トタン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ナビゲーションに移動 検索に移動
トタンを使った倉庫

トタン: tutanaga: corrugated galvanised iron)は、亜鉛めっき鋼板のうち、主に建築資材として使われているものの俗称。亜鉛鉄板、亜鉛鍍鉄板(あえんとてっぱん)などと呼ばれることもある。亜鉛めっき鋼板は安価で耐食性に優れており、建材や家電製品などに利用されている[1]バケツじょうろちりとり等の日用品の材料にも用いられる。 トタンの語源はポルトガル語Tutanaga(亜鉛)といわれている[2]

波板[編集]

倉庫や物置の屋根材などに使用される波状の板を波板という[3](英語ではコルゲートという)。波板の材料はトタンなどの金属板に限られるわけではなく、塩化ビニルポリカーボネートなど合成樹脂製のものもある[3]。トタン波板などの鋼板製波板はそのままでは容易に変形してしまう薄鋼板を形状の工夫により強度を高めたものである[3]

JIS G 3316に「鋼板製波板の形状及び寸法」が規定され、軟鋼板に亜鉛めっきしたもの、波板1号(大波)と波板2号(小波)が種類にあげられている。波板の大きさはさまざまだが、波付け前の標準幅が914ミリメートル、標準長さが1829ミリメートルのものがサブロク板(3フィート×6フィートによる)と呼ばれ、日本では普通の大きさである。

なお、鋼板製波板の屋根材にはトタン波板よりも強度や耐久性の高いガルバリウム鋼板も用いられる[3]

用途[編集]

  • 建材
    簡易な建造物の屋根や外壁、塀に用いられたり雨どいなどに使われる。
  • 竹林の拡大防止
    竹林の拡大防止のための遮蔽材として土地に埋設して利用される[4]

加工[編集]

波板のトタンを切断する際には波板が変形してしまうことを防ぐために専用のはさみが用いられることが多い。

歴史[編集]

鉄板に亜鉛を鍍金する技術はフランスの科学者ポール・ジャック・マルーインによって1742年に発明され、以来亜鉛板の代用品として利用されるようになった[5]。亜鉛鉄板は工業化とともに発展し、第一次世界大戦を契機に需要が拡大した。日本での本格的な国産化は、明治39年(1906年)に官営八幡製鐵所に薄板製鉄工場が建設され、亜鉛鉄板40トンが製造されたのが始まりとなった[5]。その後、民間にも亜鉛鉄板製造の機運が高まり、明治44年(1911年)大阪市桜島に亜鉛鍍(後の日新製鋼)が設立されたのを皮切りとして、多くの亜鉛鉄板工場が設立された。

日本にトタンの建材が広範に普及する契機となったのは、明治14年(1881年)に東京市に施行された「防火線路並ニ屋上制限令」によって、鉄道の沿線200メートル以内の建物はすべて不燃性の屋根材を葺くことが規定されたことが契機となったと言われる[5]。屋上制限令に類似する政令は全国の都市防災政策に広がり、大正8年(1919年)に公布された市街地建築物法に発展した。不燃材であるトタンの需要は飛躍的に増大し、鉄道沿線のみならず全国的に普及した[5]

大正12年(1923年)に発生した関東大震災の際には、被災地にトタン屋根のバラックが立ち並ぶなど、復興資材としてトタンが重要な役割を果たした[5]。亜鉛鉄板の生産増加に伴い、品質の向上を図るため昭和11年(1936年)に「亜鉛鉄板単純化規格」が制定され、後にJES規格を経て昭和26年(1951年)にJIS規格となった。戦後になってからは屋根葺きにトタンを使う家は少なくなっていったが、屋上の積雪が落下しやすい特徴から、北海道などの豪雪地帯では長らく利用され続けた[5]

脚注[編集]

  1. ^ 前田重義、「鉄鋼の表面処理」『色材協会誌』 56巻 9号 1983年 p.615-625, doi:10.4011/shikizai1937.56.615
  2. ^ 鉄鋼の一口知識 4.トタンとブリキの由来 ”. 日本鉄鋼連盟. 2013年3月11日閲覧。
  3. ^ a b c d 波板屋根の5つの種類とDIYで後悔しないために押さえるべき注意点 e-yanet、2020年2月5日閲覧。
  4. ^ 広がる竹林をどうしよう?という時に 森林総合研究所、2020年2月5日閲覧。
  5. ^ a b c d e f 森隆男(編)『住の民俗事典』 柊風舎 2019年 ISBN 978-4-86498-061-6 pp.259-261.

関連項目[編集]

外部リンク[編集]