サラマンダー (妖精)

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フランソワ1世の居城シャンボール城のサラマンダーのレリーフ
ウィーン写本」(6世紀)より、サラマンダー
動物寓意譚」の写本(14世紀)より、サラマンダー

サラマンダーsalamandra)は、四大精霊のうち、火を司る精霊妖精(elementals)である。サラマンデルサラマンドラとも呼ばれる。手に乗る位の小さなトカゲもしくはドラゴンのような姿をしており、燃える炎の中や溶岩の中に住んでいる[1]。炎を操る特徴からファイアー・ドレイクと同一視されることもある。

概要[編集]

サラマンダー(ファイアサラマンダー)は、古代ヨーロッパでは火の中で生きることができる生物だと考えられていた。体温があまりに冷たいため火を寄せ付けず、あるいは火を消し去るのだという。薪の隙間に入り込んでいたサラマンダーが、薪ごと火にくべられ、体液が多いためすぐには焼け死なずに逃げ出す様子からそう信じられたという。アリストテレスプリニウスのような古代の学者もそのように記述したため、実験によっていずれ焼け死ぬことを確認した者が複数いたにもかかわらず、中世を通じてこの迷信は続いた。18世紀に到ってもそのように述べた書物が出版されている。

さらには火を燃え上がらせる霊能を持つともされ、ゾロアスター教徒は聖火を高く燃え上がらせるためにサラマンダーをくべた。16世紀にパラケルススは四大精霊中の火の精霊をサラマンダーとした。それまでは人間型、特に女性の姿の火精という観念もあったが、これ以降は火の精はトカゲあるいはサンショウウオの形という考えが一般的になった。ただしパラケルスス自身は四大精霊は人間に近い形と考えていた。

象徴としてのサラマンダーは、苦難に負けずに貫き通される信仰や熱情にとらわれない貞節、善なる火を燃え上がらせ悪なる火を消し去る正義を表すとされた。

紋章学では火のように燃え盛る勇猛や豪胆を意味する。初期の紋章では炎に囲まれた犬のような描写をされていたが、時代が下るにつれ現実のサラマンダーやトカゲのように描かれるようになった。フランス王フランソワ1世は「Nutrico et extinguo(我は育み、我は滅ぼす)」というモットーと共にサラマンダーを己の紋章とした。

石綿で作られた燃えない布が東方からもたらされると、ヨーロッパ人はそれをサラマンダーの毛から織られたものと考えた。

また、サラマンダーは恐ろしい毒をもつと過大評価された。木の中に入り込んだだけで果実を致死性の毒物に変え、その止まっていた石の上に置いたパンを食べただけでも命に関わるという。そのように強力な毒をもつからには強力な薬効もあるだろうと考えられ、強壮剤や催淫剤、脱毛剤などになるとも考えられていた。

脚注[編集]

  1. ^ 『モンスター・コレクション 改訂版 上』1996年、298-304頁

参考文献[編集]

関連項目[編集]