粉瘤腫
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粉瘤腫(ふんりゅうしゅ、 atheroma (アテローマ))とは、新陳代謝によって表皮から剥がれ落ちる垢などの老廃物が、皮膚内部(真皮)に溜まることによってできる良性の嚢胞性病変の総称(-omaという接尾語をもつが新生物とは考えられていない)。表皮嚢胞(epidermal cyst)あるいは類表皮嚢胞(epidermoid cyst)とも呼ばれる。
概要
体表の上皮組織すなわち表皮の細胞は基底層で細胞分裂し、表層に押し出されたものは徐々に細胞質内にケラチンを貯留し(=角化)、最後には殆どケラチンのみから成る扁平な死細胞が層板状に積み重なったもの、すなわち角質となり、垢として剥がれる。しかし、本来上皮組織が存在しない皮膚内部に表皮と同様の重層扁平上皮が出現すると、周りの結合組織から遠い側=組織の中心部にこの角質を生じる。皮膚表面に開口部(「臍」と呼ばれる)を持つことが多い。ただし、この開口部は固化した老廃物などによってふさがれており、老廃物は体外へ排泄されず、重層扁平上皮が薄く老廃物を取り囲む。よって、手術によって摘出した粉瘤腫は老廃物を納めた袋状を呈する。新陳代謝に伴い腫大する。
原因
多くの粉瘤腫は、毛根を形成する組織の一つ、毛漏斗(infundibular portion of the hair follicle)に由来するという説が有力である。同じ場所への刺激などにより、毛包全体が毛漏斗の細胞に化生してしまったものと言われている。この立場からはこの病変を毛漏斗嚢胞(infundibular cyst)と呼ぶ。
皮膚に外傷を負った際に、表皮や皮膚付属器の基底細胞が真皮内に封入されて生じる場合もあり、これを外傷性粉瘤あるいは表皮封入嚢胞と呼ぶ。
症状
初期の状態では皮膚の下にしこりが見られるにとどまり、皮膚表面上は症状が現れないことが多いため、自覚することは少ないが、経過すると次第に肥大化する。この時点で、老廃物を無理やり皮膚外へ搾り出す行為は、感染症を引き起こす恐れがあるため、厳禁である。腫瘍内の老廃物に細菌が感染した場合は皮膚下で炎症を起こすために痛みを伴うようになり、最悪の場合は破裂して膿が出てしまうこともある。
また、内側に向かって破裂し、体内に膿が入った場合、場所によっては腹膜炎や胸膜炎、リンパ管炎を引き起こし最悪死に至るケースもあるため不用意につぶすのは危険が伴う。
治療法
放置すると感染症を引き起こすことがあるため、局所麻酔を行い袋ごと切除する手術を行うのが一般的である。腫瘤が小さい場合は、電気メスなどで開口し、老廃物を圧出、袋を反転させる形で除去することもある。どのような術式においても、再発を防ぐため袋は完全に除去する。除去が完全であれば、ほとんど再発しない。
ただし、感染症を既に起こしてしまった場合には、局所麻酔にて切開を行い、袋の中の老廃物を排出し洗浄する処置や抗生物質の投薬が必要である。
良性の腫瘍であり、特に問題が生じなければ切除するかしないかは本人の自由である。しかし巨大化し、長期間存在した粉瘤は癌化するとの報告があるので注意を要する。