無断リンク

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無断リンク(むだんリンク)とは、リンク先のウェブサイト等の管理者に連絡や許可申請をせずにリンクを張る行為(ただし本来許可は必要ない。後述)、またはその状態を表す考え方である。ここでいうリンクとは、HTMLによるハイパーリンクである。

概要[編集]

リンク先のウェブサイト等の管理者に連絡や許可申請をせずに無断でリンクを張ると言う意味で「無断」という言葉が使われている。「無断」という否定的な意味合いの強い単語が含まれている理由は、この言葉の登場した時期には“リンクするには被リンク側のウェブサイトの管理者に断りを入れるべき”という主張が強かったからである。現在でもネチケットにおいて「無断リンクはマナー違反」と見なす意見は存在する[1]。そしてリンクフリーという和製英語が無断リンクの許可を意味する言葉として用いられる[2][3]

リンクを張る行為は、閲覧を希望するものが、発表済みの情報にたどり着けるように、情報のウェブ上の位置を示すことであり、World Wide Webの性質からこれを制限したり禁じたりするような法律は無い[4]。従って、リンクされる側の意向をくむかくまないかは、リンクを張る側の判断に任されている。

WWWの設計から見る無断リンク[編集]

Webの設計者ティム・バーナーズ=リーの発言[5]があるように、元々Webには無断リンクという考え方はない。

"There is no reason to have to ask before making a link to another site"(和訳:他のサイトへのリンクを貼る際にお伺いをたてる必要はない。)

東北大学のページにティム・バーナーズ=リーの発言が一部翻訳されている[6]

無断リンクの是非についての論争[編集]

2003年前後に、無断リンクを控えるべきだという無断リンク否定派の立場と、そのような主張は無効であるという無断リンク許容派の立場がブログなどを舞台として論争を巻き起こした。否定派はインターネット上での儀礼的無関心の一環として無断でリンクをはられることを拒んでいるならそっとしておくべきだと主張し、肯定派はそもそもインターネットの設計思想からしてリンクするにも許可を要するのはナンセンスであると主張した(特に技術的な設計思想を過剰に強調する立場は俗にモヒカン族などといわれる)。[7]

騒動の発端となったのは、松谷創一郎が「人目につくことを好まないAさんがひっそりとネット上で執筆している日記に、アクセス数の多いBさんの日記から無断でリンクが設置され、その影響でAさんの日記のアクセス数が激増し嫌気がさしたAさんは日記を削除し執筆をやめてしまった」という状況を想定し、通常は物理的な公共空間で要求される儀礼的無関心がインターネット上でも求められてもいいのではないかという問題提起を行ったことによる[8][9]

セキュリティ研究者の高木浩光によれば、無断リンク肯定派が挙げる根拠は以下のようなものである[10]

  1. 公表された著作物の適法な引用・参照は自由であり、リンクを設置する行為は単なる参照の一種に過ぎないので問題は無い
  2. 著作権の関係から無断リンクは適切ではない」とする誤った解釈によるリンクポリシーの説明がしばしば見られ、それが不適切であるということを示す必要がある
  3. インターネットが公共のものであるという意識を共有するためには無断リンク禁止の環境は不適当である
  4. 影響力の大きい公的機関などのwebサイトでは無断リンクを禁止すべきではない

高木浩光は、無断リンクの是非の議論ではこれらが根拠が混同してしまっており、個人のサイト(私的領域)で無断リンクを拒む場合とマスコミ官庁など(公的領域)で無断リンクを拒む場合について論点を分けて議論すべきであると述べている[11]。上で挙げた以外の肯定派の意見としては、「そもそもリンクの許可をいちいちとることのほうが迷惑である」というものもある[12]

社会学者北田暁大によると、例えばアカデミズムにおいて他の研究者の論文を引用する際に出典を明示するといった制度では「固有名・公開性・公共性」の理想的な関係性が共有されているが[注 1]、ネット文化ではそれら三者の関係が共有されていないことが問題を発生させているのだという[13]。そして、ネット上での儀礼的無関心の問題はいくら技術的進歩やメディアリテラシー教育が盛んになってもついて廻る問題になるだろうと述べている[14]

批評家・社会学者の濱野智史は、一連の議論により儀礼的無関心とは「他人の日記をこっそり盗み見たい」という欲望に支えられたものであることが提示され、本来の論点ではなくこのような欲望を肯定できるかどうかというところに議論が収束してしまったと指摘している[15]。また、無断リンクを忌避する儀礼的無関心に近い事例として、電子掲示板2ちゃんねる上における「(hを抜いて)ttp://…から始まるURLを書いて直接リンクを避ける」という暗黙の風習(h抜き)や「URLをクリックするといったん広告バナーを含むページが中間に挟まれる」というシステム[注 2]を挙げている[16]

リンクに関する規定や主張[編集]

リンクに関して法的な強制力はないが、サイトによって様々な指定がなされている場合がある。また、リンクに関する個人の主張や考えも様々である。

三重県いなべ市
トップページへのリンクを原則自由とする一方、公序良俗に反するサイト等からのリンクは認めないと規定している[17]
愛・地球博
開催前の2003年頃は、悪影響のあるサイトに加えて商用サイトや個人サイトからのリンクを断るなど、様々な制限が付いていた[18]が、翌2004年には撤廃された[19]
衆議院[20]
リンクはトップページのみという、いわゆるディープリンクの禁止。
文化庁[21]
リンクは原則的に自由。ただし、リンク方法は「文化庁ホームページへのリンクであることを明記」、「文化庁ホームページが他のホームページ中に組み込まれるようなリンク設定の禁止」、「リンクは必ず新しいウィンドウが開かれるような設定で」との条件をつけている。
特許庁[22]
リンクは原則的に自由。「利用者が特許庁ホームページへリンクしていると認識できるように、リンク元にその旨を明記するなどの処置をしていただきますようお願いします。ただし、有料サイトや入場を制限しているサイト(会員制等)からリンクを行う場合は、利用者に対し当ホームページが有料または特定の登録者しか利用できない等の誤解を与える可能性があることからご遠慮願います。」というお願いを添えている。
慶應義塾大学[23]
リンクは自由。ただし画像などの直リンクは禁止。
著作権法学会[24]
リンクは原則的に自由。「リンクする側のページのフレームの中にリンクされる側のページを表示させる等、閲覧者をして制作著作の主体等につき誤認混同を生じせしむるなどの違法性ある態様でない限り、ご自由になさっていただいて結構です。」と表記している。

山形浩生のように、むしろ、いちいち断りを入れられることを嫌っている場合もある[25]

類似のリンク問題[編集]

リンクする場合に法律上制限はされていないが、特定のリンク方法の場合(直リンク、ディープリンク)、著作権上問題が発生する可能性がある。

直リンク[編集]

直リンク(ホットリンク)と呼ばれるHTML文書やXHTML文書以外のwmvswfjpegなどの画像や動画ファイル、音楽ファイルに対して<img>などの埋め込み型のタグによりリンクを張る行為や<iframe>タグを使用して、被リンク側サイトのHTML文書を自サイトの一部であるかのように見せかけるような行為が問題視されている。このような場合、リンク元のページを表示するたびにリンク先のサーバの資源を使用することになるほか、リンク元のページの一部として表示されるため著作権法上の問題が発生する可能性がある。また、上述した被リンク側の利点であるサイトの宣伝等にもならない。しかし、この問題はWebサーバの設定など、技術的対応策によって被リンク側である程度の対策を行うことができる。なお、相手に断った上で相手のウェブスペース内のバナーを<img>タグで自らのサイトの外部リンク用ページに表示させるなど、無断リンクでない直リンクというものはありうる。

ディープリンク[編集]

無断リンク禁止と類似の考えでディープリンクと呼ばれるトップページ以外へのリンクを禁止するという考え方がある。こちらは海外でも問題が起きており、著作権を問題にした裁判などが行われていた[26]。現状では無断リンクの禁止と同様、法的根拠や明確な強制力はない。最近ではディープリンク議論は収束傾向にあり、裁判などの報道も減っている。

リンク問題に対する現在の状況と傾向[編集]

現状では、大手検索エンジンの検索結果や、画像検索や音声ファイル検索、動画検索などからも分かるように、メディアファイル等へ直接のリンクであっても法的に問題になる可能性は低い。いずれの問題も、サーバーの設定やrobots.txtなどを利用することでサイト運営者が制御することができるため、これらの技術の一般化によって徐々にリンク問題に関する裁判のニュースや、リンク問題自体のメディアへの露出は減っている。また、ブログなどのWebサービスなどに依存して文章や写真をアップロードする場合、ブログ運営側の条件に同意して利用しているため、ブログ運営側によってこれらの問題が表面化しにくくなっているという事も考えられる[27]

無断リンクの法的問題点[編集]

2006年2月、経済産業省は「電子商取引及び情報財取引等に関する準則」を改定し、「他人のホームページにリンクを張る場合の法律上の問題点」を追加。[28]リンクは原則的に自由だが、不正に利益を得たりリンク先に損害を与えるといった目的がある場合、またはそのように解される方法でリンクしている場合には、不正競争防止法・商標法・著作権法などにより法的な問題が発生する可能性があるとして注意喚起している。[29]この例として消費者金融事業者が経緯なく地方金融機関のリンクを表示する行為、風俗事業者のサイトが現実の女学校HPのリンク集を表示する行為などが挙げられている。

リンク先への連絡・許可[編集]

Webに公開している時点ですでに誰でもそのサイトやファイルにアクセスできるインターネットの特性上、特に断りを入れずリンクすることに法的問題はない。何らかの理由で被リンク側がそれを嫌う場合は、前述のように技術的な方法など用いてそれをできなくさせるか、リンクされても著作権をある程度証拠として示せるように署名を入れるなどの対応をする必要がある。無断リンク拒否の意思をサイトに明記しておくことも対応の一つであるかもしれないが、上で述べたようにそれには拘束力・強制力のたぐいはほぼ無い。詳しくは著作権情報センターのリンクに対する文面を参照。

ホームページに情報を載せるということは、その情報がネットワークによって世界中に伝達されることを意味しており、そのことはホームページの作成者自身覚悟しているとみるべきだからです。リンクを張られて困るような情報ははじめからホームページには載せるべきではなく、また載せる場合であっても、ある特定の人に対してのみ知らせようと考えているときは、ロック装置を施してパスワードを入力しなければ見られないようにしておけばよいだけのことではないでしょうか。

http://www.cric.or.jp/qa/multimedia/index.html

脚注[編集]

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注釈[編集]

  1. ^ 論文がだれでも利用可能なものとして提供され(公開性・公共性)、第三者がそれを参照することによって引用元の固有名のオリジナリティが強化されるという形になっており、自分の論文が参照されることを嫌う研究者がいるということはあまり考えられない。
  2. ^ この設計により、リンク先のWebサイトの管理者は、HTTPリファラを使ってもどこからリンクされたのか正確にはわからなくなる(2ちゃんねる内のどこかからリンクされたということまではわかる)。

出典[編集]

  1. ^ リンクの取り扱い - 財団法人インターネット協会
  2. ^ デジタル大辞泉『リンクフリー』 - コトバンク
  3. ^ リンクフリーとは IT用語辞典 e-Words
  4. ^ リンクに許可は不要です
    Q 無断で(管理者に連絡や許可申請をせずに)リンクを張ることは著作権侵害となるでしょうか。
  5. ^ ティム・バーナーズ=リーの発言
  6. ^ 東北大学のページにあるティム・バーナーズ=リーの発言翻訳
  7. ^ 高木浩光「蔓延るダメアーキテクチャ」『ised 情報社会の倫理と設計 倫理篇』 河出書房新社、2010年、278-279頁。ISBN 978-4309244426
  8. ^ 松谷創一郎「ネットでの儀礼的無関心の可能性」TRiCK FiSH blog.(2003年11月30日)
  9. ^ 北田暁大 『“意味”への抗い―メディエーションの文化政治学』 せりか書房、2004年、184-185頁。ISBN 978-4796702560
  10. ^ 「蔓延るダメアーキテクチャ」『ised 情報社会の倫理と設計 倫理篇』281頁。
  11. ^ 「蔓延るダメアーキテクチャ」『ised 情報社会の倫理と設計 倫理篇』281-282頁。
  12. ^ 中西渉「事例32 リンクを張られたくなくても拒否できない」『子どもたちのインターネット事件―親子で学ぶ情報モラル』東京書籍、2006年、126頁。ISBN 978-4487801213
  13. ^ 『“意味”への抗い―メディエーションの文化政治学』187頁・197-199頁。
  14. ^ 『“意味”への抗い―メディエーションの文化政治学』199-201頁。
  15. ^ 濱野智史 『アーキテクチャの生態系――情報環境はいかに設計されてきたか』 エヌ・ティ・ティ出版、2008年、130-132頁。ISBN 978-4757102453
  16. ^ 『アーキテクチャの生態系――情報環境はいかに設計されてきたか』132-133頁。
  17. ^ いなべ市ホームページリンク設定事務等取扱要綱
  18. ^ リンク設定について - 2003年10月8日時点のインターネットアーカイブ
  19. ^ リンク設定について - 2004年2月4日時点のインターネットアーカイブ
  20. ^ アクセシビリティ・リンク・お問合せ先について”. 衆議院. 2015年6月閲覧。
  21. ^ 文化庁
  22. ^ 特許庁
  23. ^ このサイトについて”. 慶應義塾大学. 2010年3月6日閲覧。
  24. ^ 著作権法学会
  25. ^ Don't Give Me That "Permission to Link" Crap!
  26. ^ ニュース検索エンジンのNewsboosterにリンク禁止の仮命令
  27. ^ リンク問題ニュース
  28. ^ 「電子商取引等に関する準則」の改訂・公表について
  29. ^ 電子商取引及び情報財取引等に関する準則 経済産業省、2011.6.27、[1]PDF P.7-14、

関連項目[編集]