加法
加法(かほう、addition, summation)とは、数を合わせることを意味する二項演算あるいは多項演算で、四則演算の1つ。足し算(たしざん)、寄せ算(よせざん)、加算(かさん)とも呼ばれる。また、加法の演算結果を和(わ、sum)という。記号は「+」。
自然数においては加法とはものの個数を加え合わせることであり、それは数の拡張にしたがってさらに広い範囲の数に対する加法を定める。
減法とは互いに逆の関係にあり、また例えば、整数同士の加法においては負の整数の加法として減法が捉えられるなど、加法と減法の関連は深い。これは代数学において加法群の概念として抽象化される。
無限個の数を加えること(総和法)については総和の項を参照されるとよいだろう。
記法
それぞれの項が分かっていて全てを書き表すことができるとき、それらの和は記号 "+" を用いて表す。例えば、1, 5, 8 の和は
- 1 + 5 + 8
と記される。これは 14 に等しい。このことは等式として
- 1 + 5 + 8 = 14
と表される。
また、全てを書き表すことができなくても、暗に何らかの規則性がある場合には間を記号 "…" で省略して表すことがある。例えば、1 から 100 までの自然数の和は
- 1 + 2 + … + 99 + 100 = 5050
のように書き表す。ただしこのような場合は、記号 ∑ を用いて書き表すほうが規則性を陽に表すことができて便利であり紛れがない(総和の項参照)。
素朴な定義
初等教育において、加法は「もとの数」に「加える数」をたす足し算と定義される。ここで和とは、「もとの数」で表される数量から「加える数」だけ増えた結果に他ならない。小学生は、もとの数から、ある値だけ増える計算は足し算(加法)、ある値だけ減る計算は引き算(減法)と認識する。
中等教育に入ると負数の概念を獲得して、値の変化を加法のみで表すようになる。値 a から b だけ変化した結果を、和 a + b で表す。変化 b が実際に増加していれば b は正、変化がなければ b は0、減少していれば b は負の値を取る。このとき、減法は2数を比較した差を表す計算となる。
さらに、スカラー量だけでなく、ベクトル、行列にも加法が定義されるようになるが、いずれも交換法則、結合法則を満たすものである。
自然数の加法は、ものの個数を加え合わせることによって定義される。そのため自然数の和は、そのいずれの項よりも大きくなる。数の概念を整数やもっと広い範囲へ拡張することにより加法と減法の概念は統合される。
この節の加筆が望まれています。 |
正負の数の計算方法
2 数 a, b の符号と絶対値に注目すると、和a + b は次のように計算することができる。
符号 | |a|>|b| | |a|<|b| | |a|=|b| |
---|---|---|---|
a≥0,b≥0 | a+b | ||
a<0,b<0 | -{(-a)+(-b)} | ||
a≥0,b<0 | a-(-b) | -{(-b)-a} | 0 |
a<0,b≥0 | -{(-a)-b} | b-(-a) | 0 |
- 2 数の符号が同じ場合
- a, b 共に正の数のとき
- a の絶対値と b の絶対値を足し、正の符号を付ける。
- a, b 共に負の数のとき
- a の絶対値と b の絶対値を足し、負の符号を付ける。
- 2 数の符号が異なる場合
- a の絶対値が b の絶対値より大きい場合
- a が正の数(b が負の数)のとき
- a の絶対値から b の絶対値を引き、正の符号を付ける。
- a が負の数(b が正の数)のとき
- a の絶対値から b の絶対値を引き、負の符号を付ける。
- a が正の数(b が負の数)のとき
- a の絶対値が b の絶対値より小さい場合
- b が負の数(a が正の数)のとき
- b の絶対値から a の絶対値を引き、負の符号を付ける。
- b が正の数(a が負の数)のとき
- b の絶対値から a の絶対値を引き、正の符号を付ける。
- b が負の数(a が正の数)のとき
- a, b の絶対値が等しい場合
- 和は 0 である。
性質
数の加法のみに注目してその性質を挙げると以下のようなものがある。
- 対称性(交換法則): n + m = m + n
- 有限個の数を足すときは、順番を入れ替えて計算しても和は変わらない(ただし、無限個の数を足す場合は順番を入れ替えてはならない)。
- 例: 1 + 3 + 9 = 1 + 9 + 3 = 13
- 有限個の数を足すときは、順番を入れ替えて計算しても和は変わらない(ただし、無限個の数を足す場合は順番を入れ替えてはならない)。
- 推移性(結合法則): (n + m) + l = n + (m + l) = n + m + l
- 有限個の数を足すためには、どこから加えていっても結果は同じである。これらは抽象代数学においては "加法" と呼ぶべきものの満たすべき公理的な性質と見なされる。他にも
- ある数に 0 を加えても変化しない。
- 4 + 0 =4
- (-4) + (+4) = 0
などが加法に関する性質として挙げられる。