仙草

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  1. シソ科植物の一種(本項で詳細を記述)
  2. 不老不死などの効果をもつとされる仙薬となる植物や大型真菌。霊芝など。

仙草
分類
界: 植物界 Plantae
門: モクレン門 Magnoliophyta
綱: モクレン網 Magnoliopsida
目: シソ目 Lamiales
科: シソ科 Lamiaceae
属: メソナ属 Mesona
種: 仙草 chinensis

仙草 procumbens

学名
Mesona chinensis Benth

Mesona procumbens Hemsley

和名
センソウ(仮称。仙草は中国名)
英名
Chinese mesona

仙草(せんそう、中国語 シエンツァオ xiāncǎo)は、シソ科メソナ属の植物

概要

中国原産の一年草で、中国南部の福建省広東省江西省広西チワン族自治区などに分布する。台湾では、新竹県苗栗県桃園県などの北部の客家居住地を中心に栽培されているが、中でも新竹県関西鎮が産地として名高い[1]

中国では他に、仙人草(xiānréncǎo)、涼粉草凉粉草)(liángfěncǎo)、 薪草(xīncǎo)などの別名がある。

生態

高さは100cm程度にまで育つ。葉は対生で、長さ2~10cm、幅1~3cm程度の比較的長い卵形、先がとがり、のこぎり状の縁があり、灰緑色の斜紋が入る。茎の断面は四角く、細長く、時に蔓状となる。全株に赤褐色の粗い毛が生えている[2]。花は小さく、赤紫色。実は逆卵形で、斜紋が入る[3]

亜熱帯の、日当たり、水はけの良い、低い海抜地で、気温20-25℃以上の場所でよく生育する。

用途

仙草で作ったゼリー
仙草ゼリーとマンゴーのデザート

生薬

中国医学では涼粉草や仙舅草(xiānjiùcǎo)の名で、乾燥した地上部の葉や茎を使用する。味は甘、性は涼であり、煎じて飲むと、暑気あたり、喉の渇き、熱毒に効用があるとされる。広東省広州市増城市では仙舅草と冬瓜を煎じて、暑気あたり防止、解熱の民間薬、飲料として利用してきた[4]糖尿病高血圧風邪関節炎筋肉痛に対する治療効果がある[5]ともいわれるが、薬効が証明されていないので、日本の薬事法上は効能を書かない限り、医薬品とされない。

デザート

乾燥させて黒くなった葉や茎に重曹を少し加えて[1]煮つめて漉すと、デンプンペクチンなどの多糖類が溶出しているので[6]、冷やすと凝固して黒いゼリー状の食品ができる。干さないままの草から作ると緑色になる。これらを中国語で「仙草凍」(シエンツァオドン、xiāncǎodòng)、広東語で「涼粉」(リョンファン、leung4fan2)、客家語で「仙人粄」(シエンニンバン)、贛語で「仙草糕」(黎川方言 シエントウコウ)、閩北語で「仙人菜」(建甌方言 シンネインツェー)と称し、日本語では一般に仙草ゼリーと呼ばれている。苦みがあるので、シロップや蜂蜜をかけて食べる事が多い。暑気あたり防止効果のあるデザートとして、香港シンガポールでも人気が高く、ハネムーンデザートのように、フルーツアイスクリームと組み合わせて出す店もある。昔は、これを天秤棒で担いで売り歩く姿も見られたという。台湾や福建省では露天商が販売するのを今も見ることができる。現在は缶詰も作られており、日本でも中国食材を扱う店で売られている。自宅で作れる乾燥粉末もある。客家の「仙人粄」には固める前に小豆落花生を混ぜ入れたものもある[1]

台湾などではところてんのように細長く切り、クラッシュアイスやシロップなどと合わせて、冷たい飲み物のようにされることもある。台湾では「仙草蜜」などと称して、缶入り清涼飲料水も製造販売されている。

料理

台湾には仙草とニワトリを煮込んだ「仙草鶏」という料理がある。

伝説

客家には、夏の土用の入りの日(入伏)に仙草ゼリーを食べる習慣があり、この日に食べればひと夏の間汗疹(あせも)ができないと言い伝えられている。

広東省広州市増城市では、織姫が地上に降りてきた時に持参して、近くの鳳凰山に植えた草だとする伝説があり、感謝の意味を込めて旧暦7月7日七夕(乞巧節)の日に、冬瓜と共に煎じて甕に保管し、暑気あたり防止に役立てている[4]

脚注

  1. ^ a b c 邱紹傑、彭宏源、『臺灣客家民族植物:應用篇』p246、2008年、行政院農業委員會林務局、台北、ISBN 978-986-01-6109-0
  2. ^ 熱帯植物研究会編、『熱帯植物要覧』p444、1984年、養賢堂、東京
  3. ^ 邱紹傑、彭宏源、『臺灣客家民族植物:圖鑑篇』p40、2008年、行政院農業委員會林務局、台北、ISBN 978-986-01-6110-6
  4. ^ a b 花城出版社編、『広東特産風味指南』p70-71、1983年、花城出版社、広州
  5. ^ 江蘇新医学院編、『中薬大辞典』、上海科学技術出版社、pp1915、1986年、ISBN 7-5323-0842-1
  6. ^ 商品として作る場合、少し馬鈴薯デンプンなどを追加してしっかり固まるようにする。