スルフォラファン

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スルフォラファン
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識別情報
CAS登録番号 4478-93-7
PubChem 5350
特性
化学式 C6H11NOS2
モル質量 177.29 g/mol
外観 油状
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。

スルフォラファン (: sulforaphane) とは、有機硫黄化合物のうちイソチオシアネート系の化合物[1]。植物中では前駆体グルコシノレートの形で存在する[1]。様々な生理活性により健康機能に注目が集まるが、ヒトでの有効性について信頼できる十分な情報は見当たらない[1][2]

ブロッコリーキャベツ、芽キャベツ、ケールなどのアブラナ科の野菜から摂取できる[1]。特にブロッコリーの新芽(ブロッコリースプラウト)に多く存在する[1][2]

性質[編集]

イソチオシアネート系の化合物で、植物中では前駆体グルコシノレートであるグルコラファニンの形で存在する。咀嚼や調理時の加熱などで細胞が壊れ、酵素ミロシナーゼと反応してスルフォラファンが生成する[1]。苦味と渋味が混ざったような味がし、分解時に硫黄を含む揮発性物質も生成するため青臭さにも影響する[3]

スルフォラファンを含む食品を調理すると、スルフォラファンの生物学的利用能が低下するとの報告がある[4][5][6]

研究[編集]

非臨床試験[7]試験管内での実験や動物実験)では、アルコールなどの肝臓での解毒代謝の亢進、抗炎症作用やピロリ菌に対する抗菌作用などの効果が明らかになっている[3][8]。しかし、どの効果に関してもヒトを対象にした研究は少なく、ヒトの疾患に対する有効性を示す質の高い[9][10]根拠は得られていない[1][2][11]

1997年非臨床試験で、発芽3日目のブロッコリーの新芽に含まれるスルフォラファンが、ラットがんの発生と増殖を減少させたことが報告された[12]。ヒトにおける有効性の根拠はないものの[2]、その発表を受けてブロッコリースプラウトがアメリカでブームになった[13]

食薬区分[編集]

食薬区分においては、「専ら医薬品として使用される成分本質 (原材料) 」にも「医薬品的効能効果を標ぼうしない限り医薬品と判断しない成分本質 (原材料)」(非医薬品[14]にも該当せず[2]、効果効能を表示すると薬機法(旧薬事法)の違反になる[15]。また「癌が治る」「血糖値が下がる」「血液を浄化する」といった誇大な医薬品的効果効能表示(店頭や説明会における口頭での説明も含む)を行うと、景品表示法健康増進法の規制の対象となる[16][17][18]

スルフォラファンを機能性関与成分としたサプリメントが、機能性表示食品として届けられている[19]。機能性表示食品とは、国が審査は行わず、事業者が自らの責任において機能性の表示を行うもので、「健康な中高年世代の方の健常域でやや高めの血中肝機能酵素(ALT)値を低下させる機能があります」と表示している[19]。機能性の根拠には、届出企業の資金提供を受けて行った臨床試験1報を採用した[19]。この研究では、30 - 64歳の健康な被験者103名にランダム化比較試験を実施した[20]。グルコラファニン24 mg/日またはプラセボをそれぞれ24週間摂取した結果、肝機能のバイオマーカーALT、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、γ-グルタミルトランスフェラーゼ)について有意差は認められなかった[20]。しかし、年齢による層別解析では、ALTは、グルコラファニンを24週間摂取した中高年者(45-64歳)で有意に低下した[20]

安全性[編集]

通常の食品から摂取できる量はおそらく安全であるが、濃縮物をサプリメントとして摂取した場合の安全性については情報が不足している[2]

出典[編集]

  1. ^ a b c d e f g “Isothiocyanates”. Linus Pauling Institute (Micronutrient Information Center, Linus Pauling Institute, Oregon State University). (2017年3月). https://lpi.oregonstate.edu/mic/dietary-factors/phytochemicals/isothiocyanates 2018年11月19日閲覧。 
  2. ^ a b c d e f スルフォラファン - 「健康食品」の安全性・有効性情報(国立健康・栄養研究所
  3. ^ a b 中村宜督、食品に見る 機能性成分のひみつ(第28回)青汁の材料として有名な葉野菜 スルフォラファンとルテイン ケール”. 女子栄養大学出版部. 2022年6月6日閲覧。
  4. ^ Disposition of glucosinolates and sulforaphane in humans after ingestion of steamed and fresh broccoli”. Nutr Cancer . 2000;38(2):168-78. doi: 10.1207/S15327914NC382_5.. 2022年6月6日閲覧。
  5. ^ Effect of meal composition and cooking duration on the fate of sulforaphane following consumption of broccoli by healthy human subjects”. Br J Nutr . 2007 Apr;97(4):644-52. doi: 10.1017/S0007114507381403.. 2022年6月6日閲覧。
  6. ^ Bioavailability and kinetics of sulforaphane in humans after consumption of cooked versus raw broccoli”. J Agric Food Chem . 2008 Nov 26;56(22):10505-9. doi: 10.1021/jf801989e.. 2022年6月6日閲覧。
  7. ^ 非臨床試験 - 薬学用語解説 - 日本薬学会”. www.pharm.or.jp. 2022年3月19日閲覧。
  8. ^ Fahey, J. W.; Haristoy, X.; Dolan, P. M.; Kensler, T. W.; Scholtus, I.; Stephenson, K. K.; Talalay, P.; Lozniewski, A. Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 2002, 99, 7610–7615.
  9. ^ どんな論文が本当に治療効果を証明しているのか?”. 大須賀覚 (2019年6月20日). 2022年3月19日閲覧。
  10. ^ その情報は「確かな情報」ですか?”. 国立健康・栄養研究所. 2021年7月30日閲覧。
  11. ^ van Die, MD; Bone, KM; Emery, J; Williams, SG; Pirotta, MV; Paller, CJ (April 2016). “Phytotherapeutic interventions in the management of biochemically recurrent prostate cancer: a systematic review of randomised trials”. BJU Int. 117 (S4): 17–34. doi:10.1111/bju.13361. PMC 8631186. PMID 26898239. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8631186/. 
  12. ^ Broccoli sprouts: an exceptionally rich source of inducers of enzymes that protect against chemical carcinogens”. Proc Natl Acad Sci U S A . 1997 Sep 16;94(19):10367-72. doi: 10.1073/pnas.94.19.10367.. 2022年6月6日閲覧。
  13. ^ アメリカでいま最もホットな新食材・食べ方術:野菜の新芽「スプラウト」”. 日本食糧新聞 (2010年10月10日). 2022年6月6日閲覧。
  14. ^ 医薬品的効能効果を標ぼうしない限り医薬品と判断しない成分本質(原材料)リスト (PDF)”. 厚生労働省. 2021年7月26日閲覧。
  15. ^ 「明らか食品」とは? (PDF)”. 北海道薬剤師会. 2021年7月25日閲覧。
  16. ^ 誇大表示の禁止”. 東京都福祉保健局. 2021年8月2日閲覧。
  17. ^ 健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について (PDF)”. 消費者、 (2016年6月30日). 2021年7月23日閲覧。
  18. ^ 医薬品的な効能効果について”. 東京都健康福祉局. 2021年7月23日閲覧。
  19. ^ a b c スルフォラファン、届出食品の科学的根拠等に関する基本情報(一般消費者向け)”. 消費者庁. 2022年6月6日閲覧。
  20. ^ a b c 健康成人の肝機能に対するブロッコリスプラウト抽出物含有サプリメントの有効性検証―多施設無作為化二重盲検プラセボ対照並行群間比較試験―”. 薬理と治療 Volume 46, Issue 1, 81 - 95 (2018). 2022年6月6日閲覧。

関連項目[編集]

外部リンク[編集]