ジャヴィット・チャーラル

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ジャヴィット・チャーラル
国務大臣
任期
1991年 – 1993年
個人情報
生誕1944年
ギリシャの旗 ギリシャコモティニ
国籍トルコの旗 トルコ
政党正道党

ジャヴィット・チャーラル(Cavit Çağlar、1944年 - )は、ギリシャコモティニに生まれたトルコ人実業家政治家

1991年に、正道党 (DYP) から立候補してトルコ大国民議会の議員となり、国有銀行を担当する国務大臣として内閣英語版第51代英語版第52代英語版)の一員となった。1996年にDYPを離党したが、その後も1999年まで、無所属のまま議員を務めた。スュレイマン・デミレル大統領の政治的復権を、資金の面で大きく支援していた[1]2004年、チャーラルは銀行不正に関わったとして、3年10か月の有罪判決を受けた。

生い立ち[編集]

チャーラルは、ギリシャコモティニトルコ人の一家のもとに生まれ、まだ学校に通っている間にトルコへと移り住んだ。15歳の時に父親が死去したため、家計を支えるため学業を離れた。ブルサで織物商を営んでいたおじの下で、織物の事業に入った。おじの支援を受け、また国家からの融資制度を利用し、チャーラルはやがて大規模な工業と商業にまたがるグループであるネルギス・ホールディング (Nergis Holding) を築き上げ、1996年にはグループの総売上高が10億ドルほど、輸出額は2億ドルほどに達した。事業の中核は繊維関係であったが、1996年の時点までにマルマラ海周辺における観光関連施設の開発など不動産事業への大規模な投資も展開し、さらに出版事業や放送事業にも進出して、ニュース・チャンネルNTVを創設するなどした[1]

経歴[編集]

1996年、ネルギスは、チュクロヴァ・ホールディング英語版が所有していたインターバンク英語版の持分の大部分を取得した[2]1997年12月、エティバンク英語版が民営化され、チャーラルとディンチ・ビルギン英語版が共同で所有するメディア=イペク・ホールディング (Medya-Ipek Holding) が1億5500万ドルでこれを取得し[3]1998年9月にはチャーラルの織物生産への10億ドルの投資を祝いデミレルが新工場の始業式をおこなった[4]。この間、1998年2月には、アラティン・チャキジ英語版の下で動いていたグループが、銀行民営化との絡みで、チャーラルの暗殺を企てていたことが、警察によって明らかにされた[5]

1999年1月7日、当時ネルギス・ホールディングが持分の過半をもっていたインターバンクが、トルコ預金保険機構英語版 (TMSF) に移譲された[6]。この銀行は、後にエティバンクと合併したが、程なくして清算された[7][8]。同じ1月のうちに、NTVドギュス・グループ英語版に売却された[9]。1999年6月には、1998年に行われていたインターバンクからネルギス・ホールディングへの資金移動が、同一グループ内の資金移動の法的規制の上限をはるかに超える6億5千万ドル超の金額に達していたとして、検察が追及を始めた[10]。ネルギスのインターバンクへの負債は、合わせて11億ドル以上とも言われた[10]2001年1月、トルコ当局は、740万ドルの事業資金貸付を個人的目的に使ったとしてチャーラルの逮捕状を出した。チャーラルは4月にニューヨークで逮捕され、ニューヨークの裁判所が500万ドルの保釈金額を承認しなかったため、トルコに帰国して裁判を受けることに同意した[11][12][13]

2004年、チャーラルは、インターバンクに関する負債として、TMSFへ16億ドルを支払うことに合意した。その支払いを継続できなくなると、彼の所有する他の企業が差し押さえられ、例えばブルサで発電事業をおこなうBİSエネルギー (BİS Enerji) の50%の持分がその対象となった[14]。複数のホテルや、ヘリコプター、メディア関連施設等も差し押さえられ、ネルギス・ホールディングの織物関係の企業も財務上の困難に陥り、2008年には785人の従業員が3か月以上の無給の一時解雇を強いられた[15]。返済の滞りは4500万ドルを超え、2008年にはイェシム・テキスタイル (Yeşim Tekstil) がハルク銀行()に差し押さえられた[16]。2008年10月、チャーラルは、残っていた織物関係の事業すべての売却に同意した[17]

2004年、チャーラルは、インターバンクの破綻に関わる銀行不正の罪で懲役3年10か月の有罪判決を受けた[18][19]。当初、チャーラルは、2002年にはいったん無罪判決を得ていたが、政府側が上訴していた[20]

脚注[編集]

  1. ^ a b Turkish Daily News, 8 January 1997, Turkey's first 24-hour TV news channel begins broadcasts
  2. ^ TBB, Historical Data about Closed Banks - tbb.org.tr Archived 2014-12-05 at the Wayback Machine.
  3. ^ Turkish Daily News, 3 December 1997, This time, Cavit Caglar buys Etibank
  4. ^ Caglar prepares to activate an investment of $1 billion
  5. ^ Police uncover plan to assassinate businessman
  6. ^ Turkish Daily News, 9 January 1999, Interbank taken over by Central Bank
  7. ^ Turkish Daily News, 17 January 1999, The Week in Perspective
  8. ^ Turkish Daily News, 19 June 2004, TMSF reaches agreement with former owners of two failed banks
  9. ^ Turkish Daily News, 13 January 1999, Dogus Group buys NTV
  10. ^ a b Turkish Daily News, Interbank Fraud Case Entangles Former Politicians
  11. ^ Turkish Daily News, 30 April 2001, DGM imprisons former minister pending trial
  12. ^ Turkish Daily News, 22 April 2001, Caglar agrees to waive extradition
  13. ^ Turkish Daily News, 20 April 2001, US court rejects Caglar's offer to post $5 mln bail
  14. ^ Turkish Daily News, 19 October 2009, Çağlar's plant appetizes energy giants
  15. ^ Turkish Daily News, 28 March 2008, Nergis workers face further unpaid leave
  16. ^ Turkish Daily News, 4 January 2008,Yeşim Tekstil up for sale
  17. ^ Turkish Daily News, 8 October 2008, Cavit Çağlar's companies up for sale
  18. ^ Turkish Daily News, Former minister sentenced for bank fraud
  19. ^ Turkish Daily News, 15 April 2005, Former minister Çağlar's sentence upheld
  20. ^ Turkish Daily News, 5 December 2002, Caglar acquitted after four-year trial

外部リンク[編集]