メデューサケラトプス

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メデューサケラトプス
メデューサケラトプス
メデューサケラトプス想像図
地質時代
白亜紀
分類
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 爬虫綱 Reptilia
亜綱 : 双弓亜綱 Diapsida
下綱 : 主竜形下綱 Archosauromorpha
上目 : 恐竜上目 Dinosauria
: 鳥盤目 Ornithischia
亜目 : 周飾頭亜目
下目 : 角竜下目 Ceratopia
: ケラトプス科 Ceratopidae
亜科 : カスモサウルス亜科? Chasmosaurinae?
: メデューサケラトプス属 Medusaceratops
学名
Medusaceratops
Ryan, Russell & Hartman2010
  • K. lokii

メデューサケラトプス(Medusaceratops)は、アメリカ合衆国モンタナ州白亜紀後期の地層から発見されたケラトプス類に属する恐竜メデュサケラトプスメドゥサケラトプス、またはメドゥーサケラトプスとも表記される。また正式記載前に同名の通称で呼ばれていたアルベルタケラトプスとは別の生き物である。基盤的なカスモサウルス亜科に含まれているが、セントロサウルス亜科かもしれない[1]

発見と復元[編集]

横から見た骨格

1993年、モンタナ州ヒルカントリー・ハーブマウンテン近くのミルクリバー自然区にあるケネディー峡谷にてあるボーンベッドが発見された。それは最初にスウィーニーとボイデンによってスティラコサウルスのものであると報告された。彼らはフリルのスパイクから判断してそう考えた。トレクスラーとスウィーニーは1995年に上眼窩角の存在から考察を改め、発掘現場近くで発見された事のあるケラトプス・モンタヌス(疑問名)に似ているとした。しかし上眼窩角だけでは比較することができないため、結局この化石は既存の有効な分類群には当てはめることができなかった。 土地所有者からマンスフィールド・ボーンベッドと呼ばれているそのボーンベッドがあったのは、私有地だったこともあり、いくつかの営利企業によって発掘が行われた。メデューサケラトプスのタイプ標本とその他の標本は、カナダフォッシル株式会社カルガリーワイオミング恐竜センターに売却した。同じ場所で採掘された追加の標本はロイヤル・ティレル古生物学博物館が同社から購入した。同社はまた、マンスフィールド・ボーンベッドの標本に基づいて二つの組立骨格を制作し、ワイオミング恐竜センターと福井県立恐竜博物館に納入した。しかしながら、後述の通りどちらも正確なメデューサケラトプスの組立骨格ではない。[1]

メデューサケラトプスという名は2003年にカナダ人古生物学者であるマイケル・ライアンによって非公式に、別の化石に与えられていた。その化石とは後の2007年にアルベルタケラトプスの名で公式に記載されるセントロサウルス亜科の恐竜で、カナダ・アルバータ州から見つかったものである。 その後、ライアンはマンスフィールド・ボーンベッドがアルベルタケラトプスのものではないことに気づく。メデューサケラトプスはライアンの他、ラッセル、ハートマンの連名で2010年に正式記載される。その名は古代ギリシャ語で「メデューサの角の顔」という意味であり、下向きに湾曲した複数のホーンレットからギリシャ神話に登場するメデューサのヘビの髪の毛を連想して命名された。模式種は M.ロキーで、その種小名北欧神話トリックスターロキに由来する。こちらはマンスフィールド・ボーンベッドが長年研究者を混乱させてきたこと、そして上眼窩角がマーベルコミックマイティ・ソーのロキのヘルメットの角を彷彿とさせることに因んだものである。[1]

マンスフィールド・ボーンベッドの化石はジュディスリバー累層の上部から収集された。カナダのオールドマン層と層序的に同年代であり、メデューサケラトプスはアルベルタケラトプスと同じ年代、つまり白亜紀後期カンパニアン期中頃(7750万年前頃)に生息したものと思われる。ジュディスリバー累層から発見されたジュディケラトプスが発表される前までは、カスモサウルス亜科では最古のものということで知られた。[1] [2]

先述のとおり、メデューサケラトプスの記載前にカナダフォッシルによって、マンスフィールド・ボーンベッドの複数個体分のケラトプス類を組み合わせた組立骨格が制作された。長い上眼窩角をもとにカスモサウルスのシノニムと信じられているエオケラトプスではないかとされたことや、カスモサウルス・ルッセリに似たフリルの断片が見つかっていることなどから、この復元骨格はひとまず「カスモサウルスの一種」とされ、フリルはカスモサウルス・ルッセリのそれが付けられた。組立骨格は「レオナ」の愛称を与えられ、福井県立恐竜博物館へ売られた。2001年、アルバータ州のオールドマン層から、未知のセントロサウルス亜科の頭骨化石が発見された。2001年当時、既知のセントロサウルス類で発達した上眼窩角をもつものは存在しなかったが、とりあえずライアンによって「メデューサケラトプス」という通称が与えられた。2006年、その「メデューサケラトプス」は、正式な学名、アルベルタケラトプスが与えられた。アルベルタケラトプスの記載論文で、マンスフィールド・ボーンベッドのケラトプス類は、層序的に同じカンパニアン期中期のものであり、地理的にも近いということで、カスモサウルスの一種ではなく、アルベルタケラトプスであることが指摘された。これに合わせ、カナダフォッシル株式会社はマンスフィールド・ボーンベッドからもう1体の復元骨格を制作し、ワイオミング恐竜センターに納めた。同時に、福井県立恐竜博物館で展示されていた組立骨格のキャプションは、「カスモサウルスの一種」から「アルベルタケラトプス・ネスモイ」に書き換えられた。そして2010年、セントロサウルス亜科であるA.ネスモイ1種だけで構成されていたはずのマンスフィールド・ボーンベッドに未知のカスモサウルス亜科が含まれていたことが発覚し、それこそが後のメデューサケラトプス・ロキーであった。そしてメデューサケラトプスの模式標本は、カナダフォッシルが制作した2つの復元骨格に組み込まれていたのである。更に両者は、メデューサケラトプスであると断定できる物の他、様々なマンスフィールド・ボーンベッド産のパーツの集合体であった。メデューサケラトプスのタイプ標本は部分的な頭頂骨だけであるため、問題の復元骨格2体に使われた頭頂骨以外の部分がメデューサケラトプスのものなのかどうか判断できないが、長い上眼窩角と鼻角は、メデューサケラトプスである可能性が高いとされている。 アルベルタケラトプスとされている二つの復元骨格を構成している化石のうち、どこがメデューサケラトプスでどこがセントロサウルス亜科のものなのかはわからないが、マンスフィールド・ボーンベッドはほぼメデューサケラトプスだけで構成されている可能性が高いと考えられることから、大部分がメデューサケラトプスで占められていると思われる。

記載[編集]

ワイオミング恐竜センターに所蔵されていた二つの断片的なフリルがメデューサケラトプスの模式標本として選ばれた。ホロタイプ WDC DJR 001 、そして パラタイプ WDC DJR 002 である。数百個体分に及ぶマンスフィールド・ボーンベッド由来のすべてのカスモサウルス類がメデューサケラトプスであるかどうかは不確かで、科学的に記載されたのはただ二つの断片的なフリルのみである。他のものはライアンによって再検討されている。他の標本の多くは属について言及できる保存状態ではなく、唯一確かなのはそれらがカスモサウルス亜科に属するということだけである。[1]

タイプ標本についてのみ考慮する際、メデューサケラトプスはフリル両端の独特な三対のホーンレットゆえにカスモサウルス亜科の中でも奇抜な存在であると言える。第一のホーンレットは大きく、第二のそれはより小さい。そして両者は奇妙な形に下向きに歪んでいる。第三のホーンレットは小さな三角形で他の基盤的カスモサウルス亜科と比べると控えめであるが、他の二対と同様に垂れ下がっており、鱗状骨との境に届くほどである。大きく広がり曲がった第一のホーンレットは、アルベルタケラトプスの第三のホーンレットにかなり似ている。2016年の日本人による系統解析によればカスモサウルス亜科ではなく、アルベルタケラトプスと同じくセントロサウルス亜科に含めるべきとの指摘もある。そのため、今後分類が見直される可能性がある。[1]

ジュディスリバー累層から見つかる他のカスモサウルス亜科(ジュディケラトプススピクリペウス)と比べて、メデューサケラトプスはフリルの形状からしてかなり個性的である。[3] そしてメルクリケラトプスはメデューサケラトプスがもつそのユニークな鱗状骨をもっていないことに基づいて設立された属である。[4] [1]

出典[編集]

  1. ^ a b c d e f g Ryan, Michael J.; Russell, Anthony P., and Hartman, Scott. (2010). "A New Chasmosaurine Ceratopsid from the Judith River Formation, Montana", In: Michael J. Ryan, Brenda J. Chinnery-Allgeier, and David A. Eberth (eds), New Perspectives on Horned Dinosaurs: The Royal Tyrrell Museum Ceratopsian Symposium, Indiana University Press, 656 pp. ISBN 0-253-35358-0.
  2. ^ Longrich, N. R. (2013). “Judiceratops tigris, a New Horned Dinosaur from the Middle Campanian Judith River Formation of Montana”. Bulletin of the Peabody Museum of Natural History 54: 51–65. doi:10.3374/014.054.0103. 
  3. ^ Jordan C. Mallon, Christopher J. Ott, Peter L. Larson, Edward M. Iuliano and David C. Evans (2016). Spiclypeus shipporum gen. et sp. nov., a Boldly Audacious New Chasmosaurine Ceratopsid (Dinosauria: Ornithischia) from the Judith River Formation (Upper Cretaceous: Campanian) of Montana, USA”. PLoS ONE 11 (5): e0154218. doi:10.1371/journal.pone.0154218. PMC 4871577. PMID 27191389. http://www.pubmedcentral.nih.gov/articlerender.fcgi?tool=pmcentrez&artid=4871577. 
  4. ^ Ryan, M. J.; Evans, D. C.; Currie, P. J.; Loewen, M. A. (2014). “A new chasmosaurine from northern Laramidia expands frill disparity in ceratopsid dinosaurs”. Naturwissenschaften 101: 505–512. doi:10.1007/s00114-014-1183-1. PMID 24859020.