イスカンダル
イスカンダル(アラビア語: إسكندر, ラテン文字転写:Iskandar, IPA:/ʔis.kan.dar/)[1]は、男性名アレクサンドロスのアラビア語ならびにアラビア語に由来する複数地域での呼称である。
イスラーム圏を中心にアラビア語由来の男性名としても用いられており、ペルシア語ではエスカンダル(ペルシア語: اسکندر, 中世での発音:Iskandar(イスカンダル)、現代での発音:Eskandar(エスカンダル))[2]、トルコ語ではイスカンダル(トルコ語:İskender, Iskender, 日本語での慣用カタカナ表記:イスケンデル)[3][4]などと発音されている。
概要
[編集]アラビア語化と音位転換・異分析
[編集]アラビア語では、
- ギリシア語人名 Αλέξανδρος (アレクサンドロス) 由来の外来人名として ألكسندر(Alaksandar, アラクサンダル)とつづるべきところを、音位転換でkとsが入れ替わりألسكندر(Alaskandar, アラスカンダル)になった
- さらに、語頭の أل がアラビア語における定冠詞のアルと同一であるかのように扱われる(異分析)ことで أل(Ala-, アラ)が除去され、سكندر(skandar, スカンダル)となった
- 続けて、アラビア語で禁じられている子音連続による開始を回避するために改めて声門破裂音と母音イである إ(ʾi , イ)を語頭に付加し、إسكندر(Iskandar, 実際の発音:ʾiskandar, イスカンダル)となった
のが人名アレクサンダーの中東における呼称「イスカンダル」の由来だとされている。[5][6]
アラビア語圏では الإسكندر(al-Iskandar, アル=イスカンダル)と إسكندر(Iskandar, イスカンダル)両方の形が用いられており、特に後者の「イスカンダル」は男性名としての命名で使われている。
しかしながら中世の学者アッ=タブリーズィー(التبريزي, al-Tabrīzī)などは一部外来固有名詞の語頭にある أل は本来除去せずに الإسكندر(al-Iskandar, アル=イスカンダル)のまま使うべきであり、إسكندر(Iskandar, 実際の発音:ʾiskandar, イスカンダル)のみとするのは大衆の不正確な慣用(لحن, laḥn, ラフン)だとしている。[7]
関連した地名
[編集]上記の手順によってアラビア語化された الإسكندر(al-Iskandar, アル=イスカンダル)の関連語としては、マケドニア王アレクサンドロス3世(アレクサンダー大王)が各地に建設したギリシア風都市アレクサンドリアのアラビア語名称 アル=イスカンダリーヤ (الإسكندرية, al-Iskandarīya ないしはal-Iskandarīyah) が挙げられる。
人物
[編集]- アレクサンドロス3世(アレキサンダー大王):中東での呼び名がアル=イスカンダルならびにイスカンダル。彼に関する伝承についてはアレクサンドロス・ロマンスを参照。
- イスカンダル・シャー - マラッカ国王(在位:1414年 - 1424年)。
- イスカンダル・ムダ - アチェ国王(在位:1607年 - 1636年)。
- イスカンダル・イブニ・スルタン・イスマイル - ジョホールのスルタン。
- アイデ・イスカンダル - シンガポールのサッカー選手、サッカー指導者。
その他
[編集]- イスカンダル (宇宙戦艦ヤマト) - アニメ『宇宙戦艦ヤマトシリーズ』に登場する架空の惑星。名前の由来は、SF設定の豊田有恒が、アレキサンダー大王の別名から名づけたと語っている[8]。
- スターシャ・イスカンダルおよびサーシャ・イスカンダルは『宇宙戦艦ヤマト2199』に登場する同惑星の人物である。
- 9K720"イスカンデル"((ロシア語:9К720 "Искандер") - ロシアで開発された短距離弾道ミサイルシステム。形式番号を省略して「イスカンデル」と呼称されることがある。
- イスカンダル・マレーシア - シンガポール近くのジョホールバル南部開発地区。
- 『Fate/Zero』の登場人物についてはFate/Zero#ライダー陣営を参照。
脚注
[編集]- ^ “Wiktionary - إسكندر”. 2024年6月12日閲覧。
- ^ “Wiktionary - اسكندر”. 2024年6月12日閲覧。
- ^ “Wictionary - İskender”. 2024年3月4日閲覧。
- ^ “Forvo - İskender”. 2024年6月12日閲覧。
- ^ المعرب من الكلام الأعجمي على حروف المعجم. دار القلم. (1990). p. 77
- ^ شفاء الغليل فيما في كلام العرب من الدخيل. دار الكتب العلمية. (1999). p. 51
- ^ حاشية الشهاب المسماه عناية القاضي وكفاية الراضي. دار الكتب العلمية. (2017). p. 158
- ^ 「解説 豊田有恒」松本零士『宇宙戦艦ヤマト (1) イスカンダル遥か』(秋田書店〈秋田文庫〉、1994年、ISBN 4-253-17017-X)p. 314。