安全保障貿易管理
安全保障貿易管理(あんぜんほしょうぼうえきかんり、英: Security trade control)とは、「国際的な平和及び安全の維持の観点から、大量破壊兵器等の拡散防止や通常兵器の過剰な蓄積を防止するために、国際的な輸出管理の枠組み(レジーム)や関係条約に基づき、自国内の法令を以って、厳格な輸出管理を行うこと」をいう[1]。安全保障輸出管理ともいう。
概要
概念としては、自国または同盟諸国の安全保障上の利益を確保するために、国家間の同意事項として、敵対勢力への利敵行為となりうる民間貿易(輸出)を管理する、という考えであり、これは冷戦下のココム規制に端を発する。敵対勢力や利敵行為の定義や規制品項目は、国家間のパワーバランスや国際情勢により随時変更するため、国の政策によって輸出管理の内容や罰則についての規定には差異がある。
日本の安全保障貿易管理
日本の安全保障貿易管理については、、経済産業省経済協力局内における安全保障貿易管理課が所管する。 国際輸出管理レジームとして、原子力供給国グループ(NSG)、ザンガー委員会(ZC)、オーストラリア・グループ(AG)、ミサイル技術管理レジーム(MTCR)、ワッセナー・アレンジメント(WA)を輸出管理の基としている。また、もう一方の基となる関係条約としては、核不拡散条約や生物兵器禁止条約、 化学兵器禁止条約などがある。これらの会合や条約による国際的な取り決めを基本として、国内における法令である外国為替及び外国貿易法(外為法)の運用により、輸出管理は実施される。
国際輸出管理レジーム
国際的な安全保障貿易管理レジームとしては大きく4つの枠組みが存在する[2]。
- ワッセナー・アレンジメント(WA)
- 通常兵器およびその開発・製造・使用に転用される危険のある汎用品即ちデュアルユース品の規制を行う。
- 原子力供給国会合(NSG)
- 核兵器不拡散条約に基き核兵器開発等に転用される危険性の高い汎用品の規制を行う。
- オーストラリア・グループ(AG)
- オーストラリアの提案により形成されたレジーム。生物兵器禁止条約及び化学兵器禁止条約に基づき、これらの条約に抵触する兵器の開発等に転用される危険性の高い汎用品および専用品について参加国が各自規制するもの。
- ミサイル関連機材・技術輸出規制(MTCR)
- 核爆弾を搭載可能なロケットの開発や無人航空機の開発・製造に使用される機材について技術の輸出規制を目的として形成された枠組み。今日では生物・化学兵器を搭載できる小型のミサイルまで規制対象。
安全保障貿易管理教育
民間では同省所管法人である財団法人安全保障貿易管理情報センターにおいて安全保障貿易管理に関する教育や資格認定が行われている。 同センター主催安全保障輸出管理実務能力認定試験として、STC Associate、STC Expertの各級試験が設けられている(STCとはSecurity Trade Control、安全保障輸出管理の略)。STC Expertは、法律編と技術・貨物編と二種類の試験にわけられており、法律編のみの合格の場合、STC Legal Expert、双方合格の場合、STC Expertとして認定される。STC Expert合格者は安全保障貿易管理士(総合)、STC Legal合格者は安全保障貿易管理士(法令) という資格名称を称することができる。
脚注
- ^ 経済産業省ホームページ安全保障貿易管理についてより
- ^ 日本貿易振興機構ホームページ参照。
関連項目
- 安全保障
- 海洋安全保障
- 貿易
- 大量破壊兵器
- 核不拡散条約
- 化学兵器禁止条約
- 安全保障貿易管理士
- 外国為替及び外国貿易法
- アメリカ合衆国商務省産業安全保障局
- 対共産圏輸出統制委員会
- 東芝機械ココム違反事件
- 武器輸出三原則
- ワッセナー・アレンジメント