地球近傍天体

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地球近傍天体(ちきゅうきんぼうてんたい)とは、地球に接近する軌道を持つ天体彗星小惑星、大きい流星体)の総称。英語でNEO (Near Earth Object) と呼ばれることもある。地球に接近することから衝突の危険性を持つ反面、地球からの宇宙船が容易に到達しやすく(月よりはるかに少ない速度増分 (ΔV) で済むものもある)、今後の科学的調査と商業開発において重要になると考えられている。

NASAは1km以上の全ての地球近傍天体をリストに載せる議会命令を公布した。この大きさもしくはそれ以上の大きさのNEOは、地球に衝突すると地球単位の重大な災害を引き起こす。2009年6月までに1,000個以上の危険性があるNEOが発見されており、まだ見つけられていない地球近傍天体も多数あると見られている。アメリカEUおよび他の国は現在、地球近傍天体のためにスペースガードという捜索プロジェクトで捜索を続けている。なお、従来あまり調査されていなかった、黄道面から大きく離れた領域を含む全天をより効率的に観測するために、ハワイに専用の望遠鏡を設置するパンスターズ計画が進められている。

種類とサイズに従った地球近傍天体の分類

NEOの総数

2009年6月24日現在、彗星を除いて6,216個が発見されている[1]。このうちアテン型小惑星が513個、アモール型小惑星が2,596個、そしてアポロ型小惑星が3,107個である。このうち1,058個は「潜在的に地球と衝突する可能性をもつ小惑星」(PHA;Potentially Hazardous Asteroid) に分類される。

衝突の危険性の見積もり

天体が地球に衝突する危険性の見積もりは2つある。

2004年12月25日に、小惑星 (99942) アポフィスはそれまでで最大のトリノ・スケール4と認定された。同年12月27日の時点で、2029年4月13日に2.7%の確率で地球に衝突すると報じられたが、12月28日、さらなる計算の結果、衝撃の危険はほぼゼロまで落ちた(トリノ・スケールも0になった)。2005年1月現在、トリノ・スケール1以上の小惑星は2,053個あるが、その数は観測の数が増えるにしたがって低下すると予想されている。

現在、パレルモスケールが最大と予想される小惑星は (29075) 1950 DAであり、0.3%の確率で2880年3月16日に地球と衝突すると予想されている。 この衝突が起こると、1950 DAとの衝突で放出されたエネルギーは地球の生物の大量絶滅を引き起こすであろう。しかし、人類には1950 DAの軌道の見積りを改良し、必要ならばその向きをそらすための時間が800年以上ある。

NASAは、the most significant NEO threatsで今後100年間で地球に衝突する危険性がある小惑星のリストを公開している(1950 DAは含まれない)が、そのうちほとんど全ては軌道計算の確定に伴いリストから外れる公算である。

NEOのニアミス・落下

2004年3月18日2004 FH(直径30m)が地球の上空約4万3000km上を通過し、地球近傍天体の地球への接近記録を更新した。天文学者たちは接近の3日前に発見していた。検出から最接近までの時間は一見短いかもしれないが、2004 FH は非常に小さい。このような、地球単位の災害を及ぼす可能性があるNEOははるかに早く見つけられるだろう。

そのわずか2週間後の3月31日2004 FU162は地球の上空6,500kmを通過し、2004 FH の記録を大幅に塗り替えた。この小惑星が検出されたのは最接近のわずか9時間前だったが、推定直径10mと非常に小さかったので、地球に突入したならば大気圏中で崩壊したと予想される。

2008年10月7日2008 TC3(推定直径2-5m)が地球の大気圏に突入し、スーダン上空で爆発した。破片の一部は地上に落下したが、居住者のほとんどいない砂漠地帯だったために被害はなかった。この小惑星は大気圏突入の約20時間前に発見され、落下直前までその軌道が追跡された最初の例となった。

これらと同程度の小さい天体は、小惑星というよりむしろ流星体として分類される。