ファーマコフォア

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ファーマコフォアモデルの一例。
GABAA受容体ベンゾジアゼピン結合部位のファーマコフォアモデルの一例[1]。白色の棒はベンゾジアゼピンの一種ジアゼパムの炭素原子を表わしているのに対して、緑色は非ベンゾジアゼピンのCGS-9896の炭素原子を表わしている。赤色と青色の棒はそれぞえ酸素原子と窒素原子である。H1とH2/A3とラベルされた赤色の球はそれぞれ、受容体中の水素結合ドナー部位とアクセプター部位である。L1、L2、L3は疎水性結合部位を示す。

ファーマコフォア(英: pharmacophore)は、生体高分子によるリガンドの分子認識に必要な分子の特徴(官能基群とそれらの相対的な立体配置)の(抽象的な)概念である[2]IUPACにおけるファーマコフォアの定義は「特定の生物学的標的との最適な超分子相互作用を確実にし、生物学的反応を引き起こす(もしくは遮断する)ために必要な、立体的、電子的特徴の集合体」とされている[3]

ファーマコフォアの概念とコンピューター化学を用いて、同様の生物学的活性を持つ複数の分子から必須な特徴が決定できる。化合物データベース中で、特定の生理活性を示す(または示さない)化合物同士の三次元的構造、電子密度分布、官能基同士の位置関係などを相対的に比較することで、ファーマコフォアを推定することができる。典型的なファーマコフォアの特徴は、分子が疎水性芳香族化合物、水素結合受容体/供与体、カチオン、またはアニオンである部位にみられることが多い。さらにファーマコフォアが特定されれば新規のリガンドを検索、デザインすることも可能であり、専用のソフトウェアが医薬品開発に応用されている。

歴史[編集]

歴史的に、ファーマコフォアの概念はレモント・キールによって確立された。キールは1967年にこの概念に初めて言及し[4]、1971年の論文でこの用語を使用した[5]

この概念の作成は、しばしば誤ってパウル・エールリヒに帰される。しかしながら、そう主張されている文献[6]やエールリヒのいかなる著作においても、「ファーマコフォア」という用語に言及したものやこの概念を使ったものはない[7]

1977年に、ピーター・グンドは「分子において受容体に認識され生物学的活性の原因となる一まとまりの構造的特徴」とファーマコフォアを定義した[8]

要素[編集]

典型的なファーマコフォア要素には、疎水性重心、芳香環水素結合アクセプターあるいはドナー、カチオンアニオンがある。これらのファーマコフォア点はリガンドそれ自身上に位置してもよいし、受容体中に位置すると推定される投影点でもよい。

新規なリガンドを同定するためには、これらの要素を同様の性質を持つ異なる官能基群と合わせる必要がある。リガンド-受容体相互作用は通常「極性陽性」、「極性陰性」、「疎水性」である。詳細なファーマコフォアモデルには疎水性体積や水素結合ベクトルなども含まれる。

脚注[編集]

  1. ^ Madsen U, Bräuner-Osborne H, Greenwood JR, Johansen TN, Krogsgaard-Larsen P, Liljefors T, Nielsen M, Frølund B (2005). “GABA and Glutamate receptor ligands and their therapeutic potential in CNS disorders”. In Gad SC. Drug Discovery Handbook. Hoboken, N.J: Wiley-Interscience/J. Wiley. pp. 797–907. ISBN 0-471-21384-5. 
  2. ^ 日本薬学会 (2014年1月). “ファーマコフォア”. 薬学用語解説. 2015年3月17日閲覧。
  3. ^ Wermuth CG, Ganellin CR, Lindberg P, Mitscher LA (1998). “Glossary of terms used in medicinal chemistry (IUPAC Recommendations 1998)”. Pure and Applied Chemistry 70 (5): 1129–1143. doi:10.1351/pac199870051129. 
  4. ^ Kier LB (September 1967). “Molecular orbital calculation of preferred conformations of acetylcholine, muscarine, and muscarone”. Mol. Pharmacol. 3 (5): 487–94. PMID 6052710. 
  5. ^ Kier LB (1971). Molecular orbital theory in drug research. Boston: Academic Press. pp. 164–169. ISBN 0-12-406550-3. 
  6. ^ Ehrlich P (1909). “Über den jetzigen Stand der Chemotherapie”. Ber. Dtsch. Chem. Ges. 42: 17–47. doi:10.1002/cber.19090420105. 
  7. ^ J.H. van Drie (2007). “Monty Kier and the Origin of the Pharmacophore Concept”. Internet Electronic Journal of Molecular Design 6: 271–279. http://biochempress.com/Files/iejmd_2007_6_0271.pdf. 
  8. ^ Gund, P. (1977). Prog. Mol. Subcell. Biol. 5: 117-143. 

関連項目[編集]

参考文献[編集]

外部リンク[編集]

以下のソフトウェアパッケージによって様々な計算化学的手法を用いたファーマコフォアモデルの作成が可能である。