巻柿

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巻柿巻き柿(まきがき)は日本郷土料理の1つ。干し柿を使った菓子である[1]岩手県[2]広島県[2]大分県[1]熊本県[2]で見られる。

概要[編集]

へたを取り除いた干し柿を縦に割って、10個ほどを集めての皮やで包み、縄で巻いたものである[1][2]

切断面が花模様に見えるのが特徴[2]

岩手県[編集]

広島県[編集]

広島県湯来町(現・広島市)では巻き柿を特産品としている[3]

干し柿にユズの皮を散らして長さは約20センチメートルほどに巻き、1本当たり15個前後の柿を使用する[3]

湯来町では昭和初期に生産が始まったとされ、お茶請けや贈答品として親しまれていたが、JA広島では2019年に生産を終了している[3]

佐賀県[編集]

佐賀県大和町(現・佐賀市)の松瀬地域は干し柿の産地であり、古くから菓子として巻き柿を作っている[4][5]

大分県[編集]

大分県中津市耶馬渓地域の農村部では1500年代以前より作られている古典的な菓子である[1]

おくどさん()の上に吊るすことで、保存性を高めていた[1]。また、贈答品としても用いられていた[1]

熊本県[編集]

熊本県宇城地方(宇土市宇城市下益城郡)や山都町は干し柿の産地としても知られるが、巻柿も伝統食として食される[6]。「福をかき寄せる」という意味合いから縁起物として正月に食されたり、年末の贈答として用いられる[6]。12月の巻柿つくりは師走の風物詩ともなっている[6]

柿は「投烏帽子(なやぼし)」という品種が使用され、干している途中で手もみを行って形を整える[6]。干し柿の表面に果糖が白く粉を吹くようになったら、軸と先端部分を切り取って、縦に切り込みを入れて開き、種を取り除き10数個を重ねて、竹の皮に包み、藁で巻いた後、縄で巻き上げる[6]。断面は干し柿のあめ色と果糖の白粉の層が、バラの花のように見える[6]

出典[編集]

  1. ^ a b c d e f 「つうだらだった」『婦人画報』2017年11月号、ハースト婦人画報社、2017年、42頁。 
  2. ^ a b c d e 平智「伝統的食文化としてのカキ(柿)の多面的利用に関する調査研究」(PDF)『浦上財団研究報告書』第7巻、1999年11月、9頁、ISSN 0915-27412024年3月7日閲覧 
  3. ^ a b c 湯来町の特産「巻き柿」づくり 中高生の一念発起」『中国新聞』、2022年11月3日。2024年3月7日閲覧。
  4. ^ 干し柿の産地で「巻き柿づくり」 短大生と小学生が交流【佐賀県大和町】”. サガテレビ (2020年1月21日). 2024年3月9日閲覧。
  5. ^ 佐賀女子短大生が、伝統の「巻き柿」作り体験 干し柿の里、松梅地区のお菓子 地域の食文化学ぶ」『佐賀新聞』、2018年1月25日。2024年3月9日閲覧。
  6. ^ a b c d e f 巻柿 熊本県”. うちの郷土料理. 農林水産省. 2024年3月7日閲覧。