コンテンツにスキップ

合唱幻想曲

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

合唱幻想曲 ハ短調(がっしょうげんそうきょく ハたんちょう、Fantasie für Klavier, Chor und Orchester c-Moll作品80は、ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン1808年に作曲した、独奏ピアノ管弦楽を含む合唱曲バイエルン国王マクシミリアン1世に献呈されている。管弦楽に加えてピアノ独奏・独唱者6人・4部合唱が必要であるということもあり、他のベートーヴェンの楽曲に比べて演奏される機会は非常に少ない。

概要

[編集]

本作は交響曲第5番と同時期の作品だが、この曲には既に交響曲第9番歓喜の合唱の原型が現れている。管弦楽合唱を組み合わせるという試みや、その旋律は、後の『第九』へと至る主要な源流のひとつと考えられている。

楽器構成としては標準的な二管編成の管弦楽に独奏ピアノ、独唱者6名(ソプラノ2、アルトテノール2、バス)、さらに四部合唱を加えるという非常に大規模なものになっている。

これら多くの要素を一つの曲に盛り込んだため、曲の全体像がつかみづらく、交響曲第9番に比べると声楽や管弦楽の扱いが単純で、合唱の入る部分ではピアノは役割が少なくなる、また他のベートーヴェンの作品に比べて構成の綿密さは見られないなどの欠点は指摘されるが、ベートーヴェンは作曲の完成度よりは管弦楽と合唱の高度な融合を目指す実験を試みたのではないかと考えられる。

作曲・初演

[編集]

1808年12月22日の、アン・デア・ウィーン劇場における交響曲第5番第6番初演コンサートで演奏する最後の曲として、同年の12月の後半の半月ほどで作曲された。この作曲期間はベートーヴェンにとっては非常に短いものである。歌詞は詩人クリストフ・クフナーのものとされているが、クフナーの詩集にこのような詩が存在しないことなどからこれを疑問視する声もある。[誰?]

初演は、この演奏会で行われた。演奏会の詳細は交響曲第5番の記事にも記されているとおり、リハーサル時間の不足などから初演は大失敗に終わったことがアントン・シントラーの記録に記されている。この際、冒頭のピアノ独奏部は即興演奏され、その後1811年の出版に際して新たに書き下ろされた。

編成

[編集]

フルート2、オーボエ2、クラリネット2、ファゴット2、ホルン2、トランペット2、ティンパニ弦五部、独奏ピアノ、独唱者6名(ソプラノ2、アルト、テナー2、バス)、四部合唱。

曲の構成

[編集]

7つの部分からなる。演奏時間は約20分。

  1. Adagio :26小節のピアノ独奏部。
  2. Allegro :主題が提示され、以下でピアノ協奏曲的な変奏曲となる。
  3. Meno allegro
  4. Adagio ma non troppo
  5. Marcia, assai vivace
  6. Allegretto, ma non troppo, (quasi Andante con moto) :ハ長調に転じ、変奏曲の主題が四重唱、そして合唱で歌われる。
  7. Presto. :コーダ。ピアノと管弦楽が一体となり、力強く結ばれる。

歌詞

[編集]
音楽・音声外部リンク
全曲を試聴する
Beethoven:Choral Fantasia Op.80 - 佐藤裕子のP独奏、アルトゥーロ・モリーナ指揮マニラ交響楽団他による演奏。マニラ交響楽団公式YouTube。
Beethoven Choral_Fantasy op.80 - Vladimír HalíčekのP独奏、Marek Klimes指揮Moravian Philharmonic (Moravská filharmonie Olomouc)他による演奏。当該ピアノ独奏者自身の公式Webサイトより。
Beethoven - Choral_Fantasy in C minor Op.80 - Tadeusz DomanowskiのP独奏、Krzysztof Kusiel-Moroz指揮ショパン音楽アカデミー交響楽団他による演奏。Akademia Filmu i Telewizji公式Webサイトより。
Beethoven - Choral_Fantasy Op.80 - Frank DupreeのP独奏、Mario Venzago指揮カールスルーエ音楽大学管弦楽団・合唱団他による演奏。当該ピアノ独奏者自身の公式Webサイトより。

芸術を賛美する内容となっており、「歓喜に寄せて」と共通点が見られる。

類似作品

[編集]

形態の類似する作品に

などがある。

外部リンク

[編集]