人魂

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鳥山石燕今昔画図続百鬼』より「人魂」

人魂(ひとだま)とは、主に夜間に空中を浮遊する火の玉[1](光り物)である。古来「死人のからだから離れた」と言われており[1]、この名がある。

概説

古くは古代の文献にも現われており、現代でも地方では目撃報告がある。また同様の現象は外国にもあり、写真も取られている。

万葉集の第16巻には次の歌が掲載されている[1]

人魂のさ青なる君がただひとり逢へりし雨夜の葉非左し思ほゆ — 万葉集(尼崎本)第十六巻[2]

鬼火(おにび)、狐火などとも言われ混同されることがあるが、人魂は「人の体から抜け出た魂が飛ぶ姿」とされるものであるので、厳密には別の概念である。

形や性質について語られる内容は、全国に共通する部分もあるが地域差も見られる。余り高くないところを這うように飛ぶ。色は青白・橙・赤などで、尾を引くが、長さにも長短がある。昼間に見た例も少数ある。

沖縄県では人魂を「タマガイ」と呼び、今帰仁村では子供が生まれる前に現れるといい[3]、土地によっては人を死に追いやる怪火ともいう[4]


諸説

一説によると,「戦前の葬儀は土葬であったため、遺体から抜け出したリンが雨の日の夜に雨水と反応して光る現象は一般的であり、庶民に科学的知識が乏しかったことが人魂説を生み出した」と言われる[誰によって?]、が人や動物の骨に含まれるリンは発光しないので該当しない。

昔から、蛍などの発光昆虫や流星の誤認、光るコケ類を体に付けた小動物、沼地などから出た引火性のガス、球電、さらには目の錯覚などがその正体と考えられた[誰によって?]。実際に可燃性ガスで人工の人魂を作った例もある(山名正夫・明治大学教授のメタンガスによる実験、1976年)。

1980年代には、大槻義彦が「空中に生じたプラズマである」と唱えた[5]

だが、上記の説明群では説明できないものもあり、様々な原因・現象により生じると考えられる。

脚注

  1. ^ a b c 広辞苑 第五版 p.2255 「人魂」
  2. ^ 写真で原典の該当ページを見ることが可能。京都大学附属図書館所蔵 重要文化財『万葉集(尼崎本)』pp.77-78 [1]
  3. ^ 民俗学研究所編著 著、柳田國男監修 編『綜合日本民俗語彙』 第2巻、平凡社、1955年、894頁頁。 
  4. ^ 高橋恵子『沖縄の御願ことば辞典』ボーダーインク、1998年、61-63頁頁。ISBN 978-4-938923-58-7 
  5. ^ 大槻義彦『「火の玉(ヒトダマ)」の謎 人魂の正体を追って40年 科学とロマンの奮戦記!』二見書房〈二見ブックス〉、1986年、257頁頁。ISBN 978-4-576-86129-6 

関連項目