アルナーチャラム・ムルガナンダム

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アルナーチャラム・ムルガナンダム
Arunachalam Muruganantham in California.jpeg
アルナーチャラム・ムルガナンダム(2016年)
原語名அருணாச்சலம் முருகானந்தம்
生誕 (1961-10-12) 1961年10月12日(59歳)
インドの旗 インド タミル・ナードゥ州コーヤンブットゥール
国籍インドの旗 インド
別名パッドマン - 彼をモデルにした映画のタイトルより
市民権インドの旗 インド
職業発明家社会起業家
団体Jayaashree Industries
著名な実績低コストの生理用ナプキン製造機の発明
活動拠点インドの旗 インド タミル・ナードゥ州コーヤンブットゥール
配偶者Shanthi
受賞パドマ・シュリー勲章

アルナーチャラム・ムルガナンダムタミル語: அருணாச்சலம் முருகானந்தம்英語: Arunachalam Muruganantham1961年1月7日 - )[1]は、インドタミル・ナードゥ州コーヤンブットゥール出身の発明家社会起業家である。彼は、生理用ナプキンを安価に製造できる機械を発明し、インド農村部での生理に関する不衛生な慣習に対する意識を高めるための草の根的な活動をしたことで知られている。彼が発明した機械は市販の生理用ナプキンの3分の1以下のコストで製造でき、インドの29州のうち23州で使用されている。さらに、この機械を世界106か国に広める計画を立てている[2]

彼が登場するドキュメンタリー『ピリオド -羽ばたく女性たち-』は、第91回アカデミー賞短編ドキュメンタリー映画賞を受賞した[3]。2018年のインドのドラマ映画『パッドマン 5億人の女性を救った男』は、彼の発明とその後の活動を題材としたもので、彼をモデルにした役をアクシャイ・クマールが演じた[4]

2014年、『タイム』誌の「世界で最も影響力のある100人」に選ばれた[5]。2016年、インド政府からパドマ・シュリー勲章を授与された[6]

若年期[編集]

ムルガナンダムは1961年に、インドのコーヤンブットゥールで織物職人の子として生まれた。幼いときに父親を交通事故で亡くし、それ以来、貧困の中で育った[7]。母親はムルガナンダムの学費を稼ぐために農場で働いていたが、彼は14歳のときに学校を中退した[8]。それ以降、工場で働く労働者に食料を配達したり、工作機械のオペレーター、山芋の販売代理店、農場作業員、溶接工などの仕事をして家族を養っていた[7]

発明[編集]

1998年、彼はシャンティ(Shanthi)と結婚した[9]。結婚してすぐ彼は、妻が、生理のときに使うための不潔なボロ布や新聞紙を集めていることに気がついた。外国企業製の生理用ナプキンは高価で買えないためだった[10][11]。彼は、自分で生理用ナプキンを作ることにした[12]。最初は綿のナプキンを作っていたが、妻や妹たちに拒否されてしまった。結局、彼女らは彼に協力することをやめ、彼の技術革新の被験者になることを拒否した。彼は、原価が10ルピー(14セント)なのに、最終製品はその40倍の値段で販売されていることに気づいた[2]。彼は、自分の発明品を試してくれる女性ボランティアを探したが、ほとんどの人は恥ずかしがって、月経について話そうとはしなかった。彼は血を入れた動物の膀胱を使って自分で実験を始めたが、そのような実験をしていることが村の人たちにばれ、嘲笑の的となった[13]。インドでは月経はタブー視されていたため、彼は地域社会や家族から追放されてしまった[14]。そこで、地元の医科大学の女子生徒に無料で配布し、感想を聞かせてもらうことにした。

2年後、市販のナプキンにはの樹皮のパルプから作られたセルロース繊維が使われていることを発見した[1]。この繊維により、ナプキンの形状を維持しながら経血を吸収することができたのだった[7]。外国製のナプキン製造機は3500万ルピー(49万米ドル)もした[15]。彼は、最小限の訓練で操作できる低コストの機械を考案した[16]。彼は、加工された松の木のパルプをムンバイの業者から調達した。彼のナプキン製造機は、パルプを紫外線で殺菌しながら粉砕、解繊して整形し、梱包を行った[17]。この機械のコストは6万5千ルピー(910米ドル)だった[12]

自助グループ(SHG)のメンバーとしての農村女性の集い

2006年、彼はインド工科大学マドラス校英語版(IITマドラス)で自身のアイデアを披露し、様々な助言を受けた。IITマドラスは彼の発明をインド国立発明財団の「草の根技術発明賞」に応募し、賞を受賞した[7][12]。これにより、彼は活動資金を得てジャヤアシュリー・インダストリーズを設立し、現在ではインド全土の農村部の女性にこの機械を販売している[18]。この機械は、そのシンプルさとコストパフォーマンスの良さが評価され、彼の社会的支援への取り組みは、いくつかの賞を受賞している[14]。いくつかの企業から事業化の申し出があったが、彼はそれを拒否し、女性が運営する自助グループ(SHG)にこの機械を提供し続けている[14][19][19]

ムルガナンダムの発明は、インドの女性の生活を変える重要な一歩として広く賞賛されている[20][21]。この機械は、インドの多くの女性に仕事と収入をもたらし、手頃な価格のナプキンによって、多くの女性が生理中に仕事ができるようになった[22]。ムルガナンダム自身の活動だけでなく、この分野に参入する多くの起業家が現れており[23]、中にはバナナの繊維や竹の廃棄物を利用することを提案する人もいる[21]

大衆文化において[編集]

ムルガナンダムは社会起業家として知られるようになった[24]。彼は、IITボンベイ[25]、IITマドラス、IIMアーメダバード、IIMバンガロール[1]、バーラ技術科学大学、ハーバード大学[26]など、多くの機関で講演を行っている。また、TEDでも講演している[15]

彼を取材したアミット・ヴィルマニ監督のドキュメンタリー映画『メンストラル・マン英語版』(Menstrual Man、月経男)[27][28]や、アビシェーク・サクセナ英語版監督の2017年のドラマ映画『フル英語版』(Phullu)は賞を受賞した。

著述家で映画プロデューサーのトゥインクル・カンナー英語版は、ムルガナンダムの人生を元にした小説「The Sanitary Man of Sacred Land」を執筆し、さらにこれを『パッドマン 5億人の女性を救った男』(Pad Man)として映画化した。カンナーは監督としてR・バールキを指名し、ムルガナンダムをモデルにした主役には、ムルガナンダム自身の意見を取り入れてアクシャイ・クマールが起用された[29][30]

脚注[編集]

[脚注の使い方]
  1. ^ a b c PC Vinoj Kumar (2009年8月29日). “The Pad That Does Not Whisper”. Tehelka. オリジナルの2014年4月26日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20140426201334/http://archive.tehelka.com/story_main42.asp?filename=cr290809the_pad.asp 
  2. ^ a b Venema, Vibeke (2014年3月4日). “The Indian sanitary pad revolutionary”. BBC News. http://m.bbc.com/news/magazine-26260978 2014年3月4日閲覧。 
  3. ^ The list of nominees for the 91st Academy Awards|Entertainment|Alltechnotricks.com”. Alltechnotricks.com. 2019年1月24日閲覧。
  4. ^ 安全で安価な生理用品の普及に人生を捧げた男 『パッドマン』本日公開” (2018年12月7日). 2019年1月2日閲覧。
  5. ^ The 100 Most Influential People – Pioneers: Arunachalam Muruganantham”. TIME.com (2014年4月23日). 2014年4月26日閲覧。
  6. ^ Padma Awards”. Ministry of Home Affairs, Government of India (2016年). 2016年1月3日閲覧。
  7. ^ a b c d National Innovation Foundation. “MINI SANITARY NAPKIN MAKING MACHINE A. Muruganantham”. http://nif.org.in/innovation/mini_sanitary/10 2016年6月9日閲覧。 
  8. ^ “Who is Arunachalam Muruganantham, the inspiration behind Akshay Kumar’s Pad Man?” (英語). GQ India. (2017年12月23日). https://www.gqindia.com/content/pad-man-akshay-kumar-inspiration-arunachalam-muruganantham 2020年5月7日閲覧。 
  9. ^ Arunachalam Muruganantham: The first man to wear a sanitary napkin”. 2020年10月1日閲覧。
  10. ^ “India's champion for affordable feminine hygiene”. https://www.theglobeandmail.com/news/world/indias-improbable-champion-for-affordable-feminine-hygiene/article4587288/ 2015年6月30日閲覧。 
  11. ^ Sandhana, Lakshmi (2010年8月9日). “An Indian Inventor Disrupts The Period Industry”. Fast Company. 2012年8月18日閲覧。
  12. ^ a b c Akila Kannadasan (2012年2月13日). “A man in a woman's world”. The Hindu. http://www.thehindu.com/features/metroplus/society/a-man-in-a-womans-world/article2875390.ece 
  13. ^ Letitia Rowlands (2014年3月14日). “One man's mission to improve women's lives”. Ministry of External Affairs, Govt of India. http://www.mea.gov.in/bilateral-documents.htm?dtl/23081/One+mans+mission+to+improve+to+womens+lives 
  14. ^ a b c Buncombe, Andrew (2012年6月29日). “The 'Tampon King' who sparked a period of change for India's women”. The Independent. 2012年8月18日閲覧。
  15. ^ a b TED Bangalore talk by A. Muruganantham”. 2015年6月30日閲覧。
  16. ^ Foxx-Gonzalez, Kellie (2012年6月29日). “Tampon King”. The Mary Sue. 2012年8月18日閲覧。
  17. ^ New Inventions: Jayaashree Industries”. 2012年11月21日時点のオリジナルよりアーカイブ。2012年8月18日閲覧。
  18. ^ Kumar, Vikas (2012年1月18日). “Blood, sweat & a few tears: Arunachalam Muruganantham's lessons for consumer product firms”. The Economic Times. 2012年8月18日閲覧。
  19. ^ a b Sandhana, Lakshmi (2012年1月21日). “India's women given low-cost route to sanitary protection”. The Guardian. 2012年8月18日閲覧。
  20. ^ Ramdoss, Santhosh (2012年1月31日). “Enabling Access through Low-cost Sanitary Pads: Jayashree Industries”. Think Change India. 2012年8月18日閲覧。
  21. ^ a b “Social entrepreneurship in India : Cut from a different cloth”. The Economist. (2013年9月14日). https://www.economist.com/news/business/21586328-building-business-around-solving-chronic-female-health-care-problem-cut-different 
  22. ^ Baker, Katie J.M. (2012年6月29日). “Meet India's 'Tampon King'”. Jezebel. 2012年8月18日閲覧。
  23. ^ Promoting hygiene”. 2013年9月14日閲覧。
  24. ^ Dharamsala film festival”. 2015年6月30日閲覧。
  25. ^ Esummit speakers, IITB”. 2015年6月30日閲覧。
  26. ^ Harvard India Conference”. 2015年6月30日閲覧。
  27. ^ Menstrual Man”. 2015年6月30日閲覧。
  28. ^ The first man to wear a sanitary napkin”. INKTalks. 2016年1月28日閲覧。
  29. ^ Sneha Hiro (2017年12月20日). “Twinkle Khanna: Akshay Kumar Was Not The First Choice For Padman”. Koimoi.com. 2017年12月26日閲覧。
  30. ^ Pad Man first look: After building toilets, Akshay Kumar takes on menstrual hygiene”. 2020年10月1日閲覧。

関連項目[編集]

外部リンク[編集]