ゴードン・ベル賞

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ナビゲーションに移動 検索に移動

ゴードン・ベル賞 (英語: Gordon Bell Prizes) は、高性能計算(HPC)分野における、HPCアプリケーションの実性能と計算科学の成果に対し授与される賞で、ACMによる賞のひとつである。毎年秋に開催されているHPC分野のカンファレンスである、Supercomputing Conference (SC)にて発表・授与される。

概要[編集]

ゴードン・ベル (Gordon Bell) がHPC分野の推進のために1987年に創設した賞で、基本的には、計算科学のうちでも特に科学や工学の具体例で実際に意味がある(かつ、大規模な)数値計算での最高速の実現に対して[1]賞が与えられる。TOP500で集計される、LINPACK(HPL)やHPCGなどが、そういった計算に使われるライブラリのコードによるベンチマーク(大規模な連立一次方程式を解く速度)であるのに対し、より現実の成果を重視していることに特徴がある。

一説には(松岡聡によると)、アムダールの法則を信じるならば、並列化による性能向上は「解きたい問題が必要とする計算のうちどれだけが並列化可能か」という点が支配的であるわけだが、アムダール本人をはじめ[2]、Karp[3]や、シーモア・クレイなどの錚々たる面々が、それを理由に超並列化に悲観的だったことから、(超並列化の実用性への)チャレンジとして設けたコンペティションに始まるものである。[4]

ハイパフォーマンスコンピューティングを科学分野に適用した価値の高い成果と、その際のシミュレーションの高性能の達成を中心とした計算科学・計算機科学的成果を総合評価して、プロジェクトとその関係者に与えられる。応募論文の中から審査で最終選考対象が決まり、11月のSupercomputing Conferenceにおけるプレゼン発表を経て本賞の受賞者が決まる。本賞の部門は以下の三つである[5]

  • ピーク性能賞 (Peak Performance): シミュレーションの際に最高性能を出した最終選考対象
  • 価格性能賞 (Price/Performance): 実アプリケーションにおいて高いコストパフォーマンスを達成した最終選考対象
  • 特別賞 (Special Achievement): ピーク性能賞に最高性能は及ばないが、画期的な手法により実アプリケーションにおいて目覚ましい性能向上を達成した最終選考対象

その他、各部門にて次点賞として奨励賞(Honorable Mention)が与えられることもある。ただし、価格性能賞は2011年は該当なしであった[6]

日本で多く受賞したプロジェクトやシステムはGRAPE地球シミュレータがある[7]。最近の日本の本賞の受賞システムは2009年長崎大学工学部DEGIMAクラスタ(価格性能賞)[8]2011年における理化学研究所スーパーコンピューター(ピーク性能賞)[9]、および東京工業大学スーパーコンピュータTSUBAME2.0(特別賞)[10]がある。

受賞一覧[編集]

ゴードン・ベル賞の受賞対象は以下の通り(本賞のみ。奨励賞(Honorable Mention)は除く)。各章の受賞対象数は決まっておらず変動する。

ゴードン・ベル賞の受賞対象
受賞論文 備考
2011[11] 最高性能賞 による100,000原子シリコン・ナノワイヤの電子状態の第一原理計算(理化学研究所、他)[12]
特別賞 TSUBAME2.0スパコンにおける樹枝状凝固成長のフェーズフィールド法を用いたペタスケール・シミュレーション(東京工業大学 青木尊之、他)[13]
2010[14][15] 最高性能賞 Petascale Direct Numerical Simulation of Blood Flow on 200K Cores and Heterogeneous Architecture(ニューヨーク大学オークリッジ国立研究所、他)
2009[16][17] 最高性能賞 Enabling High-Fidelity Neutron Transport Simulation on Petascale Architectures(オークリッジ国立研究所 M.Eisenbach、他) Jaguarを使用
価格性能賞 TFlops Hierarchical N-body Simulations on GPU with Application in both Astrophysics and Turbulence(長崎大学 濱田剛、他)

参照[編集]

  1. ^ 牧野: スーパーコンピューティングの将来 - 33. GRAPE の開発---GRAPE-4まで (2006/11/4) 2017年12月20日閲覧。
  2. ^ アムダールがIBMを去った理由の一つにLSIの採用という新規性が受け入れられなかったという点があるように、基本的にはアムダールは先進を取るタイプなのだが、後の富士通との共同開発では、富士通側がマルチプロセッサ化に意欲的だったのに対し、アムダールは否定的だったという。
  3. ^ 「チューリング賞受賞者で、アルゴリズム理論学者のアラン・カープ」とあるのだが、アラン・カープ(Alan H. Karp(IBM))はチューリング賞を受賞しておらず、チューリング賞を受賞しているのはリチャード・カープで、そのどちらかだと思われる。
  4. ^ Satoshi Matsuoka‏ (@ProfMatsuoka). "因みにゴードン・ベルが今やACM賞となった自分の名前のコンペを始めたのは、(計算機のノーベル賞たる)チューリング賞受賞者で、アルゴリズム理論学者のアラン・カープがアムダールの法則故に超並列処理に否定的で、シーモア・クレイも同様であり、それのチャレンジとして設けたものだ(続く)" 2014年11月23日, 18:15 (JST). Tweet.
  5. ^ http://www.sc2000.org/bell/ SC2000 GORDON BELL AWARDS
  6. ^ SC11 - Gordon Bell賞は日本の「京」とTSUBAMEチームがダブル受賞 マイナビニュース、2011年11月21日。
  7. ^ 地球シミュレータを用いた15.2テラフロップスの地磁気ダイナモシミュレーション
  8. ^ http://www.nagasaki-u.ac.jp/main/gakujutsu/2009/gaku20091126.pdf GPU クラスタによる高性能計算技術の実証:長崎大学濱田剛テニュアトラック助教らのGPUクラスタによる計算がゴードン・ベル賞を受賞
  9. ^ http://www.riken.jp/r-world/info/info/2011/111118/index.html 京速コンピュータ「京」による成果がゴードン・ベル賞を受賞-実アプリケーションで実効性能3ペタフロップスを達成-2011年11月18日
  10. ^ http://www.gsic.titech.ac.jp/node/513 GSIC 青木教授の研究グループがスパコンのゴードンベル賞・特別賞を受賞
  11. ^ SC11 Awards
  12. ^ 京速コンピュータ「京」による成果がゴードン・ベル賞を受賞(理化学研究所)
  13. ^ GSIC 青木教授の研究グループがスパコンのゴードンベル賞・特別賞を受賞!
  14. ^ SC10 Awards
  15. ^ SC10 - 浜田、似鳥組がGordon Bell賞のHonorable Mentionを獲得
  16. ^ SC09 Awards
  17. ^ 【SC09】科学技術計算の最前線 - Gordon Bell賞

関連項目[編集]

外部リンク[編集]