エマージング

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エマージング』は、外薗昌也によるウイルスパニックを題材にした漫画作品。講談社の『週刊モーニング』にて2012年に連載された。監修は中原英臣

あらすじ[編集]

新宿の路上である男が突如吐血して変死した。その死体は死後3日を経過したかの様に壊死しており、検死をした小野寺と関口はこれをウイルス性の感染症と推測する。

一方、事件の場に居合わせた女子高生岬あかりの身にも異変が起きていた。感染経路も治療法も未知な新興ウイルスエマージングウイルス)が日本を襲う。東京に現れたこのエボラ出血熱に似た伝染病に対し、ワクチンも治療薬も存在せず対応のしようがなく、報道が恐怖心を煽り、国民はパニックとなる。

登場人物[編集]

岬あかり
高校生。同級生の男子生徒・大島と交際し、友人にも恵まれて充実した日々を過ごしていたが、山田の変死現場に遭遇してしまう。
大島
あかりの高校の同級生でサッカー部員。大柄な体格。
関口 薫
病理医で山田氏の遺体の病理解剖を依頼される。
小野寺 周二
山田氏の遺体を見て咄嗟に出血熱の可能性を考慮した優秀な医師。
山田 裕一
路上で変死した会社員の男性。その日も会社に出勤して仕事をしていたが、体調が悪そうな様子[1]から同僚らに早退と病院への受診をすすめられて会社を早退した後、病状が悪化し、路上で吐血して変死する。日本出血熱の第一患者とされる。

用語[編集]

エマージングウイルス
最近になって突然人間界に現れた「新興感染症」のことを指す。本作のエマージングウイルスはエボラ出血熱に似た出血・溶解が見られ、非常に激しい症状が数日で現れるが、このような激しい出血症状がみられるエボラウイルスの属するフィロウイルス科とは異なる球形のウイルスとなっている。この未知のエマージングウイルスによる出血熱は最終的に「日本出血熱」と命名される。
日本出血熱
本作の未知のウイルスによる出血熱。終盤に、感染終息後にこの名がつけられたことが語られている。
日本出血熱ウイルスは血液内で異常な増殖を見せ、感染から発症までは非常に早く、早くて感染したその日、遅くても翌日から目の充血が始まり、下痢や高熱などの風邪・インフルエンザ様症状を伴って目の奥の痛みが現れ、体内でコラーゲンの分解による肉体の肥大化・軟化が進み、むくんでくる。ここまで発症からわずか2日のことである。悪化すると目や歯肉からの出血が見られ、血管が浮き出る。また口からの噴血が時々起こる。コラーゲンの溶解は難敵で、腕を強く抑えると皮膚が剥け落ち、また血管が非常に破れやすくなるため注射も打てず、治療には肉体の損壊を伴うことがある。朦朧としながらも最後まで意識は保たれるようだが最終的に「炸裂」を起こし、激しい全身からの出血と共に失血死に至る。
致死率は10%程度と思われる[2]。発症率は感染者の約半数で、重篤患者の約2割が死に至る[3]。空気感染が一時疑われパニックを誘ったが、血液などウイルスを含む体液を介した接触感染が感染経路であり、仮に血液が付着しても傷口が無ければ感染しない。
抗体を持つ者が見つかったことにより血清治療で劇的な効果を見せ[4]、感染爆発は収束する(流行開始から約3か月後に終息宣言が出された。最終的な感染者数などは不明)。ただし第一感染者の山田がどこでウイルスに感染したのかは最後まで分からなかった[5]
エボラ出血熱
フィロウイルス科エボラウイルズ属のウイルスによる感染症で、第一感染者や第二感染者において日本出血熱同様の激しい出血症状を伴い、最高で90%にも及ぶ致死率を示す出血熱[6]。死因は失血死(出血性ショック)に加えて多臓器不全などがある。
感染していくにつれ症状の激しさや致死率は低下し[7]、またよく語られるような「炸裂」が見られるのは一部の患者に限られる。
出血熱には複数存在するが、出血症状が激しく、致死率が特に高いのは「エボラ出血熱」と「マールブルグ出血熱」の2つである。また、BSL4に指定され、日本でも一塁感染症に指定されている出血熱はこの2つに加えて「クリミア・コンゴ出血熱」「南米出血熱」が存在する。日本出血熱ウイルスの症状はエボラ出血熱をモデルにしていると思われるが、ウイルスの形状はクリミア・コンゴ出血熱ウイルスに近い。
エボラ出血熱には抗ウイルス薬「アビガン」が存在し、一定の効果を上げている。また、血清治療やワクチンなど様々な治療方法が確立の手前まで来ており、近い将来、治療法が確立されるとされ、その際の致死率は大幅に下がると予想される。
国立伝染病研究所
国立感染症研究所をモデルにした研究施設。バイオセーフティーレベル4(BSL4、作中では「BL4」)施設を持ちながら住民反対により稼働せず、エマージングウイルスが仮にエボラウイルスと同様のBL4に分類されればBL4施設を持つアメリカのCDC等に検査・研究をすべて委託することになり、迅速な対応がとりにくくなるという問題を抱えている[8]

脚注[編集]

  1. ^ 当初は風邪のような症状だった
  2. ^ 2巻の「130以上の感染者」「10名以上の死者」の情報から。ただし、130名の感染者の情報の直前に「15名の重篤患者のうち特に酷い3名が恐らく死ぬ」との記述から、発症時の致死率は2%程度という予想もできるが、作中において時間がどのように進んでいるかが曖昧で、正確な予想はできない。
  3. ^ 「重篤患者が15名 うち3名が特に酷い」「おそらくこの3名は助からない」の記述から。
  4. ^ ウイルスパニック作品でよく用いられる抗体を使用した治療法だが、通常、血清の量産には数週間から3か月程度を要するため、数日での感染終息に繋がることはまずない。
  5. ^ 未知の無害なウイルスが山田氏の体内で突然変異を起こし病原性を獲得したという想像で締めくくられている。
  6. ^ ウイルスの型により致死率は異なる。もっとも致死率が高いとされるザイールエボラウイスルの小規模な患者発生のケースでは致死率88%を記録したことがある。
  7. ^ 疑い例含め3万人近い感染者を出した2014年のザイール・エボラウイルスの流行では40~70%とされた。
  8. ^ なお実際の国立感染症研究所は、本作の掲載年の後となる2014年の西アフリカでのエボラ出血熱の大流行を受け、国の判断でBSL4施設を稼働させている。