ベタネコール

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ベタネコール
IUPAC命名法による物質名
臨床データ
MedlinePlus a682849
胎児危険度分類
  • US: C
投与経路 経口、皮下注
薬物動態データ
生物学的利用能?
血漿タンパク結合?
代謝?
半減期?
識別
CAS番号
674-38-4 チェック
ATCコード N07AB02 (WHO)
PubChem CID: 2370
IUPHAR/BPS 297
DrugBank DB01019 チェック
ChemSpider 2280 チェック
UNII 004F72P8F4 チェック
KEGG C06850  チェック
ChEBI CHEBI:3084 チェック
ChEMBL CHEMBL1482 チェック
別名 2-[(aminocarbonyl)oxy]- N,N,N-trimethyl- 1-propanaminium
化学的データ
化学式C7H17N2O2
分子量161.221 g/mol
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ベタネコール(Bethanechol)とはコリンエステル類に属するコリン作動薬の一つである。ムスカリン受容体に結合することにより副交感神経様作用を示す。ニコチン受容体には作用しない。消化管膀胱平滑筋に対する作用は強いが、循環器系への作用は弱い。排尿促進薬として利用される。アセチルコリンとは異なり、ベタネコールはコリンエステラーゼ加水分解されないので、作用持続時間が長い。商品名ベサコリン

効能・効果[編集]

  • 消化管機能低下(慢性胃炎、迷走神経切断後、手術後および分娩後の腸管麻痺、麻痺性イレウス
  • 手術後、分娩後および神経因性膀胱などの低緊張性膀胱による排尿困難(尿閉[1]

ベタネコールはドライマウスを軽減する[2]全身麻酔薬や膀胱の糖尿病性神経障害による尿閉、抗うつ薬の副作用、胃腸筋緊張消失の治療にも使われる。膀胱と消化管のムスカリン受容体を刺激し、排尿や消化管の運動増加を促す。ベタネコールはこれらの疾患の器質的要因が除外された場合のみ用いるべきである。

脳性麻痺の治療への応用が検討されている[3]。ベタネコールは強力なコリン作動物質であり、血液脳関門を通過せず、神経伝達の強度と処理速度を向上させる強いスマートドラッグとしての特性を有している。

術前に腸・膀胱の動きを止めるためにアトロピンが投与され、術後はその作用を打ち消すためにベタネコールが投与される[4]

禁忌[編集]

ベタネコールが投与禁忌である患者は、以下の通りである[1]

  • 甲状腺機能亢進症の患者
  • 気管支喘息の患者
  • 消化管および膀胱頸部に閉塞のある患者
  • 消化性潰瘍の患者
  • 妊婦または妊娠している可能性のある婦人
  • 冠動脈閉塞のある患者
  • 強度の徐脈のある患者
  • てんかんのある患者
  • パーキンソニズムのある患者

他のムスカリン作動薬同様、気管支喘息虚血性心疾患消化性潰瘍腸閉塞甲状腺機能亢進症のある患者には禁忌である。副交感神経作動作用がこれらの疾患を悪化させる。

副作用[編集]

コリン作動性クリーゼが発生する危険性があるので諸症状(悪心、嘔吐、腹痛、下痢、唾液分泌過多、発汗、徐脈、血圧低下、縮瞳等)に注意する必要がある[1]

関連項目[編集]

出典[編集]

  1. ^ a b c ベサコリン散5% 添付文書” (2010年2月). 2016年7月18日閲覧。
  2. ^ Gorsky, Meir; Epstein, Joel B.; Parry, Jamie; Epstein, Matthew S.; Le, Nhu D.; Silverman, Sol (2004-02-01). “The efficacy of pilocarpine and bethanechol upon saliva production in cancer patients with hyposalivation following radiation therapy”. Oral Surgery, Oral Medicine, Oral Pathology, Oral Radiology, and Endodontics 97 (2): 190-195. doi:10.1016/S107921040300564X. ISSN 1079-2104. PMID 14970777. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/14970777. 
  3. ^ Carter WJ (September 2008). “Unexpected benefits of bethanechol in adults with cerebral palsy”. Med. J. Aust. 189 (5): 293. PMID 18759732. http://www.mja.com.au/public/issues/189_05_010908/letters_010908_fm-2.html. 
  4. ^ Obied, Hassan (2011). Cholinergic Pharmacology. CSU