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Représentation graphique de la fonction exponentielle de base e (en noir), de base 10 (en rouge) et de base 1/2 (en bleu).
実解析 における底 a の指数函数 (しすうかんすう、英 : exponential of base a )expa は、実数 x を実数 ax へ写す函数 である。これが実函数として意味を持つのは a が真に正の実数であるときに限る。これは自然数全体で定義された n を an へ写す函数の、実数全体を定義域とする拡張である。したがってこれを、幾何数列 の連続版と見ることができる。自然指数函数 と自然対数函数 を用いれば、
exp
a
(
x
)
=
a
x
=
e
x
ln
(
a
)
{\displaystyle \exp _{a}(x)=a^{x}=e^{x\ln(a)}}
と書くことができる。a を底とする指数函数を、1 において値 a をとり、和を積に変換する、ℝ 上で定義された唯一の連続函数 として定義することもできる。a ≠ 1 に対し、底 a の対数函数 の逆函数 であり、その意味でこれらを逆対数函数 (真数函数)と呼ぶこともある。a = e のとき、自然指数・自然対数に対応する。自然指数函数は、自身の導函数 に比例 し、0 において値 1 をとる唯一の ℝ 上の可微分函数 である。
これらは母集団の大きさに比例する増大率を持つ物理的・生物学的現象のモデルとして用いることができる。
より一般に、適当なスカラー倍 N⋅ax も含めた意味で指数函数と呼ぶ場合もあるが、本項ではそのような意味では用いない。
冪乗から指数函数へ [ 編集 ]
狭義正の実数 a を考える。1 以上の整数 a に対して、an を a をそれ自身 n 個掛けたもの
exp
a
(
n
)
=
a
n
:=
a
×
a
×
⋯
×
a
⏟
n
factors
{\displaystyle \exp _{a}(n)=a^{n}:={\underset {n{\text{ factors}}}{\underbrace {a\times a\times \cdots \times a} }}}
と定義するのは容易い。さらに
a
0
:=
1
{\textstyle a^{0}:=1}
および
a
−
n
:=
1
a
n
{\textstyle a^{-n}:={\frac {1}{a^{n}}}}
と定める。性質
a
n
+
m
=
a
n
×
a
m
{\textstyle a^{n+m}=a^{n}\times a^{m}}
が成り立つことを見るのは容易い。
例
このような構成は、指数函数的成長 または指数函数的減衰 と呼ばれる現象に極めて自然に対応する。
例 1: 人口が10年ごとに30%増える場面を想像しよう。1900年における人口が N のとき、1910年, 1920年, …… の人口は簡単に N × 1.3 , N × 1.32 , …… と計算でき、n 10年後には N × 1.3n となる。1890年, 1880年, …… の人口さえも計算できて N × 1.3−1 , N × 1.3−2 , …… となる。
例 2: 炭素14 は放射性崩壊の半減期 T = 5 730 年を持つ(つまり、T 年ごとに放射性粒子の数が半分になる)。ある時点で測った放射性粒子の数が N ならば、n 周期後には放射性粒子の数は N × (1/2)n しかない。
考えたい問題は、2つの測定時点 (人口に対する10年期や粒子数に対する半減期) の「間」における人口や放射性粒子の数を決定すること、したがって「整数の間の穴を埋める」方法を知ることである。そのような試みは n -乗根 によって成すことができる。つまり、人口が10年で 1.3 倍になるとき、1年ごとに何倍になるかを決定しようと思うならば、その倍率は q 10 = 1.3 を満たす実数 q , すなわち q = 10 √ 1.3 (これを 1.31/10 とも書く) である。
非整数 (有理数) r の冪乗 (有理数乗冪 ) a r は、
exp
a
(
1
/
q
)
=
a
1
/
q
=
a
q
,
{\displaystyle \exp _{a}(1/q)=a^{1/q}={\sqrt[{q}]{a}},}
および
exp
a
(
p
/
q
)
=
a
p
/
q
=
(
a
q
)
p
=
a
p
q
{\displaystyle \exp _{a}(p/q)=a^{p/q}=({\sqrt[{q}]{a}})^{p}={\sqrt[{q}]{a^{p}}}}
という「穴埋め」を行えば任意の
有理数 に対しては定義できる。
実数 x に対する ax の定義には連続性 に関する議論を用いる。すなわち、x に限りなく近い有理数 p/q をとって、ax の値は ap/q の極限と定めるのである。
このような ax が何であるべきかという直観的アイデアの登場は非常に早く、冪記法の登場と同時期の17世紀には知られていた[注釈 1] が、x ↦ ax が
函数であること
恒等式 a x + y = ax ⋅ay が満たされる、すなわち和が積へ写ること
連続であること
対数函数(これは積を和に写す)の逆函数であること
微分可能であり、かつ導函数が原函数に比例すること
などが認識されるには次の18世紀半ばを待たねばならなかった。
指数函数の定義の仕方には複数の観点が考えられ、和を積に写すという代数的性質によるもの、導函数に比例するという微分の性質に基づくもの、指数函数と対数函数の関係に基づくものなどが挙げられる。
代数的性質による [ 編集 ]
定義 1.
実指数函数とは R から R への恒等的に零 でない函数で、少なくとも一点において連続、かつ和を積に写す: つまり
f
(
u
+
v
)
=
f
(
u
)
×
f
(
v
)
(
∀
u
,
v
∈
R
)
{\displaystyle f(u+v)=f(u)\times f(v)\quad (\forall u,v\in \mathbb {R} )}
を満足する任意の函数をいう。そのような函数 f は至る所連続かつ狭義正値であって、任意の実数 a > 0 に対して f (1) = a でただ一つ定まる f は底 a に対する指数函数 expa と呼ぶ。
言い換えれば、これら函数は (R , +) から (R × + , ×) への群準同型 であり、また指数函数全体の成す集合は R × + に f ↦ f (1) を通じて全単射 である。関係式
f
(
u
)
=
f
(
2
u
2
)
=
[
f
(
u
2
)
]
2
{\displaystyle f(u)=f\left(2{\frac {u}{2}}\right)=\left[f\left({\frac {u}{2}}\right)\right]^{2}}
は函数の正値性を保証する。函数方程式から、一点において函数が非零ならば任意の点で非零となることも保証される。
さて、前節で述べたような仕方で、任意の a > 0 に対し、有理数上で定義された函数 f で上記の函数方程式を満足し、1 において値 a をとる函数の存在と一意性が保証される。
連続性の証明 —と、ℚ の ℝ における稠密性 により— 上記の函数方程式を満足し、1 において値 a を取り、少なくとも一点で連続な函数の一意性が保証される。その存在性は連続性による延長 (フランス語版 ) から得られる:
詳細
有理数の全体で定義された函数 x ↦ ax が単調 なること、および数列a 1/2n が 1 に収斂することは容易にわかる。したがって上記の函数方程式により、この函数が ℚ 上コーシー連続 (フランス語版 ) となることが示され、連続性により ℝ へ延長する。連続性および稠密性により、この ℝ への延長はもとの函数方程式を満足する。
ここで、定数函数 1 (これは a = 1 に対応する)を除いたこれらすべての函数 f : ℝ → ]0, +∞[ が全単射であることに注意を与えることができる。したがってこれらは、(R , +) から (R × + , ×) への群同型 を与える。
それにより、f が微分可能で微分方程式
f
′
(
x
)
=
f
′
(
0
)
×
f
(
x
)
ただし
f
(
0
)
=
1
{\displaystyle f'(x)=f'(0)\times f(x)\quad {\text{ただし}}\quad f(0)=1}
を満足することを示せる:
方法 1.
後述 のように、函数 gk : x ↦ exp(kx ) は g'k = kgk , gk (0) = 1 を満足し、かつ和を積に写す。k = exp−1 (a ) に対し gk (1) = a だから、一意性により gk = f を得る。
方法 2.
和を積に写す連続函数が微分可能でなければならないことを見るために、連続函数は原始函数 を持つという事実を用いる[1] 。f の原始函数の一つを F とすれば、
∫
0
1
f
(
x
)
f
(
t
)
d
t
=
f
(
x
)
∫
0
1
f
(
t
)
d
t
=
f
(
x
)
(
F
(
1
)
−
F
(
0
)
)
{\displaystyle \int _{0}^{1}f(x)f(t){\mathit {dt}}=f(x)\int _{0}^{1}f(t){\mathit {dt}}=f(x)(F(1)-F(0))}
と書けて、これはまた
∫
0
1
f
(
x
)
f
(
t
)
d
t
=
∫
0
1
f
(
x
+
t
)
d
t
=
F
(
x
+
1
)
−
F
(
x
)
{\displaystyle \int _{0}^{1}f(x)f(t){\mathit {dt}}=\int _{0}^{1}f(x+t){\mathit {dt}}=F(x+1)-F(x)}
とも書ける。函数
f は真に正値であるから、
F は狭義単調増大で、したがって
F (1) – F (0) は零でない。この二つの等式を比較して
f
(
x
)
=
F
(
x
+
1
)
−
F
(
x
)
F
(
1
)
−
F
(
0
)
{\displaystyle f(x)={\frac {F(x+1)-F(x)}{F(1)-F(0)}}}
と書くことができ、これは
f を可微分函数の線型結合として表すものであるから、
f は微分可能である。
函数方程式
f
(
x
+
u
)
=
f
(
x
)
f
(
u
)
{\textstyle f(x+u)=f(x)f(u)}
の両辺を x で微分すれば
f
′
(
x
+
u
)
=
f
′
(
x
)
f
(
u
)
{\textstyle f'(x+u)=f'(x)f(u)}
となるから、x = 0 として
f
′
(
u
)
=
f
′
(
0
)
f
(
u
)
{\textstyle f'(u)=f'(0)f(u)}
を得る。
自然指数・対数函数による [ 編集 ]
定義 2.
真に正の実数 a に対し、底 a に関する指数函数とは、ℝ 上定義された函数
f
(
x
)
=
e
x
ln
(
a
)
{\displaystyle f(x)=e^{x\ln(a)}}
を言う。ここに x ↦ ex は自然指数 で ln は自然対数 函数である。
これら函数は連続で、和を積に写し、1 において値 a をとる。
微分方程式による [ 編集 ]
定義 3.
指数函数とは以下の微分方程式および初期条件
f
′
=
k
f
(
f
(
0
)
=
1
)
{\displaystyle f'=kf\quad (f(0)=1)}
を適当な k に対して満足する任意の可微分函数を言う。
このような函数に対して、k はその導函数の 0 における値に等しいことに注意する。
k = 1 に対して解 (函数 exp ) が存在することのみ知れていれば、任意の k に対する解は明らかに函数 x ↦ exp(kx ) で与えられる。それが唯一の解であることが示せる。さらに言えば、この解が和を積に写すこと、したがってそれが a = exp(k ) に対する代数的性質による 定義と一致することが確かめられる。
対数函数の逆函数 [ 編集 ]
定義 4.
a ≠ 1 は真に正の実数とすると、底 a に対する対数 函数 loga : R × + → R は全単射 である。底 a に対する指数函数 expa とは、その逆函数 を言う:
y
=
exp
a
(
x
)
(
x
∈
R
)
:
⟺
def
x
=
log
a
(
y
)
(
y
∈
]
0
,
+
∞
[
)
.
{\displaystyle y=\exp _{a}(x)\quad (x\in \mathbb {R} ):\!\!\!\!{\stackrel {\text{def}}{{}\iff {}}}x=\log _{a}(y)\quad (y\in ]0,+\infty [).}
対数函数は、連続で、積を和に写し、a において値 1 をとるから、その逆函数は、連続で、和を積に写し、1 において値 a をとることが分かる。
代数的性質 [ 編集 ]
任意の真に正な実数 a, b と任意の実数 x, y に対し:
a
x
=
exp
(
x
ln
(
a
)
)
=
e
x
ln
(
a
)
,
a
x
=
b
x
log
b
(
a
)
,
a
x
y
=
(
a
x
)
y
{\displaystyle a^{x}=\exp(x\ln(a))=e^{x\ln(a)},\quad a^{x}=b^{x\log _{b}(a)},\quad a^{xy}=(a^{x})^{y}}
が成り立つ。
写像 expa : x ↦ ax は (R , +) から (R × + , ×) へのアーベル群 の準同型 である:
a
x
+
y
=
a
x
a
y
,
a
0
=
1
,
1
a
x
=
a
−
x
.
{\displaystyle a^{x+y}=a^{x}a^{y},\quad a^{0}=1,\quad {\frac {1}{a^{x}}}=a^{-x}.}
これら準同型 expa の全体は、a ↦ expa を通じて (R × + , ×) に群同型:
a
x
b
x
=
(
a
b
)
x
,
1
x
=
1
,
1
a
x
=
(
1
a
)
x
,
a
1
=
a
.
{\displaystyle a^{x}b^{x}=(ab)^{x},\quad 1^{x}=1,\quad {\frac {1}{a^{x}}}=\left({\frac {1}{a}}\right)^{x},\quad a^{1}=a.}
したがって、(R , +) にも同型である(一径数群 (フランス語版 ) )。
函数の挙動 [ 編集 ]
底 a の指数函数は R 上無限回微分可能 (フランス語版 ) であり、導函数は
exp
a
′
(
x
)
=
ln
(
a
)
exp
a
(
x
)
{\displaystyle \exp _{a}'(x)=\ln(a)\exp _{a}(x)}
を満たす。
指数函数は常に正値であるから、その導函数の符号 は ln(a ) の符号のみによって決まる。したがって指数函数は、底 a が 1 より真に大きいとき狭義単調増大で、1 より真に小さいときには狭義単調減少、a = 1 のとき定数函数 1 である。
底 a の指数函数の極限は a と 1 との位置関係で決まる:
a > 1 ならば
lim
x
→
+
∞
a
x
=
+
∞
,
lim
x
→
−
∞
a
x
=
0
{\displaystyle \lim _{x\to +\infty }a^{x}=+\infty ,\quad \lim _{x\to -\infty }a^{x}=0}
;
a < 1 ならば
lim
x
→
+
∞
a
x
=
0
,
lim
x
→
−
∞
a
x
=
+
∞
.
{\displaystyle \lim _{x\to +\infty }a^{x}=0,\quad \lim _{x\to -\infty }a^{x}=+\infty .}
指数函数は冪函数 に対して +∞ へ飛ばす極限で指数函数のほうが早く発散するという予測可能な挙動を示す:
増大度の比較定理 (フランス語版 )
任意の実数 a > 1 および b に対して
lim
x
→
+
∞
a
x
x
b
=
+
∞
{\displaystyle \lim _{x\to +\infty }{\frac {a^{x}}{x^{b}}}=+\infty }
が成り立つ。
指数函数は対数凸 (フランス語版 ) (したがって凸 )かつ対数凹 (英語版 ) である。
^ ライプニッツ は例えば a √ 2 とはどのような値かということを明確にできなくとも、記号 ax を躊躇なく用いた。
関連項目 [ 編集 ]
外部リンク [ 編集 ]