保岡勝也

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やすおか かつや
保岡 勝也
生誕 1877年(明治10年)1月22日
日本の旗 日本 東京府
死没 (1942-08-02) 1942年8月2日(65歳没)
日本の旗 日本 神奈川県横浜市戸塚区
国籍 日本の旗 日本
出身校 東京帝国大学工科大学
職業 建築家
所属 三菱社→保岡勝也建築事務所
建築物 三菱8〜21号館
岩崎家深川別邸
第八十五銀行本店

保岡 勝也(やすおか かつや 1877年(明治10年)1月22日 - 1942年(昭和17年)8月2日[1])は日本の建築家三菱丸の内赤煉瓦オフィス街の設計を行った他、先駆的な住宅設計で知られる。

経歴[編集]

東京生まれ。1900年(明治33年)、東京帝国大学工科大学建築学科(現・東京大学工学部建築学科)を卒業[2]工科大学では学長であった辰野金吾に師事した。

丸の内一丁倫敦[編集]

岩崎家深川別邸・池の御茶屋

岩崎久弥が社長を務める三菱合資会社(現・三菱地所)に入社する。三菱は1889年(明治22年)に、明治政府より丸の内の一括払い下げを受けており、「丸ノ内建築所」を設置、ジョサイア・コンドルによって、1894年(明治27年)、「三菱一号館」が竣工した。保岡は、曽禰達蔵の下で丸の内赤煉瓦街の設計に携わるが、3年で三菱を退社し帝国大学大学院に再入学する(研究テーマは劇場建築)。卒業後、三菱に再入社、その1年後の1906年(明治39年)には定年退社した曽禰達蔵の後任の技師長に29歳の若さで就任した。丸の内「一丁倫敦」の設計の総指揮を取り保岡によってそれは完成された。保岡は「三菱8号館」から「三菱21号館」までの設計を行い、特に「三菱14号館」は日本初の鉄筋コンクリート構造を用いた。

丸の内以外では、佐賀県唐津市に「三菱合資会社長崎支店唐津出張所」(唐津市歴史民俗資料館として現存。佐賀県指定重要文化財)、「三菱銀行大阪支店」(現存せず)などを手がけた。

赤煉瓦や鉄筋コンクリート造のオフィス設計だけでなく、住宅設計に関心が向い、大隈重信邸の西洋館(現存せず)では日本で初めてのシステムキッチンを導入した。1908年(明治41年)から1909年(明治42年)に欧米視察を行い、帰国後は、岩崎家英国からの国賓をもてなす施設として深川に岩崎弥之助深川別邸池辺茶亭を設計した。清澄庭園内にある「涼亭」がそれで東京都選定歴史的建造物となっている。

旧 八十五銀行本店
旧 山吉デパート

川越4部作[編集]

1912年(明治45年)、三菱を退社し、翌年、東京市京橋区銀座に「保岡勝也建築事務所」を設立する。藤井厚二らの先輩として先駆的な住宅設計や、勃興してきた中産階級を対象にした住宅設計の書籍の著述などを意欲的に行った。この時期の代表作とされるのが「川越4部作」と称される埼玉県川越市の一連の建築で、1つを除いて現存していることから極めて価値がある。

保岡は川越の豪商・山崎嘉七(5代目)の知遇を得て、まず1915年(大正4年)に「川越貯蓄銀行本店」を設計(昭和30年代に取り壊され現存せず)、1918年(大正7年)には保岡の代表作となる「第八十五銀行本店」を設計した。これは埼玉りそな銀行川越支店として現存し、埼玉県における国の登録有形文化財登録第1号となった。1926年(大正15年)には、数寄屋造りの和室が融合されたホール形式の洋館「山崎家別邸」を設計した(川越市の所有として現存。庭園は「旧山崎氏別邸庭園」として埼玉県内で初の国の登録記念物(名勝地関係)に登録)。保岡は晩年は茶室建築の研究に没頭した。1936年(昭和11年)、埼玉県最初のデパートである「山吉デパート」を設計した(保刈歯科醫院として現存)。これが4部作の最後で保岡の遺作ともなった。

独立後の作品として他には、「三菱合資会社若松支店」(「上野海運ビル」として現存。福岡県北九州市若松区1913年)や「長崎次郎書店」(熊本県熊本市1924年。国の登録有形文化財)、中央公論社創設者の「麻田駒之助邸」(「平野家住宅」として現存。東京都文京区西片1921年。国の登録有形文化財)など数件現存する。

参考文献[編集]

  • 広報川越 No900 先人のあゆみ30
  • 丸の内をつくった建築家たち - むかし・いま、藤森照信、別冊新建築「三菱地所」所収
  • 日本近代建築史再考-虚構の崩壊、村松貞次郎他、新建築社、1977
  • 日本の近代住宅、内田青蔵、鹿島出版会、1992 ISBN 978-4306043015
  • 近代建築散歩 東京・横浜編、小学館
  • 近代建築再見、山口廣、1997年
  • 昭和住宅物語初期モダニズムからポストモダンまで23の住まいと建築家、藤森照信、新建築社、1990 ISBN 978-4786900815
  • 川越市立博物館編 『建築家保岡勝也の軌跡と川越 市制施行90周年記念 第37回企画展』 川越市立博物館、2012年 

脚注[編集]

  1. ^ 川越市立博物館 2012, p. 14
  2. ^ 『官報』第5106号、明治33年7月11日、p.153

関連項目[編集]