交響曲第10番 (ヴィラ=ロボス)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

交響曲第10番『アメリンディア』(Sumé pater patrium: Sinfonia ameríndia com coros[注 1])は、エイトル・ヴィラ=ロボスが1952年から1953年にかけて作曲した交響曲

概要[編集]

ヴィラ=ロボスはサンパウロ市の誕生400周年を祝して10番目の交響曲を作曲した。1952年にリオデジャネイロで作業に取り掛かり、1953年2月15日にニューヨークで総譜を完成させている。初演は1957年4月4日にパリシャンゼリゼ劇場で行われた。作曲者自身がフランス国立管弦楽団指揮し、独唱者ジャン・ジロードーテノール)、カミーユ・モラーヌバリトン)、ジャック・シャリュード(バス)であった。曲は作曲者の死まで23年連れ添うことになる伴侶のミンディーナ(Arminda Neves d'Almeida)に捧げられた[1]

テキストは宣教師ジョゼ・デ・アンシエタの伝道を記録したものが用いられており、ラテン語ポルトガル語、そして土着言語のトゥピ語で書かれている[2]。ヴィラ=ロボスはこれについて、サンパウロの「寓話的、歴史的、宗教的な話」となることを意図したのだと記している[2]。総譜は記載に一貫性を欠いた状態で残されており、指揮者のジゼル・ベン=ドールが1957年の放送音源を頼りに校訂を施した[2]

編成[編集]

テノール、バリトン、バス(各1名)、混声合唱ピッコロ2、フルート2、オーボエ2、コーラングレクラリネット3、バスクラリネットファゴット2、コントラファゴットホルン4、トランペット4、トロンボーン4、チューバティンパニタムタムシンバルショーカリョ、ヤシの実の皮、ライオンズローアゴングスレイベル、小型のフレームドラムバスドラムシロフォンマリンバチェレスタハープ2、ピアノオルガン弦五部

楽曲構成[編集]

全5楽章で構成される。演奏時間は約69分[2]

  1. Allegro: "A terra e os seres"(地球と生き物)
  2. Lento: "Grito de guerra" (雄叫び)
  3. Scherzo (Allegretto scherzando): "Iurupichuna"
  4. Lento: "A voz da terra e a aparição de Anchieta" (大地の声とアンシエタの登場)
  5. Poco allegro

第1楽章は管弦楽のみで、独唱と合唱が中心となる残りの4つの楽章への序曲として機能する。この楽章は明確に部分ごとに区切ることができ、上昇する順次進行と続く上方への跳躍からなる旋律的モチーフが主要な役割を果たす。このモチーフは楽章を構成する5つの部分の全てに見出すことが出来る。各部分はテンポ、調性(ハ調、変ロ調、ホ調、ハ調、ハ調)、楽器法、リズム、和声、そして主要モチーフの変形のさせ方を変えることで隔てられている。核となるモチーフから導かれていないのは、第1の部分の第2主題のみである。四度の和音がとりわけ顕著であるが、分厚いオスティナートの中の複合和音、そして薄い楽器編成となる調性的パッセージと入れ替わっていく。展開を担う第4の部分では突然速度が変化し、短い弦楽器の調性的フガートによって開始する[3]

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ 最も偉大なる父の中の父:合唱付きアメリンディア交響曲

出典[編集]

  1. ^ Villa-Lobos, sua obra 2009, p. 46.
  2. ^ a b c d Stevenson, Joseph. 交響曲第10番 - オールミュージック. 2023年4月29日閲覧。
  3. ^ Enyart 1984, pp. 330, 332–333, 337, 340–341.

参考文献[編集]

  • Enyart, John William. 1984. "The Symphonies of Heitor Villa-Lobos". PhD diss. Cincinnati: University of Cincinnati.
  • Villa-Lobos, sua obra. 2009. Version 1.0. MinC / IBRAM, and the Museu Villa-Lobos. Based on the third edition, 1989.

関連文献[編集]

  • Peppercorn, Lisa M. 1991. Villa-Lobos: The Music: An Analysis of His Style, translated by Stefan de Haan. London: Kahn & Averill; White Plains, NY: Pro/Am Music Resources Inc. ISBN 1-871082-15-3 (Kahn & Averill); ISBN 0-912483-36-9.
  • Salles, Paulo de Tarso. 2009. Villa-Lobos: processos composicionais. Campinas, SP: Editora da Unicamp. ISBN 978-85-268-0853-9.

外部リンク[編集]