小柴胡湯
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小柴胡湯(しょうさいことう)とは、肺炎、感冒、慢性肝炎、胃腸疾患などに用いられる漢方薬の一種である。出典は傷寒論、金匱要略。
構成生薬
柴胡と黄芩の組み合わせが中心となる方剤を柴胡剤といい、小柴胡湯はその柴胡剤の最も基本となる方剤である。柴胡から大棗までは多くの柴胡剤で共通している。柴胡剤は表・裏症分類では半表半裏に用いる。 柴胡と黄芩はいわゆる胸脇苦満(脇や胸に重苦しさ・張りを訴える)を治す作用がある。半夏には悪心を治す作用がある。生姜と大棗は多くの漢方方剤に副作用を緩和する目的でペア加えられている。甘草も同じ目的で配合されている。人参は代表的な補性薬の一つ。
全体として半表半裏の熱虚症むきの方剤である。ただし著しい虚症のものには適さない。
- 柴胡は、作用機序の明確で無い多くの生薬の中で、比較的作用機序の明確になってきている数少ないものの一つである。つまり、一つには構成成分のサイコサポニンにステロイド様の作用があり、炎症に対して抗炎症的に作用するらしい。従って、柴胡剤は喘息・膠原病など、各種の慢性炎症に対する東洋医学の「切り札」的な存在として脚光を浴びていたが、その後インターフェロンとの副作用情報がセンセーショナルに報道されたために、漢方医以外にはやや縁遠い薬になり、一時期ほど頻用される薬剤ではなくなってしまった。しかし、得がたい作用をもつ方剤であることは確かである。「随証的に用いていればまず問題ない、間質性肺炎にさえ柴胡剤が有効なことはある。」という識者の意見も存在する。これらは、西洋医学的あるいは西洋科学的な論理を基礎にして生薬を使用した結果発生した事故[要出典] であり、中薬や漢方薬は、東洋医学あるいは東洋科学を基礎にして使用するべきであることを表している。
保険適用エキス剤の効能・効果
体力中等度で上腹部がはって苦しく、舌苔を生じ、口中不快、食欲不振、時により微熱、悪心などのあるものの次の諸症。
- 諸種の急性熱性病、肺炎、気管支炎、感冒、胸膜炎・肺結核などの結核性諸疾患の補助療法、リンパ腺炎、慢性胃腸障害、産後回復不全
慢性肝炎における肝機能障害の改善
臨床試験
- 遷延したかぜ症候群患者(小柴胡湯群131例、プラセボ群119例)に対して、二重盲検ランダム化比較試験(DB-RCT)により、全般改善度、咽頭痛、倦怠感、痰の切れ、食欲、関節痛・筋肉痛がプラセボよりも有意に有効であった[1]。
重大な副作用
インターフェロンとの併用、肝硬変または肝癌の患者に投与すると、間質性肺炎を起し死に至ることがある。他に、偽性アルドステロン症、ミオパシー、肝機能障害、黄疸など。
関連する方剤
- 大柴胡湯 小柴胡湯から人参・甘草を除き枳実・芍薬・大黄を加えた実証向きの方剤。
- 柴胡桂枝湯 小柴胡湯と桂枝湯の合方。
- 柴胡加竜骨牡蠣湯 小柴胡湯から甘草を除き桂枝・茯苓・龍骨、牡蠣を加えた。
- 小柴胡湯加桔梗石膏 小柴胡湯に桔梗・石膏を加えた。小柴胡湯の症で咽の腫れ痛みを訴えるもの。
- 柴陥湯 小柴胡湯と小陥胸湯の合方。
- 柴朴湯 小柴胡湯と半夏厚朴湯の合方。
- 柴苓湯 小柴胡湯と五苓散の合方。
脚注
- ^ 加地正朗、柏木征三郎ほか「TJ-9ツムラ小柴胡湯の感冒に対するPlacebo対照二重盲検群間比較試験」『臨床と研究』第78巻第12号、2001年、p.p.2252-2268、2009年12月30日閲覧。
- ^ Hirayama, C., Okumura, M., et. al. (1989年). “A multicenter randomized controlled clinical trial of Shosaiko-to in chronic active hepatitis.”. Gastroenterol Jpn. 24 (6): p.p.751-759. PMID 2691317 2009年12月30日閲覧。.
- ^ 平山千里、奥村恂ほか「多施設二重盲検試験による慢性活動性肝炎に対する小柴胡湯の臨庆効果」『肝胆膵』第20巻、1990年、p.p.751-759。