内田篤呉
経歴
[編集]東京都生まれ(1952)。慶應義塾大学商学部卒業(1976)。専門は日本工芸史。「光悦光琳蒔絵の特質とその系譜」で慶應義塾大学より博士(美学)の学位を取得(2007)。東京藝術大学(2007)、武蔵野美術大学(2007~2012)、スペインのラ・マンチャ大学招聘講師(2007)、お茶の水女子大学大学院(2008~2010)、慶應義塾大学(2010~2013)、九州大学客員教授(2011~2013)、沖縄県立芸術大学非常勤講師(2013~2022)を務める。公益社団法人日本工芸会常任理事、文部科学省文化審議会(2010~2019)、世界文化遺産・無形文化遺産委員(2013~2019)、静岡県文化審議会委員(2016~)、経済産業省産業構造審議会(2017~2024)、東京都大田区特別文化アドバイザー(2025~)、東京国立近代美術館評議員(2018~)などの各種委員を歴任。
研究・展覧会活動
[編集]1976年、慶応義塾大学商学部卒業。1978年、箱根美術館(財団法人東明美術保存会)に勤務し学芸員資格を取得。1980年、熱海美術館(現MOA美術館)に異動し、日本美術史、とりわけ日本工芸史・漆工史の研究を本格的に開始した。1983年、MOA美術館における特別展「近代日本の漆工芸」[1]を担当したことを契機に漆工史学会事務局員を務め、漆工史研究に携わる。
1985年、同館特別展「光琳展」を担当し、尾形光琳および本阿弥光悦研究を深化させた。「光悦と能 華麗なる謡本の世界」[2](1999)「光琳デザイン展」[3](2004)を企画して、これらの研究成果をもとに「光悦光琳蒔絵の特質とその系譜」により、2007年慶應義塾大学より博士(美学)の学位を取得した[4]。尾形光琳三百年忌に際し「光琳アート―光琳と現代美術」[5](2015)を企画。琉球工芸に関しては「尚王家と琉球の美」展(2001)を企画、現代美術家・杉本博司と桃山美術をコラボした「杉本博司と天正少年使節が見た夢+信長とクアトロ・ラガッツィ」展[6](2018)、漆工史研究の集大成となる「大蒔絵展」[7](2022徳川美術館、三井記念美術館共催)を企画するなど、古代から現代に至る日本美術・工芸の研究に取り組んでいる。
現代工芸・現代美術との接点にも関心を寄せ、「MOA岡田茂吉賞」(1988創設)を通して現代工芸作家の顕彰と評論活動に携わった。また文部科学省文化審議会(2010~2019)、世界文化遺産・無形文化遺産部会委員(2013–2019)を務めて、国の文化財行政に参画する。その他に書道家の矢萩春恵展(2017)、NHK「びじゅチューン」で有名な「井上涼」展(2019・2020・2022)なども企画した。公益社団法人日本工芸会理事・常任理事(2015~2024)を務め、2020年、東京オリンピック・パラリンピック関連事業「工藝2020―自然と美のかたち展」[8](東京国立博物館 表慶館)、イタリア・ヴェネチアで開催されたミケランジェロ財団主催「ホモ・ファーベル」展(2021)のキュレーションを担当し、帰国展「ホモ・ファーベル―深澤直人と12人の人間国宝」(2022)を企画した。現在は「世界文化フォーラム」[9]の企画委員として日本文化を世界に発している。
茶の湯の研究は、2004年に茶道資料館共催「茶の湯の漆器―棗」展(1996)を通して茶道具の研究に携わり、『塗物茶器の研究 茶桶・薬器・棗』(淡交社)は「茶道文化学奨励賞」を受賞した。2025年、武者小路千家一翁宗守居士350 年忌記念『一翁の茶の湯』に千家道具の成立を考察した論考「一翁と棗」[10]を発表している。
文化活動(音楽・芸能・茶の湯・イベント・その他)
[編集]MOA美術館能楽堂における能楽公演を継承し、能楽研究および伝統芸能の普及に携わっている[11]。2020年、伝統芸能公演プロジェクト「熱海座」を立ち上げて、歌舞伎女形・重要無形文化財保持者(人間国宝)坂東玉三郎による舞踊公演(2020・2021・2023・2024・2025)、熱海海岸での薪能(2013・2016・2018)、琉球舞踊公演(2024・2025)などを企画・実施している。
音楽分野ではマルタ・アルゲリッチ、ミッシャ・マイスキーのクラッシックコンサート(2017・2018)、特にアルゲリッチと大槻文蔵(人間国宝)の異色のコラボ公演(2022)を実現した。坂東玉三郎(2018・2025)、森山良子(2018・2021)、坂田明(2019・2021)、鈴木優人(2021・2022)、千住真理子(2019・2021・2024・2025)、シンフォニエッタ静岡、東儀秀樹(2024・2)、井上涼(2019・2022・2024)などクラシック音楽・雅楽・ポピュラー音楽の公演プロデュースも行っている。
茶の湯分野では、「茶の湯の漆器―棗」展(1996年)を契機に茶道具研究に携わり、光悦茶会、大師会、江雲茶会など各地の茶会で席主を務めてきた。現在も、光琳茶会や光琳乾山忌茶会などにおいて、継続的に席主を担当している。
食文化に関しては、「工藝2020」展(日本博主催)の関連事業として実施された「工藝ダイニング」(2021~2025年)を継承し、工芸作品と和食文化の融合をテーマとした取り組みを展開している。
情操教育の分野では、2011年の東日本大震災を契機に、東北地方の児童を対象として公益社団法人日本工芸会と連携した工芸ワークショップを実施し、学習指導要領に掲げられる「生きる力」の育成を目的とした情操教育に取り組んできた。また、会津若松市においては、震災後の風評被害に苦しむ会津漆器への支援活動も行っている。
共生社会プロジェクトは、文部科学省が推進する「障がい者も健常者も区別なく、互いに理解し認め合える共生社会」の実現を目指す取り組みである。静岡大学教育学部、地元行政、障がい者支援事業所、家庭、美術館が連携する枠組みづくりを目的とした研究会を継続的に実施している。
造園事業では、MOA美術館内の茶の庭や竹林を整備し、熱海市の観光資源としての魅力向上に取り組んでいる。特に芝生エリアにおいては、2024年よりイギリス人ガーデナーのポール・スミザー氏とともに、農薬や肥料を使用せず、自然生態系を活かしたナチュラル・ガーデンの造園を進めている。
著書
[編集]- 『近代日本の漆工芸』京都書院 1985
- 『塗物茶器の研究 茶桶・薬器・棗』淡交社 2003
- 『硯箱の美 蒔絵の精華』淡交社 2006 茶道文化学奨励賞
- 『光琳蒔絵の研究』中央公論美術出版 2011 平成23年度科学研究費補助金研究成果公開促進費(学術図書)
監修・共著
[編集]- 『手箱』駸々堂 1999
- 『茶道学体系』第5巻(分担執筆)淡交社 2000
- 『尾形光琳筆 国宝 紅白梅図屏風』(分担執筆)中央公論美術出版 2005
- 『光琳デザイン』(編著)淡交社 2005
- 『漆工辞典』編集委員・項目執筆 角川学芸出版 2012
- 『光琳ART 光琳と現代美術』監修 MOA美術館編 KADOKAWA 2015
- 『もっと知りたい本阿弥光悦 生涯と作品』玉蟲敏子,赤沼多佳共著 東京美術 アート・ビギナーズ・コレクション 2015
- 『光悦―琳派の創始者』分担執筆 宮帯出版 2015
- 『信長とクアトロ・ラガッツィ 桃山の夢と幻+杉本博司と天正少年使節が見たヨーロッパ』編著 東京美術 2018
- 『工藝2020 自然と美のかたち』共著 青幻舎 2020
- 『日本の人間国宝』(編著)上海世久非物質文化遺産保護基金会2023
注記
[編集]- ↑ 『近代日本の漆工芸』京都書院 1985)
- ↑ 「伝光悦作樵蒔絵硯箱の意匠をめぐって」『特別展図録「光悦と能 華麗なる謡本の世界」』MOA美術館1999)、「光悦蒔絵にみる謡曲の意匠」『観世』第82巻第10号、檜書店2015)
- ↑ 『光琳デザイン』(編著)淡交社 2005
- ↑ 『光琳蒔絵の研究』中央公論美術出版 2011 平成23年度科学研究費補助金研究成果公開促進費(学術図書))
- ↑ 『光琳ART 光琳と現代美術』角川学芸出版2015
- ↑ 『信長とクアトロ・ラガッツィ 桃山の夢と幻+杉本博司と天正少年使節が見たヨーロッパ』編著 東京美術 2018)
- ↑ 『大蒔絵展 漆と金の千年物語』朝日新聞社2022
- ↑ 『工藝2020―自然と美のかたち』青幻舎 2020
- ↑ 世界文化フォーラム 主催:ハーバード大学美術史建築史学部、独立行政法人日本芸術振興会日本博事務局、MOA美術館、コーディネーター:河合正朝(慶応義塾大学名誉教授)、リピット・ユキオ(ハーバート大学教授)、室瀬和美(漆芸家・重要無形文化財「蒔絵」保持者)、内田篤呉。第1回講演は三笠宮彬子女王をお迎えして、「皇室と日本文化」と題したご講演をいただいた。
- ↑ 「一翁と棗―利休・宗旦・一翁の棗にみる武者小路千家道具の成立―」武者小路千家一翁宗守居士350 年忌記念『一翁の茶の湯』武者小路千家2025)
- ↑ 「室町蒔絵と謡曲の意匠―男山蒔絵硯箱をめぐって」『能と狂言』17 能楽学会2020