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クロモンツキ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
クロモンツキ
保全状況評価[1]
LEAST CONCERN
(IUCN Red List Ver.3.1 (2001))
分類
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 条鰭綱 Actinopterygii
: スズキ目 Perciformes
亜目 : ニザダイ亜目 Acanthuroidei
: ニザダイ科 Acanthuridae
: クロハギ属 Acanthurus
: クロモンツキ A. nigricauda
学名
Acanthurus nigricauda
Duncker & Mohr, 1929[2]
英名
epaulette surgeonfish

クロモンツキ(学名:Acanthurus nigricauda、英名:epaulette surgeonfish)は、ニザダイ科に分類されるの一種。インド太平洋に分布する。

分類と名称[編集]

クロモンツキは、1929年にドイツの動物学者であるPaul Georg Egmont DunckerErna Mohrによって Acanthurus gahhm の亜種として初めて正式に記載され、タイプ標本はパプアニューギニアビスマルク諸島にあるニューアイルランド島北東のセント・マタイアス諸島ムサウ島から採集された[3]。1987年にJohn Ernest Randallによって独自の種とされた[4]

英名はepaulette surgeonfish、black-barred surgeonfish、eye-line surgeonfish、shoulderbar surgeonfish、white-tail surgeonfish、blackstreak surgeonfishがある[5]。種小名は「黒い尾」という意味で、当時亜種の関係とされていた A. gahhm と比べて尾柄が暗褐色であることに由来する。ただし、体色は変異が大きい[6]

分布と生息地[編集]

東アフリカマダガスカルからトゥアモトゥ諸島南日本からオーストラリア北部・東部、ニューカレドニアまで、インド洋から太平洋中部までの熱帯から亜熱帯海域に分布する[7]。砂底や岩場、ラグーンサンゴ礁の斜面など、水深約30 mまでの場所に生息する。同属の他のほとんどの種とは異なり、サンゴの上に生息することはめったにない[5]

形態[編集]

本種と混同されていた Acanthurus gahhm

体は側扁した楕円形で、全長は最大40 cmに達する。頭部の輪郭は凸型で、目はかなり突き出ており、目のすぐ前に2対の鼻孔がある。背鰭は9棘と25 - 28軟条から、臀鰭は3棘と23 - 26軟条から成る。尾鰭は三日月形である。体は小さな鱗で覆われ、滑らかな外観をしており、側線は不明瞭である。頭部は通常、体よりも青白く、体は均一な色合いだが、気分によって、淡い灰色から暗褐色、またはほぼ黒まで体色が変わる[5]。目の後ろには太い暗色斑が入り、鰓蓋まで伸びている。尾柄にある一対の鋭い骨質板の前には細い黒色斑がある。A. gahhm とはこの黒色斑の長さで判別できる。背鰭は黄色がかっており、縁には青い縁取りの黒い線があり、臀鰭は灰色で縁は青い。胸鰭はオレンジ色の基部を持ち、灰色、黄色、半透明の縞模様があり、尾鰭は基部が白く、外側は暗い青色の縁取りがある[5][7]Acanthurus tennenti とは眼後方の模様で区別できる[5]

生態[編集]

群れを作る種であり、モンツキハギなどの他種と混合した群れを作ることもある[5]。サンゴや岩の近くの砂地に生える藻類を食べるが[8]、胃の中の藻類の割合は低く、藻類の中のデトリタスを主に食べている[5]

雌雄ともに体長約15 cmで成熟する。繁殖期には大群が集まり、雌雄ともに配偶子を水中に放出する。尾柄の骨質板は非常に鋭く、尾を横に突き出すと現れ、ライバルを攻撃したり、捕食者から身を守ったりする。幼魚は成魚よりも体が短く、体高が高い。体色は濃い茶色で暗色斑は無く、尾鰭は黄色がかっていて切れ込みが無く、体長5 - 10cmになると徐々に色が変わる[5]

利用[編集]

沖縄県では食用として利用されている[9]

脚注[編集]

  1. ^ Clements, K.D.; McIlwain, J.; Choat, J.H. et al. (2012). Acanthurus nigricauda. IUCN Red List of Threatened Species 2012: e.T178017A1522347. doi:10.2305/IUCN.UK.2012.RLTS.T178017A1522347.en. https://www.iucnredlist.org/species/178017/1522347 2024年6月25日閲覧。. 
  2. ^ "Acanthurus nigricauda Duncker & Mohr, 1929". World Register of Marine Species. 2024年6月16日閲覧
  3. ^ CAS - Eschmeyer's Catalog of Fishes Acanthurus”. researcharchive.calacademy.org. 2024年6月16日閲覧。
  4. ^ John E. Randall (1987). “Three nomenclatorial changes in Indo-Pacific surgeonfishes (Acanthurinae)”. Pacific Science 41 (1-4): 54–61. https://core.ac.uk/download/pdf/5093739.pdf. 
  5. ^ a b c d e f g h Bourjon, Philippe (2019年8月8日). “Acanthurus nigricauda Duncker & Mohr, 1929” (フランス語). DORIS. 2024年6月16日閲覧。
  6. ^ Order ACANTHURIFORMES (part 2): Families EPHIPPIDAE, LEIOGNATHIDAE, SCATOPHAGIDAE, ANTIGONIIDAE, SIGANIDAE, CAPROIDAE, LUVARIDAE, ZANCLIDAE and ACANTHURIDAE”. The ETYFish Project Fish Name Etymology Database. Christopher Scharpf and Kenneth J. Lazara (2021年1月12日). 2024年6月16日閲覧。
  7. ^ a b Froese, Rainer and Pauly, Daniel, eds. (2024). "Acanthurus nigricauda" in FishBase. June 2024 version.
  8. ^ Dianne J. Bray. “Acanthurus nigricauda”. Fishes of Australia. Museums Victoria. 2024年6月16日閲覧。
  9. ^ クロモンツキ 市場魚貝類図鑑”. ぼうずコンニャク. 2024年6月16日閲覧。

参考文献[編集]

  • 岡村収・尼岡邦夫 編・監修 『山溪カラー名鑑 日本の海水魚』 山と溪谷社 1997年8月20日 初版第1刷発行 644頁 ISBN 9784635090278

関連項目[編集]