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ミジンコウキクサ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ミジンコウキクサ
ミジンコウキクサ(微小な葉状体)と
ウキクサ(大きな葉状体)
分類
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 Angiosperms
階級なし : 単子葉類 Monocots
: オモダカ目 Alismatales
: サトイモ科 Araceae
亜科 : ウキクサ亜科 Lemnoideae
: ミジンコウキクサ属 Wolffia
: ミジンコウキクサ W. globosa
学名
Wolffia globosa (Roxb.) Hartog & Plas, 1970[1]
シノニム
和名
ミジンコウキクサ、コナウキクサ[3][4][5]、コツブウキクサ[3]、コナツブウキクサ[5]、ヌカウキクサ[5]
英名
Asian watermeal[1]

ミジンコウキクサ (微塵子浮草[6]、学名:Wolffia globosa) はウキクサ亜科ミジンコウキクサ属に属する水生植物の1種であり、水面に浮遊して生育する。からだは極めて微小 (0.3–0.8 mm) であり、を欠く。ミジンコウキクサ属の中でも小型の種であり、世界最小の種子植物ともされる[6][7][8][9][10]。日本を含むアジアに広く分布しており、タイなどでは食用とされることもある (khai-nam とよばれる[11])。

特徴

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微小な浮遊植物であり、水面に生育する[12][13]。植物体は楕円形の葉状体 (の区別がない; frond[14]) だけからなり、を欠く[5][6][7][12] (下図1)。葉状体の大きさは 0.3–0.8 x 0.2–0.5 mm ほどであり、厚さ 0.2–0.6 mm と厚く、重さは約 150 µg[6][7][12][15]。上面はやや平坦、下面は肥大している[7][12][15]。表面は緑色から黄緑色、光沢があり、裏面は透明感のある緑色[6][7][12][15][13]。葉状体基部に1個の出芽嚢があり、そこから新たな葉状体を形成して出芽状に増殖する[6]。そのため葉状体は単独、または1個の新個体をつけた状態 (大小2個がつながった状態) でいる[5][6][7][16] (下図1)。出芽嚢の縁には細長い細胞からなる襟がある[17]。冬になると小型の休眠芽 (越冬芽、殖芽; turion) を形成し、デンプンを蓄積して比重が大きくなって水底に沈んで越冬し、翌春に浮上して増殖を再開する[5][12][15][13][16][18]

1a. ミジンコウキクサの葉状体
1b. ミジンコウキクサの葉状体

日本での花期は7–10月だが、開花は極めてまれである[4][5][6][7][12][15]は極めて小さく、大きさは 0.1–0.2 mm ほどしかない[7]葉状体上面中央の窪み (花孔とよばれる) の中に、花被を欠き1個の雄しべと1個の雌しべからなる花をつける[5][12][15][14] (雄しべ1個からなる雄花と雌しべ1個からなる雌花とする記述もある[4][7])。雌性先熟であり、最初に雌しべの柱頭が花孔から出るが1日ほどで枯れ、その後雄しべが伸びて花孔から出る[7][16]。結実は極めてまれだが、球状の種子を1個のみ形成する[5][7][12][15]染色体数は 2n = 16, 23, 30, 40, 46, 50, 60[13][19]。また色素体DNAの塩基配列が報告されている (169 kbp; kbp = 1,000塩基対)[9]

分布・生態

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東アジアから東南アジア南アジア熱帯から温帯域に分布し、アフリカ南北アメリカの一部に帰化している[2][13][15]ヨーロッパ南部原産とされることがあるが[4][5][20]Wolffia globosa はヨーロッパからは報告されておらず[2][13][19]、以前ミジンコウキクサに誤って充てられていた Wolffia arrhiza (下記参照) がヨーロッパを含む世界各地から報告されている[21]。日本における最初の報告は1938年であり、帰化植物とされることが多いが[4][5][20][22]、自生種とされることもある[2]。日本では本州 (関東・北陸以西)、四国、九州、沖縄から報告されている[6][12][22]

水路水田、ハス田などの富栄養化した水域の水面に生育する[7][9][12][16]。他の浮遊植物と混生することが多い[12][15][7] (上図)。温暖な気候で日当たりの良い場所を好み、さまざまな水質に対する適応性も大きい[22]

における送粉方法はよくわかっておらず、昆虫など小動物または風や雨による送粉、あるいは葉状体が移動して互いに接することによる送粉が想定されている[7]

人間との関わり

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ミジンコウキクサは増殖が速く、タンパク質に富み、また休眠芽はデンプンを多量に蓄積するため、食用、バイオマス資源、環境浄化 (栄養塩の除去など) などを目的とした研究が行われている[9][18][23][24]タイミャンマーでは、ミジンコウキクサは実際に食用として利用されている[7][9][25][11]。また日本では、ミジンコウキクサはメダカなど観賞魚の餌として市販されている[26]

分類

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日本産のミジンコウキクサは、当初は Wolffia microscopica として報告されたが、その後 Wolffia arrhiza の名が充てられ、これが長い間使われていた[5][12][19][20]。しかし村田ら (1981) によって日本産のミジンコウキクサは Wolffia globosa であることが指摘され、その後はふつうこの学名が充てられている[12][19]

脚注

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出典

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  1. ^ a b GBIF Secretariat (2021年). “Wolffia globosa (Roxb.) Hartog & Plas”. GBIF Backbone Taxonomy. 2021年6月20日閲覧。
  2. ^ a b c d e f g Wolffia globosa”. Plants of the World Online. Kew Botanical Garden. 2021年6月20日閲覧。
  3. ^ a b c d 米倉浩司・梶田忠 (2007–). “ミジンコウキクサ”. 「植物和名ー学名インデックスYList」(YList). 2021年6月20日閲覧。
  4. ^ a b c d e 林弥栄 & 門田裕一 (監修) (2013). “ミジンコウキクサ”. 野に咲く花 増補改訂新版. 山と渓谷社. p. 29. ISBN 978-4635070195 
  5. ^ a b c d e f g h i j k l 長田武正 (1976). “ミジンコウキクサ”. 原色日本帰化植物図鑑. 保育社. pp. 399–400. ISBN 978-4586300532 
  6. ^ a b c d e f g h i 邑田仁 (2015). “ミジンコウキクサ”. In 大橋広好, 門田裕一, 邑田仁, 米倉浩司, 木原浩 (編). 改訂新版 日本の野生植物 1. 平凡社. p. 111. ISBN 978-4582535310 
  7. ^ a b c d e f g h i j k l m n o ミジンコウキクサ”. 植物図鑑. 筑波実験植物園. 2021年6月20日閲覧。
  8. ^ Pandey, A. & Verma, R.K. (2018). “Nutritional composition, taxonomical and phytoremediation status of duckweed (Wolffia): Review”. Annals of Plant Sciences 7 (1): 1928–1931. doi:10.21746/aps.2018.7.1.13. 
  9. ^ a b c d e Park, H., Park, J. H., Jeon, H. H., Woo, D. U., Lee, Y. & Kang, Y. J. (2020). “Characterization of the complete chloroplast genome sequence of Wolffia globosa (Lemnoideae) and its phylogenetic relationships to other Araceae family”. Mitochondrial DNA Part B 5 (2): 1905-1907. doi:10.1080/23802359.2020.1754948. 
  10. ^ Armstrong, W. P. (2021年7月4日). “World's Smallest Flowering Plant”. The Lemnaceae. Palomar College. 2021年7月15日閲覧。
  11. ^ a b Armstrong, W. P. (2021年7月4日). “Harvesting & Cooking Wolffia In Thailand”. The Lemnaceae. Palomar College. 2021年7月15日閲覧。
  12. ^ a b c d e f g h i j k l m n 角野康郎 (1994). “ミジンコウキクサ”. 日本水草図鑑. 文一総合出版. pp. 76-77. ISBN 978-4829930342 
  13. ^ a b c d e f Flora of China Editorial Committee (2010年). “Wolffia globosa”. Flora of China. Missouri Botanical Garden and Harvard University Herbaria. 2021年6月20日閲覧。
  14. ^ a b Lemnoideae ウキクサ亜科”. 植物発生進化学:読む植物図鑑. 基礎生物学研究所生物進化研究部門 (2015年10月9日). 2021年6月20日閲覧。
  15. ^ a b c d e f g h i 角野康郎 (2014). “ミジンコウキクサ”. 日本の水草. 文一総合出版. p. 69. ISBN 978-4829984017 
  16. ^ a b c d 浜島繁隆・須賀瑛文 (2005). “ミジンコウキクサ”. ため池と水田の生き物図鑑 植物編. トンボ出版. p. 106. ISBN 978-4887161504 
  17. ^ Armstrong, W. P. (2021年7月4日). “Wolffia globosa”. The Lemnaceae. Palomar College. 2021年7月15日閲覧。
  18. ^ a b 高井雄一郎, 河野宏樹, 立田真文, 惣田訓 & 池道彦 (2015). “ミジンコウキクサ Worffia arrhiza の生長と休眠芽の形成に及ぼす有機物添加の影響”. 日本水処理生物学会誌 51 (2): 29-35. doi:10.2521/jswtb.51.29. 
  19. ^ a b c d 村田源, 別府敏夫 & 野渕正 (1981). “ミジンコウキクサについて”. 植物分類, 地理 32 (5-6): 197. doi:10.18942/bunruichiri.KJ00001078408. 
  20. ^ a b c 清水矩宏, 広田伸七, 森田弘彦 (2001). “ミジンコウキクサ”. 日本帰化植物写真図鑑. 全国農村教育協会. p. 473. ISBN 978-4881370858 
  21. ^ Wolffia arrhiza”. Plants of the World Online. Kew Botanical Garden. 2021年6月20日閲覧。
  22. ^ a b c ミジンコウキクサ”. 侵入生物データベース. 国立環境研究所. 2021年6月20日閲覧。
  23. ^ 川畑祐介, 池道彦 & 藤田正憲 (2002). “ミジンコウキクサによる排水処理: デンプン生産システムの構築”. 日本水処理生物学会誌 22: 111. NAID 10010360745. 
  24. ^ 惣田訓, 川畑佑介, 高井雄一郎 & 池道彦 (2011). “ミジンコウキクサを用いた排水からの栄養塩類除去システムの動力学解析”. 日本水処理生物学会誌 31: 36. 
  25. ^ Appenroth, K. J., Sree, K. S., Bog, M., Ecker, J., Seeliger, C., Böhm, V., ... & Jahreis, G. (2018). “Nutritional value of the duckweed species of the genus Wolffia (Lemnaceae) as human food”. Frontiers in Chemistry 6: 483. doi:10.3389/fchem.2018.00483. 
  26. ^ ミジンコウキクサ”. Google. 2021年6月21日閲覧。

外部リンク

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