自衛隊自動車訓練所

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自衛隊自動車訓練所(じえいたいじどうしゃくんれんじょ)とは、自衛隊における自動車訓練施設、すなわち自動車教習所のことで、自衛隊員自衛官のみに運転免許を取得させるため教習を行う。略称は自訓または自教

部隊によっては道路交通法などの表記と同じく自衛隊自動車教習所と標榜しているところもある。指定自動車教習所と同じ扱いを受けるので運転免許試験場で学科試験を受けることになる。自衛隊の駐屯地または訓練場(演習場)内に開設されているため、履修対象は自衛官に限定される。

概要

音楽隊の楽器を輸送する楽器運搬車
US-2に燃料を補給する20000L燃料給油車

自衛隊では大型自動車免許が必要な任務が多いため、普通免許等を保有せずとも大型自動車免許(2007年6月の道路交通法改正後に取得した者は「大型自動車は自衛隊車両に限る」の限定条件が付加される)が取得できる。また、戦車を公道で運転するための免許も取得できる(「大特車はカタピラに限る」の限定免許となる)。この他、訓練所によっては都道府県労働局長登録教習機関の側面も持っているところもあり、技能講習や特別教育、実技教習なども行っており、労働安全衛生法による免許では付近の安全衛生技術センターで学科試験を受けることとなる。自衛官が受講する場合、テキスト代を除き全額国費[1]で免許が取得可能である[2]。教習所長は3等陸佐若しくは1等陸尉[3]、副所長は陸尉若しくは曹長[4]が充てられる。勤務員の殆どは教習所を管理する当該部隊及び同一駐屯地に所在する部隊若しくは近隣の部隊[5]から差し出される。

海空でも航空機の燃料を輸送する給油車や施設の維持に使用するブルドーザーなどが稼働しているが、陸自に比べるとニーズが少ないため訓練所は少ない。

音楽隊は楽器を輸送するため中型の貨物自動車を利用していることから、音楽隊員には中型自動車免許の取得が推奨される。

主な施設等

  • 本部隊舎(所長・本部班・指導員等執務場所)
  • 教場(学科教習・実技におけるハンドル操作やシミュレーターによる教習等)
  • 学生控室
  • 整備工場(後方支援部隊における整備課程の教育が行われる場合もある)
  • 営内隊舎(管轄部隊の営内を間借りする場合もある)
  • 教習コース(民間の自動車学校に準じたコースが整備されているものの、施設内の設備(コース等)の維持管理費に関して予算が不足している傾向が強く、コースの補修・積雪寒冷地の除雪[6]は入校中の学生・助教等が行っている。特にアスファルトのラインや周辺の雑草等は教習にも大きく影響するため、歪みが生じたアスファルトの補微修正・ラインの修正・草刈り等は定期的に行われる)

入校資格

輸送科職種に配属された隊員は必要不可欠であり、後期教育で大型免許を取得する。尚、車両を扱う機会が多い施設科や通信科職種等は普通科(歩兵)職種等に配属された隊員よりも優先して教育を受けることが多い。また各部隊に年間計画で受入枠が決まっており、例として1個普通科中隊においては普通車免許を取得している者を含めて年間4~6名(基本的に普通車免許を持つ者は年間2名程度しか免許取得機会が無いことが多い)しか枠が配分されず配属先部隊によって異なるが、2任期以上かつ継続的に部隊で勤務する意思を持つ者や中隊長等の伝令業務を行っている隊員・職務上車両を取り扱う隊員でなければ受けさせてもらえないことが多い(ただし教習指導員の資格を有する隊員を自動車教習所に臨時勤務という形で差し出していればその部隊に入所枠が多く配分されることがある)。

海上、航空自衛官で所属基地に自動車訓練所が無い場合は最寄の陸上自衛隊駐屯地の訓練所へ入校する[7]。地域によっては警察官、消防官・自治体職員等が入校することも稀にある[2]

民間の自動車学校との違いは入所前に警察庁運転適性検査「別名:K2」を予め受験、その結果運転適性が「適」または「準適」、かつ車両運行適性が5段階中「3」以上の者のみに入校が制限される。運転適性が「不適」や車両運行適性「1~2」の者は当然ながら事故を起こす危険性を考慮し入校は一切認められない[8](民間では適性に関係なく免許取得が可能)。

各指導基準等

受講期間

大型免許は普通または中型第1種[9](MT)を有する者が約10週間の通称「免あり」課程、運転免許を有しない者は約16週間の通称「免なし」[10]に、大型特殊は2週間、牽引免許は4週間入所する。

大型特殊や牽引免許に関しては、一度大型免許(初級装輪操縦課程)を受講し合格している為、運転技術は相当の技量があると見込まれており指導等は特に厳しくないが、技量が未熟な者へは相応の指導がされる。

部隊長[11]等が希望により運転免許取得の為通う例もある。通常の学生と違い指定された時間に教習所に来て終了後はそのまま執務に戻る[12]

技能訓練

卒業時には公安委員会試験合格基準をはるかに上回る運転技術を要求される。特に自衛隊車両による加害事故事案を発生させぬよう、その運転技術等に関しては指導員によるマンツーマン指導が行われ、徹底的に身体に運転技能がたたき込まれる。その基準について行けない者に関しては、同期学生の運転を同乗する形でよく観察を命ぜられて運転技術を向上するよう徹底的に訓練される。

学科

仮運転免許取得の際の学科試験及び卒業時の免許センターにて実施の学科試験において不合格者を出さない事を目的として、その学科訓練に関しては非常に厳しい指導がなされる。特に試験受験基準は100点満点を要求され、学科試験受験前日までに確実に合格する事を目的とした各種指導が徹底される。模擬試験の結果が100点満点基準として設定され、それよりも低い点数しか取れなかった者に対しては外出の制限と課業外の自己鍛錬を命ぜられる。仮に試験センターにて不合格者が発生した場合は、当該学生だけでなく同期学生や次期入校者にもペナルティが科せられて指導が厳しくなる事も多い。

陸上自衛隊

道内で唯一自衛隊の教習所において第1種普通自動車免許を取得可能、主に任期満了退官者や大型自動車免許の適正が不適格と判定された隊員向け。また時には第2種大型自動車免許を取得可能である。第11後方支援隊輸送隊管轄

過去には県内の複数駐屯地に自動車教習所を設置していたが、財務省から非効率運営であるとして改善勧告を受けたことから、近年は各県内に1若しくは2カ所程度(おおむね師団・旅団司令部所在駐屯地、または特科連隊・施設団本部所在の駐屯地)に集約されている。

海上自衛隊

以下の教習所は、2007年の防衛省組織改編に伴い廃止された。

航空自衛隊

脚注

  1. ^ 但し、退職に伴う就職援護の為の運転免許取得や運転適性上「自衛隊車両の運転に適さないが私有車の運転に支障は無い為特技課程を受講せず免許のみ取得させる」などの事例により大型等の免許取得する場合は、免許取得に関する諸経費(およそ7000円程度)は実費で負担する。
  2. ^ a b 大型自動車免許を必要とする自衛隊員への教習施設であり教習指導員等も自衛官のため受講料等は発生しないが、自衛官以外が教習を受講する場合は燃料代等の相当する必要経費は全額支払う義務が発生する。
  3. ^ 輸送隊隷下に設けられている場合は、1等陸尉若しくは2等陸尉が充てられ輸送隊副隊長や隷下小隊長を兼務する場合もある。普通科連隊や特科連隊等の隷下は本部管理中隊等の隷下で副中隊長を兼務する場合もある。
  4. ^ 副所長兼務で検定官等の役職が与えられている場合もある。
  5. ^ 輸送隊管轄の場合は隷下に自動車教習所名の小隊規模の小規模部隊が編成されその要員が担当する。要員を差し出す場合は師団や旅団・団等の隷下部隊から必要に応じ指導員や検定員・整備班等の支援要員が差し出され勤務を行う。
  6. ^ コース上の雪は全て除去出来ない為、最低限ライン部分の露出によるコース内停止位置・中央と路肩が認識出来る範囲及び坂道等の後退防止のための発進場所等で行われる
  7. ^ 陸自も同様。その場合、曹士に関しては指定された営内居住隊舎に居住することになり、入校が認められた幹部に関しても教育期間中は指定された営内居住が義務づけられ外出も教習所長による許可制となる。また曹士の外出に関しても所属長からの委任を受けた当該部隊長に外出許可権限が移行する(部隊直轄は本部管理中隊長等・輸送隊直轄は輸送隊長でいずれも自動車教習所長気付扱い)
  8. ^ 仮に適性検査をパスし入校が認められたとしても入所間補備訓練等による技術向上が認められない等の不適格要素が多い・指導にも関わらず運転技術に不備が多い状況で本人による改善の余地が無い状況と教官が認めた場合は教育を終了し原隊復帰を命じる。これにより自衛隊教習所出身者の事故発生件数は民間教習所出身者と比較して非常に低水準を維持している。
  9. ^ 平成19年6月の法改正前に普通1種を取得した者に切り替えられた中型8トン限定を含む
  10. ^ AT限定及び自動二輪、原付・小特のみの保有者は免なし課程で入所
  11. ^ 主に連隊長や大隊長等が該当し定年後の再就職に向けた免許取得の為通う。まれに師団長等も大型免許取得の為に通う例もある。いずれも就職援護教育を兼ねており費用は一部公費となるものの必要な経費は自腹で支払っているケースが多い
  12. ^ 指導の際はベテランの指導員が担当するが、指導法等は通常の学生と特に変わらず運転が未熟の場合普通に怒声が飛ぶ事もある