ノーレア

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ノーレア
別名 ノレア、ノライア、オーレア
著名な実績アルコーンの本質』『ノーレアの思想』の語り手
配偶者 セトセツ派
ノアマンダ教
アダムとイヴ
親戚 カイン (兄)
アベル (兄)
セト (兄)
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ノーレア(Norea)は、グノーシス主義におけるアダムイヴの娘[1]セトの妹かつ妻であり[2]、邪悪の縮図とも神の子の配偶者ともされている女性[3]。ノーレアはグノーシス主義における英雄の一人であり、ノアアルコーンの両方と対峙し、ノアから方舟に乗ることを拒否されると、それを燃やす[1]。また、プレーローマの中にいるとされ、プレーローマを見ているともいわれる[4]

説話[編集]

アルコーンアダムの妻であるイヴに恋情を抱くが、イヴから嘲笑される。ある時、アルコーンはイヴと寝たかと思ったが、それはイヴではなくイヴの影であり、アルコーンは自分自身を汚すことになった。

イヴはアダムとの間にカインアベルを産んだ。カインがアベルを殺害すると、イヴはセトを産み、その後に「人間の世代から世代への助け」のために「何者にも汚されなかった処女」としてノーレアを産んだ。

アルコーンは洪水を起こして、人間やその他の生物を跡形もなく滅ぼすことを企んだ。ノアはその企みを知り、方舟を作った。ノーレアは方舟に乗る為にノアの下に行ったが、彼は彼女を方舟に乗せなかった。そのため、ノーレアは風を吹き付けて、方舟を燃やした。ノアは二隻目の方舟を作ることとなった。

アルコーンはノーレアを騙すために、彼女の下に来て、イヴは自分たちと寝たと言った。ノーレアはこれに対し、アルコーンはイヴと寝たのではなく、イヴの虚像と寝たのであり、したがって自分がアルコーンから出て来たわけでもないと告げ、自分は天上の世界から来たと言った。アルコーンは顔色を変え、ノーレアを辱めようとして迫った。ノーレアは神に向かって自分をアルコーンから助け出すよう叫んだ。すると、天から大天使エレレートが降下し、彼女になぜ叫んでいるのか尋ねた。アルコーンは退去した。エレレートは、自身のことを「理解」であると述べ、人類とアルコーンの本質について語った[5]

背景[編集]

ノーレアの説話は『アルコーンの本質』に記されているが、この文書では、ノーレアについて三人称・女性・単数の記述が続いた後に、突然ノーレアが一人称・単数の視点で語り始め、エレレートから伝えられた啓示を第三者に語る形式に変わる[6]

ノーレアの夫はセツ派ではセトと考えられており、マンダ教ではノアと考えられている[7]。ノアがアルコーンに仕える者とされたのに対し、ノーレアはバルベーローに仕える者とされた[8]

ノーレアはナグ・ハマディ写本の『ノーレアの思想』など、セツ派の文献に頻出する人物である。ノーレア(Norea)という名前は、ハッガーダー伝承にある、ヘブライ語で「魅惑的」という意味を持つナアマ(Na'amah)が由来である可能性があり[8]、したがって聖書に登場するナアマと関連付けられることがある。ナアマが好色とされるのに対し、ノーレアは「力に汚されなかった処女」とされる[9]

出典[編集]

  1. ^ a b (英語) The Gnostic Bible: Gnostic Texts of Mystical Wisdom from the Ancient and Medieval Worlds. Shambhala. (2003). p. 167. ISBN 9781570622427 
  2. ^ James M. Robinson (2000). The Coptic Gnostic Library. Brill. p. 224. ISBN 9789004117020 
  3. ^ Perkins, Pheme (1980) (英語). The gnostic dialogue : the early church and the crisis of gnosticism. Paulist Press. p. 40. ISBN 9780809123209 
  4. ^ 『ナグ・ハマディ文書 4 黙示録』岩波書店、1998年、232頁。ISBN 9784000261104 
  5. ^ 大貫 1997, pp. 148–151.
  6. ^ 大貫 1997, p. 141.
  7. ^ 大貫 1997, pp. 156–157.
  8. ^ a b 大貫 1997, p. 157.
  9. ^ (英語) The Gnostic Bible: Gnostic Texts of Mystical Wisdom from the Ancient and Medieval Worlds. Shambhala. (2003). p. 173. ISBN 9781570622427 

参考文献[編集]