・ナンハイムを訪ねるのだが、情報を詰められたナンハイムは、一瞬の隙を突いて逃げていく。その後、ナンハイムは犯人に殺人についての口止め料として5000ドルを要求。しかし現場に到着したナンハイムは、ジュリア・ウルフを殺害した銃と同じ銃で4発撃たれて死亡する。

警察は、ミミがジュリアが手に握っていた証拠のクライドの持ち物を隠していたことを打ち明けたことを受け、クライドが両方の殺人事件の容疑者となる。ニックは直感に導かれ、閉鎖されたクライドの研究所を訪れ、愛犬アスタの鼻を頼りに、床下に埋められた白骨化しているものの服を着たままの遺体を発見する。更に薄暗い室内に、クライドの元簿記係のタナーが突然現れる。彼は故ジュリア・ウルフに雇われており、クライドから金を盗んだことを認め、金を返し「帳簿を整理」するために戻ってきたと主張する。警察が到着すると、彼らは、クライド・ワイナントが愛人のジュリア・ウルフ、情報屋のナンハイム、そしてこの新しく発見された遺体を殺害したと結論付け、その遺体の特大の服と「R」の刻印のあるベルトのバックルから、遺体はクライドの商売敵である「ファットマン」のものであると推測した。

検死官による遺体のX線検査に同行していたニックは、X線検査でクライドの古い戦傷と一致する破片が見つかったことから、衣服は遺体の正体であるクライド・ワイナントを隠すために偽装されたのではないかと推測する。ニックは、真犯人がクライドから横領していたことを本人にバレて、彼を殺害したと推測する。犯人はその後、クライド殺害を知っていた共犯者のジュリア・ウルフを殺害し、さらにその現場を目撃して脅迫していたナンハイムも殺害した。

ニックは事件をこの事件の犯人を見つける為、容疑者全員を豪華なディナーパーティーに招待し、犯人を暴こうとする。ニックはディナーの客たちに自らの推理を披露し、クライド・ワイナントは犯人ではないこと、そしてクライドの遺体のことを言っているとは明かさず、前夜クライドを見たとを伝える。ミミも前夜クライド・ワイナントを見たと主張する。ニックがミミが御金を貰って嘘を付いていることを追求し、騙されてるが実は遺産を貰えるので、犯人の名前を言うように告げると、クライドの弁護士ハーバート・マコーリーはパニックに陥り、ニックを撃とうとする。ニックはマコーリーを殴り倒し、マコーリーが犯人だと断言する。

弁護士マコーリーはクライド・ワイナントとジュリア・ウルフを殺害した後、クライドが出張中であるかのように見せかけて彼の銀行口座を空にしようとした。また、クライドの元妻ミミに賄賂を渡し、ジュリア・ウルフ殺害事件の捜査を誤らせ、浮気した元夫を事件に関与させる証拠を警察に提出させた。マコーリーはミミに、クライド・ワイナントが死亡したこと、そしてマコーリーが支払った少額の賄賂だけでなく、元夫の遺産全額を受け取る権利があることは告げなかった。

その後、ニックとノラは、ドロシーと彼女の新夫トミーと共に、豪華列車でカリフォルニアへ戻る旅の途中で祝杯を挙げる。下段のノラは犬アスタと一緒に寝たがるが、ニックはアスタを上段に投げ飛ばし、自らノラのベッドに横になる。アスタは二人を見下ろし、前足で目を覆った。映画は「カリフォルニア、ヒア・アイ・カム」の短い演奏で幕を閉じる。

キャスト

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  • ニック・チャールズ:ウィリアム・パウエル - 元探偵でクライド・ワイナントの為に働いていたこともある
  • ノラ・チャールズ:マーナ・ロイ - ニックの裕福な妻
  • ドロシー・ワイナント:モーリン・オサリヴァン - クライド・ワイナントの娘で結婚間近
  • ジョン・ギルド警部補:ナット・ペンドルトン
  • ミミ・ワイナント・ジョーゲンソン:ミナ・ゴンベル - クライド・ワイナントの元妻
  • ハーバート・マコーレー:ポーター・ホール - クライド・ワイナントの弁護士
  • トミー:ヘンリー・ワズワース - ドロシーの婚約者
  • ギルバート・ワイナント:ウィリアム・ヘンリー - ドロシーの婚約者、犯罪に興味津々
  • アーサー・ナンハイム:ハロルド・フーバー - ギルド警部補に情報を提供してくれる軽犯罪者
  • クリス・ジョーゲンソン:セザール・ロメロ - ミミの再婚相手、無職
  • ジュリア・ウルフ:ナタリー・ムーアヘッド - クライド・ワイナントの秘書で愛人、債券を盗む
  • ジョー・モレリ:エドワード・ブロフィ - ジュリアの元恋人でギャング
  • 「痩せた男」クライド・ワイナント:エドワード・エリス - ドロシーの父、発明家、失踪後に殺人犯の容疑者となる
  • 犬アスタ:スキッピー - ニックとノラの飼い犬
  • タナー:シリル・ソーントン - クライド・ワイナントの元簿記係で前科者、ジュリア・ウルフに雇われて金を盗んだ

スタッフ

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評価

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  • 批評集積サイトRotten Tomatoesでは、47人の批評家のレビューのうち98%が肯定的な評価を下しています。同サイトの評論家総意は、「ウィリアム・パウエルとマーナ・ロイの息の合った掛け合いと、引き込まれるミステリーが織りなす物語で、『影なき男』は尽きることのない魅力に溢れた冒険活劇だ」となっている[3]。加重平均評価を採用するMetacriticは、 17人の批評家による評価に基づき、100点満点中86点という「普遍的な称賛」を示す[4]
  • 2020年2月号のニューヨーク・マガジンは、 『薄汚い男』を「アカデミー賞で作品賞を逃した最高の映画」の一つに挙げている[5]

アカデミー賞ノミネーション

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後世への影響

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1976年のパロディ映画『名探偵登場』で描かれているディック・チャールストンとドーラ・チャールストン夫妻は、この作品の夫婦探偵のパロディである。

脚注

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関連項目

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外部リンク

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