インジェラ

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インジェラと数種類の煮込み。エチオピアとエリトリアにおける代表的な料理。
インジェラを焼くベタ・イスラエルの女性(1996年)

インジェラアムハラ語እንጀራ)は、エチオピア主食として食べられている食品である[1]

起源は古く、史料の中には紀元前100年にはすでに存在していたと記すものもある[2]。本来はエチオピア北部の高原地帯の食べ物であり、19世紀末のエチオピア帝国の拡大に伴ってエチオピアの南部地域にも広まっていった[3]

製法[編集]

イネ科穀物であるテフの粉を水で溶いて3日かけて発酵させ、巨大な鉄板で薄いクレープ状に片面だけ焼き上げてインジェラは作られる[4]。発酵した生地にできる黄色い上澄みは「イルショ」と呼ばれ、一部は次にインジェラを作る時に再利用される[2]トウモロコシソルガムからもインジェラを作ることができるが、テフで作ったものの柔らかな手触りと独特の食感が特に好まれている[3]。エチオピアの一般の家庭では、テフにトウモロコシと大麦の粉を混流したものが使われる[4]

焼き上がった生地に空いた多くの穴は「アイン(目)」と呼ばれ、インジェラには欠かせないものであり、穴の数の多さがインジェラの出来を評価する要素になっている[3]。焼き上がりの色が薄いインジェラが上等のものとされるが、濃い色に焼き上がったたインジェラの方がより豊かな風味を持つ[4]。完成したインジェラには発酵食品独特の匂いと酸味があり[3]、さまざまな種類のワット唐辛子で煮込んだ辛いシチュー)を付けて食べる。インジェラは朝昼夜の三食以外に間食としても食べられており、その際にはバレバレ(バルバレとも)という辛味の強い調味料などを付けて食べられる[5]。テフで作ったインジェラの独特の食感は、スポンジタオルにも例えられている[4]。発酵にかけた時間が短ければ芳しい香りがする甘い生地に仕上がり、農繁期などの時間が無い場合に作られる[2]。逆に発酵にかける時間が長すぎると酸味が強くなり、一般には失敗とされるが、酸味の強いインジェラを特に好む者もいる[2]

海外のエチオピア料理店などでも供される。完成度には温度・湿度が影響するため、発酵させる日数は見た目や味の好みのほか、その土地の気候や季節により異なる。冬場の日本では1週間程度かかるという[6]

食べ方[編集]

完成したインジェラは冷ました状態で食され、植物を編んで作った台(メソブ、マサブ)に載せて供される。インジェラは料理を載せるの代わりにも使われ、載せていた料理をすべて食べた後、皿の代わりにしていたインジェラが食べられる[4]。こうしたインジェラの食べ方を見た人間からは「ナイフとフォークの代わりにもなるパン」に例えられることもある[7]。多くの人が大きな盆を囲んで料理を食べる時には、親愛の感情を示すために互いにインジェラを食べさせあう習慣があり、この習慣は「マグロス」と呼ばれている[3]。親族や家族の集まりでは、最年長者がインジェラを小さくちぎり、順番に与えるしきたりである[6]

脚注[編集]

  1. ^ 朝日百科 1984, pp. 136-137.
  2. ^ a b c d 鈴木 1969, pp. 121-122.
  3. ^ a b c d e 岡倉 2007, pp. 36-42.
  4. ^ a b c d e アルバーラ 2013, pp. 89-93.
  5. ^ 小川 2004, p. 209.
  6. ^ a b 日本の中の世界/「新年」に食べる(2)帽子かぶった鶏煮込み毎日新聞』朝刊2019年1月3日(2019年1月11日閲覧)。
  7. ^ 小川 2004, p. 205.

参考文献[編集]

  • 鈴木秀夫『高地民族の国エチオピア』古今書院〈リージョナル・ブックス〉、1969年。NCID BN03782723
  • 朝日新聞社 編『世界の食べもの』5、朝日新聞社〈朝日百科〉、1984年3月、合本。NCID BN10816235
  • 小川了『アフリカ』農山漁村文化協会〈世界の食文化〉、2004年10月。ISBN 4-540-04087-1
  • 岡倉登志『エチオピアを知るための50章』明石書店〈エリア・スタディーズ〉、2007年12月1日。ISBN 9784750326825
  • ケン・アルバーラ『パンケーキの歴史物語』関根光宏訳、原書房〈お菓子の図書館〉、2013年9月25日。ISBN 9784562049424