キルドーザー事件
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キルドーザー事件 | |
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場所 |
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座標 | 北緯40度5分11秒 西経105度56分11秒 / 北緯40.08639度 西経105.93639度 座標: 北緯40度5分11秒 西経105度56分11秒 / 北緯40.08639度 西経105.93639度 |
日付 | 2004年6月4日 |
標的 | スカイハイ・ニュース本社など多数の建造物 |
攻撃手段 | 重装甲のブルドーザーで建物や車両を破壊する |
武器 | コマツ製D355Aブルドーザー |
死亡者 | 1人(犯人) |
負傷者 | 0人 |
容疑者 | マーヴィン・ヒーマイヤー(当時52歳) |
動機 | コンクリート工場の建設反対運動の失敗と社会への報復 |
キルドーザー事件は、2004年6月4日にアメリカ合衆国のコロラド州グランビーにて発生した、単独犯による改造ブルドーザーを用いた大規模な建築物破壊事件である。他に車両等にも被害はあったが、いずれも人的被害を伴わなかった。犯人は改造ブルドーザーの操縦席において、拳銃で自殺した[1]。
キルドーザー(Killdozer)という名は、シオドア・スタージョンの小説「キルドーザー」(Killdozer!、1944年 邦題「殺人ブルドーザー」[2])が由来である。
事件の経緯[編集]
原因[編集]
事の発端は2000年にこの町で自動車修理業を経営していたマーヴィン・ヒーマイヤー[3]が、市役所に対して“隣接する土地にコンクリート工場が建設されると溶接工場の看板が道路から隠れる”と市の計画に反対したことから始まった[1]。
「町の景観を守ろう」というマーヴィンの建設反対運動には賛成する市民も現れ、2001年には町を相手取り訴訟を起こしたが敗訴してしまう。それでも反対運動を続けたマーヴィン達だったが、2年後の2003年に地元新聞社・スカイハイニュース社がマーヴィンを始めとする市民達を非難する記事を自社の新聞に掲載した為、反対運動に関わっていた住民達は次第に運動から離脱していき[1]、婚約し既に同居していたマーヴィンの恋人も彼の元を去ってしまった。
また、町がマーヴィンの店舗を抜き打ちで立ち入り検査し、設備の不備を理由に罰金と業務改善命令を出した。マーヴィンがこれに従わなかったため、町は彼の店に対し業務停止命令を下し、営業停止の処分とした[1]。
結局コンクリート工場は市によって建設され、更に翌年の2004年3月にはマーヴィンの父が死去し、マーヴィンは孤立し追い詰められた。こうして彼の復讐の計画が始められることとなった[1]。
ブルドーザーの改造[編集]
手始めにマーヴィンはオークションに出品されていたコマツ製D355Aブルドーザーを購入。厚さ1cm以上の鉄板とコンクリートによって外装を補強した。更にビデオカメラとモニターを6台搭載し、密閉された内部からでも外部の様子が分かるようにした。更に銃眼を数ヶ所設置し、それぞれに対物ライフルや自動小銃等を敷設して外部を攻撃できるように改造した。こうして2ヶ月後の5月末にキルドーザーが完成された[4]。
事件後に調べられたところによると、キルドーザーは内部からも溶接され、外に出られないようになっていた[5]。
暴走と結末[編集]
マーヴィンはまずキルドーザーで隣接するコンクリート工場を破壊し[1]、通報でかけつけたパトカーや停めてあった車を踏み潰しながらコンクリート工場を全壊させた後、更に町の中心街区に向かって進んだ。対処が不可能だと判断した地元・グランビー警察は、SWATの派遣を郡警察に要請した。その間にも、警官達の中にいた警察署の署長がキルドーザーに飛び乗ったが、既に溶接されていたため出入り口が見つからず、仕方なく脱出した[6]。
中心街区に到着したキルドーザーは町役場を全壊させ、次にスカイハイニュース社の社屋を破壊し、続いて町長の自宅を粉砕した後[1]、一旦郊外へと出た。その時、流れ弾が当たりラジエーターが故障し焦ったマーヴィンは、キルドーザーを工具店に突入させた。工具店の建物が崩壊して身動きがとれなくなり、キルドーザーは停止した。
マーヴィンは、SWATの隊員が周囲を取り囲もうと接近したところで、所持していた拳銃を使い、キルドーザー内部で自殺を遂げた[1]。こうしてキルドーザーの破壊活動は同日中に終息を迎えた。
破壊活動を行っていた間、キルドーザーは警察から無数の拳銃や手榴弾による攻撃を加えられたが、いずれの攻撃にも全く無傷だった[7]。
マーヴィンの遺体搬出にはクレーン・酸素・アセチレン切断バーナーを用いたが、乗車口に到達するまでに12時間かかった。
被害[編集]
グランビーの市役所やスカイハイニュース社社屋、コンクリート工場、市長宅、工具店、パトカー等7億円相当の被害がもたらされた。しかし死傷者は自殺したマーヴィンのみだった。
事件への反応とその後[編集]
多くの被害をもたらした事件であったが、かつてのマーヴィンが町の人々から自動車修理の技術を買われ、信頼されていたこともあり、また誰一人として殺害しなかったこともあって、彼の心情に対して同情的な声も多く聞かれた。死傷者を出さなかったことについては単なる偶然ではなく、マーヴィンがそのために注意を払っていたと見る者もいる。一部には、マーヴィンを英雄視する者まで現れた。彼はただの一庶民として腐敗した役所に復讐した庶民の英雄だったと考える者もいる。
また、当時事件に関係したSWATの隊員は「自宅の隣に工場ができれば誰だって怒る。なぜ考えられなかった…今でも悔やまれる」と語っている[要出典]。
キルドーザーは、2005年4月19日に、解体されスクラップになったと発表された。
関連項目[編集]
脚注[編集]
- ^ a b c d e f g h アンドレイ・ズビャギンツェフ 2014, *1.
- ^ 井上晴樹 2007, p. 392.
- ^ w:Marvin Heemeyer、1951年10月28日 - 2004年6月4日
- ^ Liam Llewellyn 2018, p. 70.
- ^ Liam Llewellyn 2018, p. 74.
- ^ Liam Llewellyn 2018, p. 13.
- ^ Liam Llewellyn 2018, p. 149.
外部リンク[編集]
- CBS - Dozer Rampager Dead(英語)- キルドーザー事件を報じた記事
- Gambles Store(英語)- キルドーザー事件のターゲットのひとつとなった店舗 - ウェイバックマシン(2001年9月30日アーカイブ分)
- 事件時の映像 - YouTube - ディスカバリーチャンネル
- 井上晴樹 (2007). 日本ロボット戦争記 1939~1945. NTT出版. p. 392. ISBN 9784757160149
- アンドレイ・ズビャギンツェフ (2014年). “キーワード|映画『裁かれるは善人のみ』オフィシャルサイト”. 2021年12月31日閲覧。
- Liam Llewellyn (2018). Malice. L.L. Press. p. 70. ISBN 9780999843208