大浜啓吉

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ナビゲーションに移動 検索に移動

大浜 啓吉(おおはま けいきち、1946年 - )は、日本行政法学者早稲田大学政治経済学術院教授

熊本県出身。熊本県立熊本高等学校を経て、早稲田大学法学部卒業。早稲田大学大学院政治学研究科行政法専修修士課程修了。その後、専修大学教授に転じた高柳信一東大名誉教授の知己を得て、専修大学大学院に進学。専修大学大学院法学研究科博士課程退学後に、専修大学講師、助教授を経て現職。 法学博士(専修大学、1988年)。

理論[編集]

美濃部達吉田中二郎塩野宏に至る行政法学界の通説を批判している。批判の要点は、通説とされる行政法理論は、天皇主権を根本原理とする立憲君主制に立つ大日本帝国憲法を基礎にしたものであるということにある。すなわち、憲法が国を作るのであって、国が憲法を作るのではない。日本国憲法が作った国と大日本帝国憲法が作った国とは違う国であり、その基本原理も異なる。通説とされる行政法理論は、当時のドイツ・プロイセンの通説であったオットー・マイヤー(1846ー1924年)の唱えた「法律の法規創造力の原則、法律の優位の原則、法律の留保の原則」をそのまま維持している。言うまでもなく、これは明治憲法下にドイツから輸入されたものであり、立憲君主制固有の原理に立つものである。これに対して、日本国憲法はアメリカ憲法の影響を強く受けたものであり、法の支配を基本原理としている。すなわち基本的人権の尊重を基礎的価値として、国民主権を核とするものであって、国家は市民社会における公共的問題を処理する機関として作られたものにすぎない。国の基本原理が180度転換したにもかかわらず、行政法原理が明治憲法下のそれと同じということはおかしいではないか。
 これが大浜行政法理論の根本的問題意識といってよい。つまり通説の説く行政法の基本原理は新しい革袋に古い酒を入れたに等しく、日本国憲法の核心にある法の支配の原理を反映していないというのである。すなわち、立憲君主制下の行政法理論と決別し、法の支配に基づく行政法理論を創造するにあたっては、法制定(立法)の原理と法執行の原理を峻別すべきである。法制定の原理の基礎にあるのはデュー・プロセスの法理であり、「正義に適った法」が要請されるとし、憲法13条は立法者に向けられているとする。他方、法執行の原理は、意思自治原則を基礎に考察されるべきであるとし、意思自治原則は民法では私的自治として現れ、行政法では「法律に基づく行政の原理」として現れると説く。大浜行政法理論は、その意味で、法の支配の原理に即した行政法原理を創唱した点に大きな特色がある。熱烈な支持者がいるが、なお、学界では少数派にとどまっている。

著書[編集]

  • 「行政法学の現状分析」(勁草書房・1991年)
  • 「現代日本の法的論点」(勁草書房・1994年)
  • 「都市復興の法と財政」(勁草書房・1997年)
  • 「現代日本社会の現状分析」(敬文堂・1997年)
  • 「行政法総論」(岩波書店・1999年)
  • 「都市と土地政策」(早稲田大学出版部・2002年)
  • 「公共政策と法」(早稲田大学出版部・2005年)
  • 「行政法総論(新版)」(岩波書店・2006年)
  • 「行政裁判法 行政法講義Ⅰ」(岩波書店・2012年)
  • 「行政法総論(第3版) 行政法講義Ⅱ」(岩波書店・2013年)
  • 「自治体訴訟」(早稲田大学出版部・2013年)

論文[編集]

  • 「アメリカにおけるルールメイキングの構造と展開⑴~⑸」自治研究62巻11号~ 63巻6号
  • 「地下空間利用に関する行政法規による規制」ジュリスト856号
  • 「信教の自由」基本法コンメンタール憲法(第3版(日本評論社)
  • 「学問の自由」基本法コンメンタール憲法(第3版)』(日本評論社)
  • 「都市再開発の沿革としくみ」ジュリスト897号
  • 「委任立法禁止の原則と司法審査」法と経済25号
  • 「アメリカにおけるルールメイキングの研究⑴~⑵」専修法研論集1号2号
  • 「空中権と公法」公法の諸問題Ⅲ
  • 「制限審査法理の変容と法の支配」行政法の現状分析(勁草書房)
  • 「空中権における公法上の諸問題」法律時報64卷4号
  • 「委任立法における裁量」公法研究55号
  • 「戦後における都市法の生成」現代日本の法的論点』(勁草書房)
  • 「都市形成と土地利用―土地法ける公共性を巡って」早稲田政治経済学雑誌319号
  • 「行政決定手続の構造分析」比較法学29巻2号
  • 「法の支配と国家高権論」現代日本社会の現状分析(敬文堂)
  • 「アメリカにおける行政手続」早稲田政治経済学雑誌332号
  • 「法の支配と行政法」行政法の発展と変革(有斐閣)
  • 「所有権と土地政策」都市と土地政策(早稲田大学出版部)
  • 「実質的証拠法則」行政法の争点(第三版)(有斐閣)
  • 「法の支配と行政訴訟」法治国家と行政訴訟(有斐閣)
  • 「学問の自由と大学の自治」公共政策と法(早稲田大学出版部)
  • 「市民社会と行政法(1)~(15)」)」科学2008年8月号~2012年12月号
  • 「条例論と法の支配(1)(2)」自治研究88巻2号、3号

 

その他の論文[編集]

  1. 「司法試験過去問シリーズ・行政法」早稲田経営出版(1987年1月)
  2. 「合憲性推定と立法事実」Article5号(1986年8月)
  3. 「合憲性推定と立法事件(続)」Article6号(1986年9月)
  4. 「違憲審査の基準(一)」Article8号(1986年11月)
  5. 「違憲審査の基準(二)」Article9号(1986年12月)
  6. 「樹林保護及び緑化推進に関する条例」ジュリスト増刊『条例百選』(1992年4月)
  7. 「認可と許可」『法学教室』141号(1992年6月)
  8. 「執行力について」『法学教室』144号(1992年9月)
  9. 「行政事件訴訟法における処分性」『法学教室』(1992年11月)
  10. 「行政事件訴訟法と立証責任」『法学教室』148号(1993年1月)

判例研究[編集]

  1. 「住民訴訟における応接費用」(東京地判昭和58年5月27日)『自治研究』61卷6号(1985年)
  2. 「公務員の懲戒処分」(岡山地判昭和62年3月25日)『自治研究』65卷12号(1989年)
  3. 「土地改良法事件」(東京高判決平成元年7月4日)自治研究68卷1号
  4. 「委任立法の限界」(最高裁判所第三小法廷平成3年7月9日)『ジュリスト平成3年度重要判例解説』(1992年)
  5. 「土地区画整理法の仮換地処分取消訴訟」(名古屋地裁判平成3年4月26日)『自治研究』69卷2号(1993年)
  6. 「理由付記」(最高裁判所第三小法廷昭和60年1月22日)
    • 『ジュリスト別冊行政判例百選(第三版)』(1993年)
    • 『ジュリスト別冊行政判例百選(第四版)』(1999年)
    • 『ジュリスト別冊行政判例百選(第5版)』(2006年)
  7. 「随意契約」(最高裁判所第三小法廷昭和62年5月19日)『地方自治判例百選(第二版)』(1993年)
  8. 「国税通則法における審査請求人の閲覧請求の拒否事件」『自治研究』70卷1号(1994年)
  9. 「柏崎・刈羽原発訴訟」(新潟地判平成6年3月24日)『自治研究』71巻10号(1995年)
  10. 「外国人と生活保護法」(東京地裁平成8年5月29日)『自治研究』74巻2号(1998年)
  11. 「市街地再開発事業事実と民事訴訟法による明渡し事件『自治研究』78巻3号(2002年)
  12. 「小田急線訴訟と行政裁量」『法学教室』257号(2002年2月号)
  13. 「私有地の賃貸借契約と住民訴訟」(最判平成14年10月15日)『自治研究』80巻8号(2004年)
  14. 「成田土地収用事件」(最高裁平成15年12月4日)『判例評論』556号

翻訳[編集]

  • E.GELLHORN,R.LEVIN著「現代アメリカ行政法」大浜啓吉=常岡孝好訳(木鐸社・1996年6月)

分担執筆[編集]

  • 内田満編「現代政治小辞典」(プレーン出版・1999年6月)
  • 淡路剛編「環境法事典」(有斐閣・2002年)

外部リンク[編集]

  • 紹介 早稲田大学大浜啓吉ゼミ・研究室ウェブサイト