アユカケ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動先: 案内検索
アユカケ(カマキリ)
カジカ科カマキリ(アユカケ).JPG
25cmほどに成長するカジカ科のアユカケ
分類
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 条鰭綱 Actinopterygii
: カサゴ目 Scorpaeniformes
: カジカ科 Cottidae
: カジカ属 Cottus
: アユカケ C.kazika
学名
Cottus kazika
Jordan and Starks, 1904
和名
アユカケ
英名
Fourspine sculpin

アユカケ(鮎掛、学名:Cottus kazika)は、カサゴ目カジカ科に属する日本固有種の魚である。カマキリとも呼ばれる。ヤマノカミと同じく「降河回遊」の生活史をもつ中型カジカ類の一種である。

概要[編集]

体長は5cmから30cm程度で鱗は無い、体色は灰褐色の地に4本の暗色横帯で、胸びれは吸盤状ではなく分離している。鰓蓋には一対の大きい棘と、その下部に三対の小さい棘を持つ。名前の由来は、鰓蓋(えらぶた、さいがい)にあるに餌となる魚(アユ)を掛けるとの伝承による。

似た生活史を有するアユと比べ流速の早い流れでの遊泳能力が劣るため、堰堤のほかアユやサツキマスサクラマスを主対象として設計された魚道での遡上も阻害されやすい[1]

「カマキリ」というと昆虫のカマキリと間違えやすいから、アユカケと呼ばれることが多い。

地方名:アラレガコ(福井県)、アイキリ、アイカギ、タキタロウ、ゴリ、ドンハチなど[2]

生態[編集]

動物食性で産卵期は冬。沿岸岩礁帯域で産卵し、卵塊は孵化するまでオスが保護をする。春に3cm程度になると川に遡上する、成熟した個体は秋に降河し産卵する。生育至適水温は、10-22℃。生存可能な限界水温は24~27℃[3]。一般に砂礫底質を好み河川の中流域に生息するが、堰堤などで遡上を阻害された個体は下流域から河口域にも生息する。幼魚期は水棲昆虫を餌とするが、成長すると魚も餌とする。1年で6-9㎝、2年で9-12㎝、3年で13-17㎝程度に成長しする。メスは産卵を終えると、オスは稚魚が孵化し卵塊の保護を終えると寿命が尽きる。

稚魚期を河口部で過ごすため、環境の悪化は生息数減少に繋がる。つまり、産業(工場)排水、家庭雑排水や農薬による水質の悪化と河口付近に建設された堰により河床が細かな砂礫及び泥質に変化すると共に平坦化し稚魚の隠れられる場所が減少することが生息数減少に拍車を掛けている[4]

天然の個体数が減少しているため、人工養殖と放流により個体数の回復を図る試みも進められている[5]

伝承[編集]

アユカケの独特の生態や呼称に関していくつかの伝承がある。

「アユカケは石に化ける」と言われる。アユカケは岩陰に隠れるとき小石模様の体色と動かない習性で石に化けたように気配を消すことが知られている。遊泳力が低いため静止して餌の魚の寄るの待ち伏せしたり、逃げる時岩に尾を岩にぴたりと沿わせ一体化し動じない様子はしばしば観察される。NHKの取材班は、アユカケに獲物が近寄ると呼吸を止め鰓蓋も動かさない行動を撮影している。[6]

アユカケは「トゲで鮎を捕まえる」とも言われ、アユカケの鰓蓋には鋭い棘があるが、これを待ち伏せたアユ等に引っ掛けて捕らえるとされる。和名「アユカケ」の由来であるが、いまのところ実際には観察されていない。

「冬に腹をみせて浮かび下る」とも言われる。霰(あられ)の降る晩に大きな腹を上にして浮かびながら川を下るため霰が腹を叩くという。地方名「あられがこ」の由来である。実際に冬に降河するアユカケは産卵を控え大きな腹をしているが、腹を見せて流下する様子は今のところ観察されていない。

分布[編集]

太平洋側は茨城県久慈川以南、日本海側は青森県深浦町津梅川以南、四国、九州に生息するが、瀬戸内海沿岸での定常的な生息は確認されていない。

北限生息域[編集]

従来生息域の日本海側北限は秋田県雄物川以南とされているが、1998年に青森県[7]での発見例が報告されている。太平洋側北限は神奈川県とされていたが、1995年の調査で久慈川での繁殖が報告されている[8]

保全状態評価[編集]

多くの自治体で「希少な野生生物」「絶滅危惧種」として登録される他、福井県九頭竜川は本種の生息地として国の天然記念物としても指定されている。

絶滅危惧II類 (VU)環境省レッドリスト

Status jenv VU.png
  • 減少種:水産庁レッドデータブック

関連項目[編集]

出典[編集]

脚注[編集]

  1. ^ 住谷 昌宏、長瀬修、木下昌樹、長良川河口堰における魚道と魚類の遡上・降下調査について 応用生態工学 Vol.5 , No.1(2002)pp.23-40
  2. ^ 塚原博:ヤマノカミの生態・生活史 九州大學農學部學藝雜誌.12 (3), pp.225-238,1952-03 九州大學農學部
  3. ^ 鬼倉徳雄ほか、カマキリ, ヤマノカミの成長および生残率に及ぼす水温の影響 水産増殖 Vol.46 (1998) No.3 P367-370
  4. ^ 高木基裕、谷口順彦、高知県におけるカマキリ, Cottus kazika の分布 水産増殖 Vol.40 (1992) No.3 P329-333
  5. ^ 田原大輔、羽田野亮、岩谷芳自、「原著論文」カマキリ人工養成魚における残留卵の出現と成熟への影響 水産増殖 Vol.56 (2008) No.1 水産増殖 p.37-43
  6. ^ NHKダーウィンが来た!生きもの新伝説
  7. ^ アユカケ(カマキリ)Cottus kazika 青森県産業技術センター
  8. ^ 久慈川におけるカマキリ (アユカケ) の出現について 茨城内水試験報33 p.72-76 (1997)

外部リンク[編集]