効果的利他主義

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効果的利他主義(こうかてきりたしゅぎ、英:effective altruism)とは、確かな証拠と論理に基づき世界の向上を目指す、という考え方かつ社会運動である。従来の慈善奉仕と異なり、広範囲において証拠・論理を用いる。このため、ときには人の直感・感情に逆らうような行動をとることもある。効果的利他主義は、哲学者ピーター・シンガーなどの支持を得ている。[1]

原理[編集]

費用有効性[編集]

慈善において、費用有効性とはある金融の単位について、どれだけの良いことが行えるかをいう。例えば、健康に関する行動の費用有効性はその行動が人生をどれだけ延ばせるか、かつ生活の質をどれだけ向上させられるか、という双方から測る。慈善団体においては、寄付する金額が同じでも結果に差が出るため、有効的に寄付するのも重要である。ことに、目的を果たすことができない慈善団体もある。目的を果たせる慈善団体の中でも、ある金額についてより効果的に行動できるものも存在する。寄付研究団体である GiveWell によると、他に比べると、何百倍も何千倍もより効果的である慈善団体も存在する。

今のところ費用有効性は慈善団体の中では新しい概念であるが、経済学では頻繁に用いられる。効果的利他主義者の多くは哲学・経済学・数学など合理的かつ数値的に考える分野の知識を持っている。

また、効果的利他主義者らは「追加基金の空間」という概念に注目している。これは、寄付に値する団体を定めるには、その団体が今までに行ってきたこと観察するよりも、追加される寄付金の限界価値(つまり、これから追加された寄付金でどれだけ良いことが行えるか)に基づくという考えである。

運動・目的の優先[編集]

多くの効果的利他主義者はどの運動・目的を最も優先させるかが重要だと主張している。このため効果的利他主義は従来の慈善運動と異なる。

例えば、従来の慈善運動の中でも有効性・根拠が強調されてきているが、これは通常(例えば教育・気候変動など)ある一つの運動内についてのみ行われ、その運動自体が分析されることは少ない。

効果的利他主義者らは、「苦しみを減らす」などより広範囲な観点より運動を分析する。そしてそれを持って、効果的な慈善団体に時間・寄付金を注ぎ込む。この運動の分析はいくつかの組織によって行われている。多くの効果的利他主義者は現在、開発途上国の貧困問題・動物の苦悩・人類の長期的未来が最も重要な目的だと考えている。

不偏性[編集]

効果的利他主義者らはすべての人の生を平等に見る。例えば、発展途上国に住む人間と自分の地域に住む人間とは同じ価値をもつということである。ピーター・シンガー曰く、

私が助けられるのが、近所の子どもであれ、一万マイルもはなれた名前も知らぬベンガル人であれ、なんの違いもない。道徳的なのは、我々の社会に有益なことよりも先を考えることである。過去にはこれは難しいことであっただろうが、いまでは可能である。我々の社会の外にいる何万人もの貧困者を助けることは、我々の社会内の財産の規則を維持することよりも重要でなくてはならない。

さらに、多くの効果的利他主義者は未来の人類と現在の人類とは同じ道徳的価値を持っていると考えている。このため、人類の存在に注目している。人以外の動物も同じように道徳的価値を所持していると主張するという者もいる。かれらは、農場の動物の苦悩を止めるためにつとめている。

歴史[編集]

2015 年には、ピーター・シンガーの本『あなたが世界のためにできるたったひとつのこと――〈効果的な利他主義〉のすすめ』が出版された。

脚注[編集]

  1. ^ "ピーター・シンガー 効果的な利他主義者になる方法", カイホー, http://kaihooo.com/effective-altruism/