命題

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命題(めいだい、英語: proposition)とは、論理学において判断を言語で表したもので、真または偽という性質をもつもの[1][2]。また数学で、真偽の判断の対象となる文章または式。定理または問題のこと[3]西周による訳語の一つ[4][5]

厳密な意味での命題の存在は、「意味」の存在と同様に、疑問を投げかける哲学者もいる。また、「意味」の概念が許容される場合にあっても、その本質は何であるかということにはなお議論のあるところである。古い文献では、語の集まりあるいはその語の集まりの表す「意味」という意味で命題という術語を用いているかどうかということが、つねに十分に明らかにされているわけではなかった[6]

現在では、論争や存在論的な含みを持つことを避けるため、ある解釈の下で(真か偽のいずれであるかという)真理の担い手となる記号列自体について述べる時は、「命題」という代わりに「文 (sentence)」という術語を用いる。ストローソンは「言明 ("statement")」 という術語を用いることを提唱した。

命題という語[編集]

命題という語は明治の初期には一覧表などを作成するさいに標記する「項目名」などと同じような意味で使用されており、「命題」は「題命」すなわち題名とほぼ同義である。坪内逍遥「小説真髄」には「宜しく応分の新工夫を命題にもまた費やすべし」とある[7]。小学館デジタル大辞典では「題号をつけること。また、その題。名題」と説明する。この場合命題の命は「命(いのち)」の意味ではなく名づけること(あるいは名づけられていること)を意味する。一方岩波国語辞典は論理学の用法を正用としこの用法について「誤って俗に、題目・課題の意にも使う」と注記する。

至上命題[編集]

「至上命題」という語については至上命令から派生した語であり本来は誤用との指摘がある[8]。「至上命題」の用例は国民新聞1938年5月13日-5月22日報に利用があり[9]、国会議事録では昭和21年に使用例を発見することができ[10]、「至上の命題」は1941年刊行「宗教研究」(第24巻、宗教研究会刊)や1943年刊行「週報」(第341号、内閣情報部)に発見することができる。

論理学における扱い[編集]

アリストテレス論理学において命題は、主題の叙述するものを肯定または否定する、特定の種類の文である。アリストテレス的命題は「全ての人間は死ぬ」「ソクラテスは人間である」というような形を取る。

数理論理学において命題(あるいは論理式 (: propositional formula, statement forms) は量化子を含むことのない言明であり、それはまた原子論理式と五つの論理結合子(選言、連言、否定、含意、双条件)およびグループ化記号のみから構成される整論理式の合成である。命題論理は、(内部的に無矛盾性が証明されたという意味で)完全に解決された数少ない数学の分野の一つであり、命題論理において任意の定理は真であり、任意の真なる言明が証明可能である[11](この事実とゲーデルの不完全性定理から、命題論理が自然数論を構成するには不十分であることを知るのは簡単である)。命題論理の拡張としてもっともよく用いられるものは、命題論理に変項量化子を加えた、述語論理である。

数学における扱い[編集]

数学においては、例えば確率は命題の確からしさを表すなど、命題を基本的前提として出発する場合がある[12]

工学における扱い[編集]

工学では、問題を解決することに主眼があり、命題の演算で問題が解決すればよい。命題の確からしさはその対象領域の知見または前提に依存する。

脚注[編集]

  1. ^ 小学館デジタル大辞泉「命題」[1]2.
  2. ^ たとえば「雨が降っている」はこのままでは真偽の判断を下せないので命題ではない。場所や時間を特定すれば真偽が判断できるので命題になる[2]
  3. ^ 小学館デジタル大辞泉「命題」[3]3.
  4. ^ 山川偉也「西周『到知啓蒙』に見る西洋形式論理学の本邦への導入について」(St. Andrew's University, Bulletin of Research Institute 19(3),35-46,1994.3.30)[4][5]PDF-P.3(P.37)
  5. ^ 三省堂・大辞林(第三版)「命題」「②英語propositionの訳語として西周が考案。「百学連環」(1870-71年)にある」[6]
  6. ^ 例えば http://plato.stanford.edu/entries/propositions/ 参照
  7. ^ 小説真髄(上)文体論。小学館日本国語大辞書「命題」
  8. ^ 高井一「空言舌言、百七十三」(東海テレビ編成局専門局長)2009/11/27[7]
  9. ^ 神戸大学新聞記事文庫[8]
  10. ^ 第90回衆議院本会議(昭和21年6月24日)中野四郎
  11. ^ A. G. Hamilton, Logic for Mathematicians, Cambridge University Press, 1980, ISBN 0521292913
  12. ^ 伏見康治確率論及統計論」第I章 数学的補助手段 6節 命題算、集合算 p.50 ISBN 9784874720127 http://ebsa.ism.ac.jp/ebooks/ebook/204

関連項目[編集]

参考文献[編集]

外部リンク[編集]