双子素数

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双子素数(ふたごそすう、twin prime)とは、差が 2 である2つの素数の組のこと。2 と 3 の組を除くと、双子素数はもっとも数の近い素数の組である。双子素数の例としては、 3 と 5 、 11 と 13 、 857 と 859 などがある。

双子素数の予想

素数が無限に存在することが古代ギリシャ時代から知られていたのに対し、双子素数は無限に存在するかという問題、いわゆる「双子素数の予想」や「双子素数の問題」と呼ばれる問題は、多くの数論学者が無限に存在するだろうと予想するが、2012年の時点で、いまだに数学上の未解決問題である。上からの評価式など部分的な結果があるが、その中でも漸近公式の予想は注目に値する。双子素数の組の数の漸近公式はハーディ・リトルウッド予想の一部であり、これは素数定理と似通った次のような双子素数の漸近的な分布公式を予想している。

x 以下の双子素数の組の数は、漸近的に

、あるいは で与えられる。後者の積分による表示式のほうがよい近似を与える。ここで、定数 C は次のような無限積で定義される。

この定数 C は「ハーディ・リトルウッド定数」の一つである。

この問題は、特に二素数の場合のゴールドバッハの予想に密接に関係しており、篩法などの研究者によって双方の研究が同時に進められてきた。

2004年5月に、「双子素数が無数に存在することの証明」と題された論文が Richard Arenstorf によって提出され[1]、上記のハーディ・リトルウッドの予想は正しいと主張したが、内容に重大な誤りがあるとして著者自身によって撤回された。

双子素数は、小さな方から (3, 5), (5, 7), (11, 13) などがあり、ペアのうち小さな方のみ列挙すると、

3, 5, 11, 17, 29, 41, 59, 71, 101, 107, 137, 149, 179, 191, 197, …(オンライン整数列大辞典の数列 A1359

となる。

2011年12月の時点で知られている最大の双子素数は、200,700桁の 3756801695685 × 2666669 ± 1 である。これは、2011年12月分散コンピューティングプロジェクトのひとつであるPrimeGridにより発見された[2]

双子素数に関する諸結果

  • (3,5) を除く全ての双子素数は、(6n - 1, 6n + 1) に自然数 n を代入した数となっている。
  • xより小さな双子素数の個数は高々O(x/(log x)2)である。したがって、pp + 2 が共に素数の場合、

(全双子素数の逆数)は収束する (Brun, 1919)。この和(1.90195……)をブルンの定数と呼ぶ。このことは、全素数の逆数の和が発散することと対照的である。また、すべての偶数は、高々 9 個の素数の積で現される 2 つの整数の差として無限通りに表すことができることもヴィーゴ・ブルンは示している (Brun, 1920)。これらの結果はふるい法によるもので、ふるい法の最初の本格的な成果であると同時に、双子素数に関する最初の理論的な結果であり、双子素数に関する研究の出発点となった。

  • ブルンの定数の2005年時点での最も正確な値は、B ≈ 1.902160583104... である。この値は、1016 までに現れる双子素数を使用して求められた (Sebah, 2002)。なお、1994年にブルンの定数を計算する過程でP54C Pentiumの浮動小数点演算命令にバグが存在することが発見され、話題となった。詳しくはPentiumの項を参照。
  • 陳景潤(Chen Jing Run)は、p + 2 が高々 2 個の素数の積となるような素数 p が無限に多く存在することを示している (Chen, 1966)。
  • p + 2 が高々 2 個の素数の積となるような素数 p陳素数と定義したとき、無限個の陳素数の3項等差数列が存在する (Ben Green, テレンス・タオ, 2005)。
  • (n, n + 2) が双子素数であるための必要十分条件は、4{(n - 1)! + 1} + n ≡ 0 (mod n(n + 2)) である (Clement, 1949)。
  • 2005年に、ダニエル・ゴールドストンにより、以下のことが証明された。

脚注

  1. ^ Proof of Infinitely many Twin Primes
  2. ^ PrimePages, The Prime Database: 3756801695685*2^666669-1

参考文献

  • V. Brun, Le crible d'Erathostene et la theoreme de Goldbach, Videnskapsselskapets Skrifter Kristiania, Mat.-nat. K1. 1920, No. 3, 36 pages.
  • J. R. Chen, On the representation of a large even integer as the sum of a prime and the product of at most two primes, I, Sci. Sinica, 16(1973), 157-176 and II, ibid. 21(1978), 421-430.
  • H. Davenport, Multiplicative Number Theory, 3rd edition, Springer-Verlag, 2002.
  • H. Halberstam and H. E. Richert, Sieve Methods, Academic Press, 1974.
  • M. B. Nathanson, Additive Number Theory: The Classical Bases, Springer-Verlag, 1996.
  • P. Sebar, Counting twin primes and Brun's constant new computation, NMBRTHRY@listserv.nodak.edu mailing list, 2002

関連項目

外部リンク

  • Weisstein, Eric W. "Twin Primes". mathworld.wolfram.com (英語).
  • Prime Pages, Top-20 Twin Primes