商品開発

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

商品開発(しょうひんかいはつ、: Product development)は商品や製品を開発する業務・プロセスである。製品開発とも。

概説[編集]

特に新規であることを強調する時には「新商品開発」という言葉が使われることもある。

経営やマーケティングの教科書などに、商品開発の典型的なプロセスが解説されていることもある。(→#プロセス

商品開発のアイディア作成段階からキャッチコピーを作り、そのコピーの魅力度を調査しつつ商品開発の方向を必要に応じて軌道修正する方法なども提案されている[1]

反社会的な商品や、市場に受け入れられないような商品を開発してしまわないように、社内で商品開発に関する原則を設けている企業もある。例えば花王のそれなどが知られており、同社では社会的有用性、創造性、パフォーマンス・バイ・コスト、流通適合性などの原則(チェック項目)を設定しているという[2]

プロセス[編集]

商品開発は以下の8つの意思決定プロセスをたどるとされることもある[3]

  1. アイデア創出
  2. アイデアスクリーニング
  3. コンセプト開発とコンセプトテスト
  4. マーケティング戦略の立案
  5. 事業分析
  6. 製品開発
  7. 市場テスト
  8. 商品化

最初の6段階で合致しなければ、そのアイデアは捨てられる、ともされる。

製品発見[編集]

製品発見: Product Discovery)は作るべき製品を発見する活動である[4]。市販用製品を製作する市場投入と対比される[5]

製品のアイデアがあったとき、そのアイデアは想定顧客価値バリュープロポジション)・量産プラン・ビジネスプランなどからなる。製品発見はこれらアイデア・仮説を量産前に検証し作るべきか作らざるべきか確定する活動である。

製品発見の目的は「作るべき製品の確定」「浪費の防止[6]」「アイディエーションの学び[7]」である。作る製品があってはじめて顧客価値と事業価値を生み出せ、作らざるべき製品を避けることで効率の良い価値提供が可能になる。根底にある思想は「リスクは最初に取り組む」である[8]。また次の仮説構築に利用できる学びを得られる。

製品発見せずに市場投入する、すなわち検証をおこなわずに量産製品を製造・販売した場合、資源(時間・資本・人)を浪費する危険性がある。浪費を引き起こす大きなリスクとしては以下が挙げられる[9]

製品発見は市場投入無しでリスクを検証できる点が肝要である。ゆえに製品発見のために市場投入と同等のコストがかかっては意味がない[10]。製品発見は早期・高速・安価・少人数であることが重要である[11][12]。そのためプロトタイプ/MVP[13] を迅速に作成し素早く検証をおこなう[14](使い終わったら捨てる)。プロトタイプの最小サイズは検証したい仮説に依るため(c.f. MVP#Minimum)、検証あわせ様々な技法が利用される。

製品はユーザーが選び利用するものである。ゆえに価値・ユーザビリティの検証はユーザーテスト・市場テストで検証されなければならない(c.f. MVP#Product[15][16]。実現可能性の検証は概念実証/PoCとも呼ばれる。

製品発見を担うのはプロダクトマネジメントUXデザイン・エンジニアリングのロールからなるチームである[17]。なぜなら多くの製品で機能・デザイン・技術は絡み合っており総合的に設計する必要があるからである[18]

職種[編集]

ある程度以上の規模の企業になると商品開発の専任者が配置されていることも多い。業界にもよるが、「商品開発」はひとつの専門職・職種として成立しており、企業で経験者が募集されていることもある。

脚注[編集]

  1. ^ 田村仁『一瞬で!心をつかむ売れるキャッチコピーの法則』p.45
  2. ^ 佐川幸三郎『新しいマーケティングの実際』
  3. ^ "ほとんどの企業がいまだに製品開発に使っているプロセスを表している。… アイデア→「ビジネスケース」→ロードマップ(工程表)→要求事項→デザイン(設計)→ビルド(製造)→テスト→デプロイ(展開)" マーティ・ケーガン. (2017). INSPIRED 熱狂させる製品を生み出すプロダクトマネジメント. 佐藤真治, 関満徳 訳. 日本能率協会マネジメントセンター.
  4. ^ "作る必要のある製品を発見すること。" マーティ・ケーガン. (2017). INSPIRED 熱狂させる製品を生み出すプロダクトマネジメント. 佐藤真治, 関満徳 訳. 日本能率協会マネジメントセンター.
  5. ^ "製品を発見する活動は私たちが必要な製品を見極めるのに役立つが、製品のビルド、テスト、リリースに必要な仕事を実際におこなうのは市場投入においてである。" マーティ・ケーガン. (2017). INSPIRED 熱狂させる製品を生み出すプロダクトマネジメント. 佐藤真治, 関満徳 訳. 日本能率協会マネジメントセンター.
  6. ^ "製品発見の目的は、エンジニアにリリースできる品質の製品の開発を依頼しても、それが無駄な努力にならないことを何らかの根拠によって確認することである。" マーティ・ケーガン. (2017). INSPIRED 熱狂させる製品を生み出すプロダクトマネジメント. 佐藤真治, 関満徳 訳. 日本能率協会マネジメントセンター.
  7. ^ "経験主義では、知識は経験から⽣まれ、意思決定は観察に基づく。" Ken Schwaber & Jeff Sutherland (2020). スクラムガイド.
  8. ^ "リスクは最後ではなく最初に取り組む。" マーティ・ケーガン. (2017). INSPIRED 熱狂させる製品を生み出すプロダクトマネジメント. 佐藤真治, 関満徳 訳. 日本能率協会マネジメントセンター.
  9. ^ "製品発見の目的は次の重要なリスクに対処することである。... 価値のリスク … ユーザビリティーのリスク … 実現可能性のリスク … 事業実現性のリスク" マーティ・ケーガン. (2017). INSPIRED 熱狂させる製品を生み出すプロダクトマネジメント. 佐藤真治, 関満徳 訳. 日本能率協会マネジメントセンター.
  10. ^ "知識を得るために実際の製品と同じ品質のものを作るのは、たとえ最小限の機能に抑えたとしても相当な時間と費用の浪費であり" マーティ・ケーガン. (2017). INSPIRED 熱狂させる製品を生み出すプロダクトマネジメント. 佐藤真治, 関満徳 訳. 日本能率協会マネジメントセンター.
  11. ^ "製品発見の目標は、市場投入でおこなうよりもはるかに迅速に、かつ低コストでイテレーションを実行することである。" マーティ・ケーガン. (2017). INSPIRED 熱狂させる製品を生み出すプロダクトマネジメント. 佐藤真治, 関満徳 訳. 日本能率協会マネジメントセンター.
  12. ^ "偉大な製品を発見したいなら、早期に、かつ頻繁に、アイデアを実際のユーザーや顧客に提示することが必須である。" マーティ・ケーガン. (2017). INSPIRED 熱狂させる製品を生み出すプロダクトマネジメント. 佐藤真治, 関満徳 訳. 日本能率協会マネジメントセンター.
  13. ^ "MVPはプロトタイプであって製品ではない。" マーティ・ケーガン. (2017). INSPIRED 熱狂させる製品を生み出すプロダクトマネジメント. 佐藤真治, 関満徳 訳. 日本能率協会マネジメントセンター.
  14. ^ "製品の発見には一連の極めて簡単な実験が含まれる。それを迅速かつ低コストで実行するため、私たちは製品ではなくプロトタイプを使う。" マーティ・ケーガン. (2017). INSPIRED 熱狂させる製品を生み出すプロダクトマネジメント. 佐藤真治, 関満徳 訳. 日本能率協会マネジメントセンター.
  15. ^ "効率的な製品発見の重要な鍵は、簡易的な実験結果をとりあえず開発に持ち込むのではなく、顧客と対話する機会を得ることである。" マーティ・ケーガン. (2017). INSPIRED 熱狂させる製品を生み出すプロダクトマネジメント. 佐藤真治, 関満徳 訳. 日本能率協会マネジメントセンター.
  16. ^ "顧客調査や経験に基づいて出した判断かもしれないが、今日ではよくわかっているように、どんな場合でも、 実際のユーザーや顧客でアイデアの妥当性を検証しなければならない。" マーティ・ケーガン. (2017). INSPIRED 熱狂させる製品を生み出すプロダクトマネジメント. 佐藤真治, 関満徳 訳. 日本能率協会マネジメントセンター.
  17. ^ "発見は、プロダクトマネジメント、ユーザーエクスペリエンスデザイン、エンジニアリングの緊密な協力によるところが大きい。" マーティ・ケーガン. (2017). INSPIRED 熱狂させる製品を生み出すプロダクトマネジメント. 佐藤真治, 関満徳 訳. 日本能率協会マネジメントセンター.
  18. ^ "機能、デザイン、技術は、本質的に絡み合っている。… このことは、プロダクトマネージャー、プロダクトデザイナー、テックリードが物理的に隣同士に座ることを強く勧める唯一最大の理由である。" マーティ・ケーガン. (2017). INSPIRED 熱狂させる製品を生み出すプロダクトマネジメント. 佐藤真治, 関満徳 訳. 日本能率協会マネジメントセンター.

関連文献[編集]

  • 延岡 健太郎『製品開発の知識』日経文庫、2002年
  • 浅田 和実『図解でわかる商品開発マーケティング―小ヒット&ロングセラー商品を生み出すマーケティング・ノウハウ』日本能率協会マネジメントセンター、2006年
  • 延岡健太郎、藤本隆宏「製品開発の組織能力:日本自動車企業の国際競争力」 RIETI・ディスカッション・ペーパー・シリーズ

関連項目[編集]