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レ・シルフィード

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
バレエ・リュスの公演プログラムより(1910年)

レ・シルフィード』(Les Sylphides)は、フレデリック・ショパンのピアノ曲の管弦楽編曲によるバレエ作品。最初はアレクサンドル・グラズノフによる演奏会用作品をもとに、1907年ミハイル・フォーキンによって振り付けられ、『ショピニアーナ』(Chopiniana)の名前で発表された。バレエの優雅さを堪能させるもので、劇の複雑なあらすじなどはない。森の精(シルフィード)と詩人(ショパンとも)が月明かりの下で踊り明かす。

1907年マリインスキー劇場で初演された。フォーキン自身が改訂を重ね、1909年6月 バレエ・リュス第1回公演(パリ・シャトレ座)で第3版を上演してからは現在のかたちになった。

これに類するものとして、1923年にパリのオペラ座で上演された、La Nuit ensorcelée(『魅せられた夜』)がある。これはルイ・オベールがショパンの作品を管弦楽に編曲したもので、二幕のバレエ。振付師はレオ・スターツ(Léo Staats)。

ロマンティックバレエの代表作である『ラ・シルフィード』(La Sylphide)と混同されることがあるが、シルフィードが登場すること以外に共通点はない。

使用編曲

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初演(ショピニアーナ)

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もともとはショパンの4つのピアノ作品を1892年にアレクサンドル・グラズノフが管弦楽用に編曲したもので、1893年のベリャーエフのコンサートにおいてリムスキー=コルサコフ指揮で初演された[1]

バレエとしては1907年マリインスキー・バレエによって初演された。このときフォーキンの追加注文によりグラズノフはワルツ嬰ハ短調を加え、以下の5曲で上演された。

フォーキン改訂版(第2ショピニアーナ)

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その後フォーキンはワルツ以外のグラズノフによる編曲を破棄し、マリインスキー劇場レペティトゥールであったMaurice Kellerに新たな編曲を注文した。この版は以下の7曲を含む[2]

バレエ・リュス版

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パリでのセゾン・リュスの公演にあたってセルゲイ・ディアギレフは再び『ワルツ嬰ハ短調』以外のすべての曲の再編曲を依頼した。編曲者はアナトーリ・リャードフセルゲイ・タネーエフニコライ・チェレプニンイーゴリ・ストラヴィンスキーであった。この版はパリシャトレ座で1909年6月2日に初演された[3]。振付はフォーキン、美術はアレクサンドル・ブノワにより、アンナ・パヴロワタマラ・カルサヴィナヴァーツラフ・ニジンスキー、アレクサンドラ・バルディナが踊った[4]。この版は何度も再演され、バレエ・リュスの定番となったが、楽譜が出版されることはなく、現在は使用されていない[3]

現行

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ロイ・ダグラスRoy Douglas)が1936年に編曲した版が広く用いられる[5]

全体的に編曲は巧みで、作曲者の旋律美を遺憾なく活用している。このため日本国内でも「ショパンはお好き」なる題名などで各種録音媒体の紹介がさかん。

その他の編曲

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ほかにもいろいろな版が存在する。

ロジェ・デゾルミエールが独自に編曲した稿もあり、編曲者自身の録音も残されてはいるが、現在では顧みられていない。

ベンジャミン・ブリテンは1940年にニューヨークのバレエ・シアター(アメリカン・バレエ・シアターの前身)のために編曲した[4][6][7]

アレクサンドル・グレチャニノフの編曲した版も存在する[6]

舞台構成

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  1. 前奏曲イ長調
  2. 夜想曲変イ長調 全員の踊り
  3. ワルツ変ト長調 女性ソリストのヴァリアシオン
  4. マズルカ作品33-2 女性ソリストのヴァリアシオン
  5. マズルカ作品67-3 女性ソリストのヴァリアシオン
  6. 前奏曲イ長調(最初と同じ) 女性ソリストのヴァリアシオン
  7. ワルツ嬰ハ短調 パ・ド・ドゥ
  8. ワルツ(華麗なる大円舞曲) 全員の踊り

脚注

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参考文献

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Taruskin, Richard (1996). Stravinsky and the Russian Traditions. University of California Press. ISBN 0520070992