チクロ

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サイクラミン酸ナトリウム
チクロ 構造式
IUPAC名N-シクロヘキシルスルファミン酸ナトリウム
別名チクロ
分子式C6H12NNaO3S
分子量201.22
CAS登録番号139-05-9
形状わずかにベージュ色を帯びた板状結晶
融点>300 °C

チクロサイクラミン酸ナトリウム)は、人工甘味料の一つ。IUPAC名N-シクロヘキシルスルファミン酸ナトリウム sodium N-cyclohexylsulfamate。甘さは砂糖の30倍から50倍と言われる。後味がわずかに苦い(特に高濃度の場合)が、サッカリンアセスルファムカリウムほどではなく、それらの高甘味度甘味料に比べてすっきりした、砂糖に近い甘味を持つ。1937年アメリカ合衆国のMichael Svedaが発見した。

製法[編集]

スルファミン酸シクロヘキシルアミンの混合物に水酸化ナトリウムを反応させて得られる。

安全性問題の経緯[編集]

チクロはアメリカ食品医薬品局により、発癌性催奇形性の疑いが指摘されたため、1969年にアメリカ合衆国やカナダが使用禁止を発表。これを受けて日本でも、農林省が使用をやめるよう要請した結果、清涼飲料水の製造企業が自主規制に同意[1]。さらに同年中には、食品添加物の指定が取り消しとなり、チクロの使用が禁止された。ただし多数の追試験では一つも再現されず、イギリスを含むヨーロッパでは全く問題にされなかった[2]

1972年には、スイス連邦政府がテスト結果としてチクロの無害を発表した[3]。これらの結果を受けて、製造元であるアボット・ラボラトリーズがFDAに働きかけても、規制は撤廃されなかった。現在では中国カナダEUなど約55ヶ国で使用されている。このように各国の食品行政の対応が異なるため、輸入食品回収事件の原因となることもある。

日本においては1969年11月に使用禁止となり、回収する期限は清涼飲料水1970年1月、その他の食品は同年2月、缶詰瓶詰は同年9月までとされた[4]。チクロを使用してきた食品菓子は甘味料が変更されることとなり、その結果、味が変化したり、廉価なチクロが使えなくなったりしたことによる価格上昇で売上を落とし、姿を消した商品もある。パッケージにはチクロを使用していないという意味で「全糖」という表現も見られた。これを機に砂糖や天然由来の甘味料、アミノ酸ベースの甘味料に切り換え、現在に至るまで販売されている商品もある。

1982年、JECFA(WHO/FAO合同による食品添加物専門家会議)では、チクロの1日当たり許容摂取量を、体重1キログラム当たり11ミリグラムとした。この量は菓子類などに使用する分には問題ない量ではあるが、日本では他の甘味料の普及が進んだ状況もあり、積極的にチクロの使用を考える企業はなく、安全性の再評価は行われていない。ただし、規制の継続が上記のような輸入食品の回収・廃棄につながり、食品ロスを生じさせているとの指摘もある[5]

チクロの密売[編集]

脚注・出典[編集]

  1. ^ 「チクロ 日本でも中止の動き サイダーまず自主規制 ミカンなど缶詰も」『朝日新聞』昭和44年(1969年)10月22日夕刊、3版、11面
  2. ^ Chemistry Viewsの連載エッセイ「サッカリンの物語」第5話 / チクロの話ワイリー・サイエンスカフェ
  3. ^ 桶谷繁雄、昭和47年10月5日講演録「公害報道について」和敬塾五十年の歩みとこれから、和敬塾
  4. ^ 「まず清涼飲料水から 悪質者は営業停止も」『中國新聞』昭和45年1月15日 10面
  5. ^ 日米禁止の甘味料「チクロ」安全性評価されず、検討の時期”. 『産経新聞』朝刊(文化面) (2019年2月15日). 2019年2月23日閲覧。
  6. ^ 「架空会社でチクロ流す かん詰め200個を押収」『中國新聞』昭和46年10月12日夕刊 7面

関連項目[編集]