モーダストレンス
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カテゴリ:推論規則 |
モーダストレンス(英: Modus tollens, MT)は、間接証明(indirect proof)や対偶による証明(proof by contraposition)の正式な名称である。ラテン語で「否定によって肯定する様式」の意。後件否定(denying the consequent)とも呼ぶが妥当な論証形式であり、似たような名称の妥当でない論証形式(後件肯定や前件否定)とは異なる。
モーダストレンスは次のような形式である。
- P ならば Q である。
- Q は偽である。
- 従って、P は偽である。[1]
形式的記法
[編集]論理演算の記法では、次のようになる。
ここで は論理的帰結を表す。
集合論の形式では次のようになる。
(P は Q の部分集合である。x は Q に属さない。従って、x は P に属さない)
自然演繹の記法では次のようになる。
また、次のような形式もある。
- もし P なら Q である。
- Q でない。
- 従って、P でない。
解説
[編集]この論証には2つの前提条件がある。第一の前提は「P ならば Q」という形式の文であり、含意を表している。第二の前提は、Q が偽であることを主張している。これら2つの前提から、論理的に P が偽でなければならないことを結論として導いている。
例えば、次のような例がある。
- ここに火があるなら、ここには酸素がある。
- ここには酸素がない。
- 従って、ここには火がない。
別の例を挙げる。
- リジーが殺人者なら、彼女は斧を持っている。
- リジーは斧を持っていない。
- 従って、リジーは殺人者ではない。
これらの前提がどちらも真であるとする。リジー・ボーデンが殺人者なら、彼女は斧を持っていたに違いない。そして、実際にはリジーは斧を持っていなかった。結果として、彼女は殺人者ではないということになった。論証が妥当で、前提が真なら、結論も真となる。
もっとも、殺人者が常に斧を所有しているとは限らないのも自明である。例えば、斧を借りることもできる(従って、リジーは斧を所有していなくとも殺人者の可能性がある)。この場合、最初の前提が偽であることを意味する。論証が妥当であっても、前提が偽なら結論も偽となる。
モーダストレンスは、カール・ポパーが反証可能性について論じる際に使われ、有名になった。
モーダスポネンスとの関係
[編集]モーダストレンスは、条件文型の前提に対して対偶をとることでモーダスポネンスに変換可能である。例えば、次のようになる。
- P ならば Q である(前提ー含意)
- Q でないならば P でない(その対偶)
- Q でない(前提)
- 従って、P でない(モーダスポネンスによる帰結)
同様に、モーダスポネンスを対偶を使ってモーダストレンスに変換可能である。
関連項目
[編集]- モーダスポネンス - 「ある人にとってのモーダスポネンスは、別の人にとってはモーダストレンスである」"one man's modus ponens is another man's modus tollens" (Dretske 1995)
- 後件肯定
- 前件否定
- 反証可能性