大陸書房
株式会社大陸書房(たいりくしょぼう)は1967年から1992年まで存在した日本の出版社、映像ソフト会社。かつての本社は東京都文京区本郷2-3-9で、最終所在地は東京都文京区本郷2-6-4。
沿革
双葉社で実話雑誌や秘境本を担当してヒットを飛ばしていた編集者の竹下一郎が、1967年12月、オカルト関係のノンフィクション専門の出版社として設立[1]。社名はムー大陸からとられた[2]。
1968年2月に「失われたムー大陸」を初出版、以後「失われた文明」、「怪奇・奇談」、「UFO」、「神秘・四次元」などのシリーズものを中心に刊行し、1970年代のオカルトブームを支えた[1]。
業績は当初より良いとはいえず、1980年代に入ると経営危機が表面化。1986年には創業者が会長職に退き、父親が大陸書房の社主と関係があったという廣済堂出版出身の塚田友宏が社長に就任。新経営陣は漫画雑誌に参入し、数々の雑誌を創刊[3]。さらに打開策として映像ソフト事業への参入を図る。
一般のビデオで1万円を超えるのが普通だった時代に、大陸書房は1987年7月から30分で1800円という値段で書店を通じてセル専用で発売を開始した[4][5]。書籍の流通ルートを利用し、委託販売方式でビデオソフトを販売するという販売戦略で、後に書店売りビデオとして一般化した手法だが、廉価のセル専用ビデオの可能性を初めて示したのが大陸書房だった[6]。
初年度の1987年度には300万本の売り上げを記録するなど、大きな反響を呼んだ。業績も急回復し、同社はビデオのラインナップを映画の廉価版からアイドルもの、アダルトもの、アニメーション、ハウトゥーものまで幅広く揃え[5]、ビデオ販売への依存度を高めていく。
しかし、大陸書房の成功を見た笠倉出版や英知出版などが相次いでセル市場に参入すると、ビデオの売れ行きは伸び悩み、書籍扱いの委託販売方式のために大量の返品を抱え込むようになる[6]。同社ではレンタルビデオ市場に進出するなど、経営多角化を図るが、業績が急激に悪化。
1992年8月には東京地裁に自己破産を申請、倒産するに至った。倒産原因はビデオの過当競争による伸び悩みと報道され、負債額は97億円余にのぼり、出版界としては当時最大級の経営破綻だった[7]。
主な雑誌
- つり情報(辰巳出版に移籍。移籍に際してつり情報(沖釣り専門誌)と主婦と生活社の磯・投げ情報(磯釣り・投げ釣り専門誌)に分かれた。)
- 酔
- クロスワーキング
- コミック・ルージュ
- ホラーハウス
- ファミリーコミック
- 小説奇想天外
- MSX Oendan
- コミックJAM
- ネオファンタジー
ビデオレーベル
- ピラミッド(PYRAMID)
- FOXY
- Galaxy
ビデオブックス
- ※1991年時点の主なタイトル。各30分、1800円。
- 高橋五月ゴルフ入門1~4
- 小杉純一プロ指導 ビリヤード入門1~2
- 韓国ガイド1~2
- 西野式呼吸法 由美かおる バイオスパーク1~2
- 世界の愛犬1~4
- 松岡修造テニス入門1~4
- 藤田、黒江の少年野球入門1~3
- パワースキー入門1~4
- 井出名人の麻雀入門1~3
- 大町昭義プロの100を切る実践ゴルフ1~4
ビデオマガジン
- ※撮りおろし45分、各2800円
- 月刊財テクビデオ 松本享の株9月、10月
アイドルビデオ
- ※撮りおろし30分、各1800円
- 本田美奈子 美奈子inL.A
- 佐野量子 スケッチブック
- 杉本彩 マーメイド
- 酒井法子 ベストビデオアルバム
- 黒木永子 ミラクルバニー1~2
- 堀江しのぶ4 いつかは
- 山本理沙 もう一人の私
- 芹沢直美 潮風のエンジェル
ビデオ映画
- ※未公開作品、名作シリーズ(各1980円~2200円)
- サンドー/地獄の使者
- 忍者伝説 シナンジュの秘宝
- 悪魔のゴミゴミモンスター
- ドラマ ダニー・トラビス
- チャイナタウン 非情の罠
- ホラー 淫獣の森
- 素顔の裕次郎 名場面集&プライベートフィルム選
- 裕次郎の欧州駆けある記 ヨーロッパロケの舞台裏
- ルーカーズ 死霊の囁き
- パリ島珍道中
- SF 異星人パニック
ビデオえほん館
- ※撮りおろし12分、各950円
- 日本おとぎばなし「ももたろう」、「かちかち山」
- 日本おとぎばなし「かぐやひめ」、「さるかにがっせん」
- 日本おとぎばなし「うしわかまる」、「一休さん」
- 世界の名作童話「マッチ売りの少女」、「アラジンと魔法のランプ」
- 世界の名作童話「ピノキオ」
アニメ
- ※各30分~60分収録、1980円~2980円
- カプリコン
- Milky Passion ミルキィ・パッション
- 女戦士エフェ&ジーラ グーデの紋章
- 微・笑・女あにめラマ シリーズ
- くりいむレモンジュニア シリーズ(R18指定シーンを除いて再編集をした廉価版)
- くりいむレモン クライマックス全集(R18指定シーンのみを再編集した作品)
- くりいむレモン 大陸書房版(ポニーキャニオン版とほぼ同一の映像原版を使用した廉価版)
- ピラミッド名作アニメシリーズ スーパーマン
- ピラミッド名作アニメ ガリバー旅行記
- ドン・チャック物語(全13巻、第1話~第26話まで商品化/各60分)
- 星の子チョビン(全2巻、第1話~第4話まで商品化/各60分)
- 星の王子さま プチ・プランス(全12巻、第1話~第24話まで商品化/各60分)
- ほえろブンブン(全4巻/各60分)
- ファミリーアニメ館 世界の童話シリーズ(にんぎょ姫、赤ずきん、ヘンゼルとグレーテルなど)
ビデオマガジン
- ※各30分~35分、1200円~2200円
- アニメビジョンスペシャルVol.1~Vol.3(ビクター音産版からの引継ぎリリース)
- Gamers Vol.1~Vol.3
- メンズコレクションビデオ「Dig-men」(創刊号のみで廃盤)
ライトノベル
- 大陸ノベルス
- 大陸書房ネオファンタジー文庫
出典
- ^ a b 飯倉義之「美しい地球の<秘境> ――<オカルト>の揺籃としての一九六〇年代<秘境ブーム>」『オカルトの惑星 1980年代、もう一つの世界地図』吉田司雄編著、青弓社、2009年、pp.27-28
- ^ 原田実「邪馬台国と超古代史」『オカルトの惑星 1980年代、もう一つの世界地図』吉田司雄編著、青弓社、2009年、p.75
- ^ 長谷邦夫『ニッポン漫画雑誌名鑑』データハウス、1995年、pp.168-169
- ^ 『日本経済新聞』1988年4月18日付
- ^ a b 「大陸書房、書店で映画ビデオ 価格抑え大量販売」『日経産業新聞』1988年5月4日付
- ^ a b 藤木TDC『アダルトビデオ革命史』幻冬舎新書、2009年、p.201
- ^ 「大陸書房、自己破産を申請」『日本経済新聞』1992年8月5日付